最新ゲームが毎日大量にリリースされる昨今。メーカーやストアのゲーム紹介だけでは「どんなゲームかわからない!」とお嘆きのGame*Spark読者も多いのではないでしょうか。そこで“なるべく早く”ゲームの生の内容をお届けするのが本企画「爆速プレイレポ」となります。

今回はBacronymが開発を、AMCがパブリッシャーを務めて2020年10月15日にSteamでリリースされた、エアライン旅客シミュレーションゲーム『Airplane Mode』を紹介してまいります。


虚無でした。
死に瀕していく感情。身体の痛み。
空があんなに大変な旅だったとは知らなんだ。

いきなり何のことだとお思いかと存じますが、今回のプレイレポ執筆にあたりプレイした感想が上記であります。あ!楽しかったは楽しかったんですよ!ただ全部クリアする頃には感情が消えただけで。

たかだがフライトシムでなんでい、という皆様のお声が聞こえてきます。しかしよく考えてみてください。このゲーム、出発地から目的地までのフライトが完全再現されており、プレイヤーはまんじりともせず数時間をPCの前に座って過ごすのです。

現実のフライトなら「実際に目的地に行く」という楽しみがそもそもの前提にあります。身体が軋み始めればちょっと席を立って、お手洗い近くのスペースでストレッチをしつつ窓の外の景色をちらりと見たり、機内のエンターテインメントを楽しんだりもします。しかしその前提が成立しえないシミュレーションゲームでは……。

僕、座ってました。PCの前で安いオフィスチェアに揺られながら、PCモニタに映る客席シムを眺めてずっと座ってました。虚無の表情で合計7時間強、座ってました。

コトの発端
僕は普段パイロットとして飛行機を飛ばす仕事をする傍ら、Game*Sparkで『Microsoft Flight Simulator(以下MSFS)』の連載記事などを執筆させていただいているのですが……。今回のコトの発端は、僕がSteamのライブラリで賽の河原を楽しみながら新しい石(ゲーム)を探してストアの海を漂っていた時、たまたま本作を見つけたことにあります。そこで「空の繋がりで旅客シムというのも面白そう、是非レビューをやらせてください」と編集部に相談しました。また同時に、実際に5時間PCの前に座ってシムを楽しむのも良いかも!と余計なことも考えつきます。これがすべての間違いでした。

編集部の反応ですがもちろん「要所を掴んでもらうだけで良いんですよ!?」「これを数時間きっちりプレイするのは流石に酷だと思いますよ!?」と止めてくださいました。ところが事態をあまり深刻に考えてなかった僕は「ううん耐久プレイやるー」と、気軽に地獄への片道切符を手に本作のプレイレポに取り掛かりました。どうせもう、河原で石をひとつ積んでは父のためしていた身、すでに地獄にいるようなものなので気楽なもんです。この時なにも考えていなかった自分の頭を万力で締めてやりたい。

そんなわけで前代未聞の耐久プレイレポを書いていきたいと思います。一部の説明や画像には『MSFS』からのスクリーンショットを挟んでいきつつ、プロ旅客(?)目指して、さっそくやってまいりましょう。

どんなゲーム?
本作は、旅客機エコノミークラスで空の旅をリアルタイムで楽しめるフライト(?)シミュレーションです。プレイモードは2つあり、2時間5分のJFK-YHZまたは5時間45分のJFK-KEFフライトのどちらかを選ぶことができます。

画像は『MSFS』から
画像は『MSFS』から
空港コードのみなので、言い換えると前者はアメリカのJohn F. Kennedy International AirportからカナダのHalifax Stanfield International Airportまでのフライト、後者はアイスランドのKeflavík International Airportまでのフライトです。

フライト中は座席正面にあるモニタを触るもよし、機内雑誌を読むもよし、機内モードのスマホを弄るもよし、持ち込んだ本や数独を楽しむもよし、食事を楽しむすべてよしです。ただし移動はできません。あらゆる選択肢を用いて無限にも思える時間を潰しましょう。

リリースとパッチアップデート
実は10月15日のリリース直後にテストプレイを行っていたのですが、その際は記事執筆を断念。というのもバグという名の仕様に行く手を阻まれ、CPU使用率100%をたたき出した後ゲーム自体が落ちるということが頻発したからです。その時、プレイの傍ら僕が編集部に送っていたログは下記の通りとなります。



そのパッチが10月22日にリリースされたので、今回改めておっかなびっくりプレイレポをしていこうという運びになりました。僕のことですからどうせクリア寸前にゲームが強制終了して、今までの時間が水の泡とかいうオチがあるに違いありません。ちょっと日和りますが、やや短めな2時間5分モードで空の旅を楽しんでまいりましょう。

ちなみに先に断っておきますが、ゲーム以外のプログラムを起ち上げたらご丁寧に進行が止まります。つまり泣いても笑ってもこのゲーム画面を見続けなければなりません。

カナダ行き2時間5分のフライト開始

さあ出発です。もう逃げることはできません。タイトル画面から各フライトモードを始めるにあたりアイコンのスワイプ操作が必要なのですが、もしかしてスマホアプリ化も狙っていたデザインなのでしょうか。


目が覚めると僕は英国系航空会社の旅客機、そのエコノミークラスの窓側座席に収められていました。個人的に利用する際は、出入りが楽な廊下側にしているのでこの視点での着席はなかなか新鮮です。あたりをきょろきょろ見回していたらフライトアテンダントさんから「シートベルトをお締めください」と指示を頂きます。おっといけない、すみやかに締めます。


ちなみにテストプレイで数分やった際、テーブルをワザと展開していたところ「テーブルをしまってください」と指示が変わっていました。意外と細かいところも再現されているようです。


またこの時は気付かなかったのですが、今あらためて確認したらシートもリクライニングしたままにすると「元に戻してください」と指示を受けます。すごい。

座席の周りにある利用可能なアイテムを物色します。WASDキーでも矢印キーでも移動が叶わないことがわかりましたので、これから2時間5分をこの座席で過ごさなければなりません。効率的に暇つぶしできる装備を確保しておきましょう。


持ち込み手荷物の中には本や手帳にヘッドセットなどが入っています。それ以外で機内備え付けのものは……、


避難経路図の案内。基本ですね。まずはこれを熟読します。E320ってどんな機種……?エアバス機をもじった感じでしょうか。


続いて機内誌。数独やクロスワードといったパズルも充実。個人的に、こういった雑誌に必ず載っている香水、時計、酒といった高級嗜好品を冷やかすのが好きです。


そしてゲロ袋。画像ではWaste Bagと当たり障りのない名称になっていますが、Motion Sickness Bagと直接乗り物酔い用であると明示されたものもあります。


さっそく使う筆者。せき込むだけで特に中身が満たされることはありません。流石にそこまで再現はされていないのかもしれませんね。(されてました)


あ、いります?(気さくなジョーク)

ここまで下手を打つことはありませんが、僕はできれば隣に座る者同士最低限挨拶を交わしておきたい派。というのも、いざトイレに立ちたいけど片方が寝入ってて出られないといった「困った状況」が起きても、それまでにある程度の親しい関係性が出来上がっていれば、互いに快く助け合いができるからです。

あくまで個人的な経験ですが、長時間の搭乗になればなるほどそれは顕著でした。そこで出来た人のつながりが、意外と後々まで連絡を取り合うまでに発展したりというのもまた良いものです。ただもちろん「起こさないでくれ、死ぬほど疲れてるんだ」的な方もいらっしゃいますので、その場に応じた適切なコミュニケーションをとれたらなと。

安全ガイダンス

安全ガイダンスの映像が流れています。ライフジャケットの使い方や、非常時の導線と脱出の仕方をしっかり頭に叩き込んでおきましょう。いつかネットのどこかで「パフォーマンスが達者なフライトアテンダント氏による安全案内の実演」を見かけましたが、あれは笑いありの中で的確に印象付ける良い安全の説明だと思いました。ユーモアの裏にも安全への意識がしっかり存在しているのです。

記事のトピックから少し外れてしまいますが、フライトアテンダントの皆様は保安要員でもありますので、安全のプロ。旅客の命を預かることから想像の倍以上、徹底的に訓練を受けています。そのため個人的に、安全運航のためにも、乗員の指示には絶対に従うべきだと強く主張したいところであります。

安全の歴史は、先人たちが文字通り血を流して残してくれたものの上に成り立っており、空に関わる多くの人々が過去のインシデントやアクシデントから学び、今後の不具合および事故防止に繋げるよう様々な努力をしています。その意味において、機内におけるほぼすべての手順や指示には「安全のため」という理由があり、それを大前提にしつつ皆様はホスピタリティ(狭義の方ではありますが)を持って現場に立っておられるのです。

繰り返しになりますが、旅客として、フライトアテンダントをはじめとする乗員の指示に従うことは自身の、ひいては他の乗員乗客ならびに地上で生活する方々など運航に関わる人間全員にとっての安全に繋がります。これは決して大げさな言い方ではありません。

離陸

いよいよ離陸滑走開始です。フラップが展開されていて嬉しい。



タキシング中に見えた標識から、おそらく滑走路4Lを使用していると思われるのですが、ちょっと自信がありません。そこで実際の空港図Airport Diagramで確認してみます。


おそらくこのへん……と特定しようとしたら、どう考えても標識と実際の位置がばらけているような……。窓から見える標識を正しく読もうとするなら、我々の機体は青い丸の4箇所に遍在することになります。どういうこと……?

画像は『MSFS』から
わかりづらいので『MSFS』で実際にJFKへ飛んで調べてみました。

画像は『MSFS』から
Taxiway BでDに続くという標識の位置関係的にここかな……?本当に……?Holding Positionの標識はRunway 4を示していますが、よく見たら4Lなのか4Rなのかはっきりしません。僕はどこの空港からカナダに向かおうとしてるの……?


恐怖に駆られて「おろしてくれ!」と叫ぶ僕を乗せた『Airplane Mode』の機体は、ニューヨークの夜を眼下にみるみる上昇していきます。ここで気づいたのですが、主翼が機体の動きに合わせて若干上下にしなる動きを見せている部分……フラップが展開していることも含めて、実に細かい再現がなされていて好感度爆上がりです。よって先ほどの存在しえないJFK空港は、バミューダトライアングルが見せた幻影ということにして留飲を下げます。

暇つぶし開始

さあ座りっぱなしです。僕もパソコンモニタの前で座りっぱなしです。さすがにお手洗いにだけは立ちましたが基本的にオフィスチェアに固定です。たっぷりと暇をつぶして空の旅を楽しんでまいりましょう。


お!ソリティアありますね!やっぱり空の旅の定番なのでしょうか。さっそくプレイ。僕は実際に旅客として搭乗する際、いつもソリティアをプレイします。なぜならなかなか勝てず、勝てるまで何度もプレイを続けるうちに時間があっという間に経過するから。なお機内ゲームにマルチプレイが搭載されていれば(編集部注:航空機内のゲームアプリは物によっては機内LANでの不特定多数との対戦機能が存在しています)周囲の人間を根絶やしにするまで戦い続ける戦闘狂です。


シンプルに負けました。


この後もなかなか勝てないので本を読むことにします……が、ページをめくる際の視点移動で若干酔ってしまったので中断。


代わりにメモ帳でお絵かきをしてみます……が、こちらもペン先の動きに合わせて視点がにゅるんにゅるん追従するので酔いを加速させてしまい即中断。


これで結構時間潰せたかな?とスマホを見ればまだ20分くらいしかたっていません。機体もまだコネチカット州の真ん中、全体の3割程度しか進んでいない。どうしたものか……。

こういう時は映画を見るに限ります。準最新映画とかが取り揃えられていると嬉しいですよね。


……ラインナップが戦時中か何かかと言いたくなるほど旧作ばかりでした。(編集部注:このラインナップしか用意できない航空会社とは……)唯一理解が追い付きそうなのはバッグス・バニーのアニメ。


おお、懐かしい……。その昔カートゥーン・ネットワークでよく観ていました。日本語版吹替を担当された声優さんのうち、山口勝平さんの声による「どったの、センセー?」が一番聞きなれているのですが、こうして改めて原語版を聞くとまあ声の雰囲気がそっくりで新鮮な驚きがありました。何の話だ!


と、機内アナウンスが。短いフライトのため機内食は無いものの、ドリンクとお菓子のサービスがあるとのこと。画面をタッチして好きな飲物を選びます。どういう訳か飛んでる時ってトマトジュースがやけにおいしいんですよね。


ドリンクが来ました。机に置いたら中の氷がカランと揺れるし、袋の中身も取り出せるので「そんなとこまで物理シミュやってんの……!?」と驚きます。


その拍子に机にマウスがぶつかってふっとぶ菓子袋の中身。


とりあえず飲んで落ち着く。


アテンダントさんの冷ややかな笑み。


アホなことをやっているうちに意外と時間は経過していたようで、機体は降下を始めました。


おーカナダの街並みが。目的地空港の混雑や気象状況によっては上空でホールドさせられたりするのかなと少し心配していましたが杞憂に終わりました。


着陸!ちゃんと翼のスポイラーも再現できてえらい!


最後の機長アナウンスが終わるとともにタイトルが表示されクレジットが流れ始めました。ゲームクリア。意外と早く2時間経過しましたね。


なおそのあとはモニタも機内も少し暗くなり、うんでもなければすんでもなく時間が過ぎていきました。スマホでメニューを開かない限り、タイトルには戻れないようです。ここからおろしてくれ!!

実績解除
「おうおう辛そうにしてるけどよぉ……オメー本当にその時間飛んだのかよー?」という声が聞こえてまいりましたので以下に取得実績をお見せします。


ご覧ください。Short Haul実績解除ということで、JFK-YHZの2時間5分フライトをきちんとクリアしていることがわかります。そのほかにも座席はリクライニングせず、かつ飛行中つねにベルトを締めていたという実績も解除されています。フライトアテンダントさんのお手を煩わせることのない、大変お行儀のよいパッセンジャーでした。

ところでそのすぐ下に別のLong Haulという実績解除の欄が見えますね。解除時刻は先の実績から約5時間後……?

まさかのアイスランド行き5時間45分フライトも開始

はい、というわけでアイスランド行きフライトです。ここから冒頭に繋がる虚無の本編開始と言っても良いくらいです。カナダまで特にバグもないまま当たり障りなく目的地についてしまったので(実際の運航でしたら安全に終えられたことに諸手を挙げて喜びます)、じゃあこっちもやろっかと小休止挟んでゲーム再開。こちらのフライトは機内食のサービスがあるようです。これ以外にも、先ほどのフライトとどう違うのか比較しながら空の旅を楽しみましょう。

記事を書いているいま冷静に思い返せば、この時だいぶ正気を失っている判断を下したと思います。


ともあれ今回隣に座るのは、青色セーターが良くお似合いの紳士。道中どうぞよろしくお願い致します。



出発時間は真夜中。現実であれば深夜であることから、いい感じに眠りに落ちて朝目が覚めるころには到着まであと少し!といった作戦が立てられます……が、残念ながらこれはゲーム。先ほどの倍以上あるフライト時間を、正気を保ちながら無事に生き残らなければなりません。


とりあえずソリティア。今度はさくさく勝利することができました。また先のフライトの疲れから30分の時間経過がすごく遅く感じはじめます。時間が引き延ばされていく感覚ですね。

市販薬の使用にはご用心

さらさらさら……


どうですか、よく描けてますでしょう?


気持ち悪くなってきたので酔い止めを飲みます。


時計を確認するとやっと1時間が経過、もうやだおうちに帰りたいと泣き言をたれているうちにみるみる視界が暗くなって……。


……え、なに?意識が遠のくんだけど一酸化炭素中毒?Aeromedical Factorsは高高度を飛行する乗員が全員気をつけなければいけないことで……って与圧された機内でそんな不可思議なことが起きるわけありまs……、


気絶。


ハッ


目が覚めると1時間30分程度が経過していました。すごく怖いホラー演出だったので先日書かせて頂いたプレイレポ『Phasmophobia』を思い出します。あれは本当に怖かった……。

ともあれ先ほど酔い止めのつもりで飲んだあの錠剤、あれはおそらく睡眠導入剤だったのでしょう。考えてみればずいぶん迂闊な飲み方でした。どういう効果、副作用があるかわからない薬を使用することは当たり前ですがとても危険です。そのため乗員であれば、場合によっては指定医による確認が必要な薬もありますし、服用後は一定時間乗務禁止といったものもあります。

さて、錠剤ひとつで1時間30分程度時間を飛ばせるということは……あと3錠飲めば残りの4時間30分程度をふっとばせると予測しても良いでしょう。幸い僕はいまパッセンジャー(旅客)ですし、向こう数日は乗務ないしこのまま飲んでも大丈夫ですね。


ほほーい。


どうせだから全部飲んじゃいましょう。これで13時間30分程度をキング・クリムゾン(時間を吹っ飛ばすことが)できるはず。なんならアイスランドとアメリカ往復してからさらにカナダにも行けちゃうくらいの時間なので、意外と楽に終わるかもしれないですねこの企画!


きたきた眠気!!おさらばです!!!


ハッ

ペンウッド卿……じゃなかった、隣の紳士おはようございます。もうアイスランドには着きましたか?貴方はご存じないかもしれませんが、今この何の変化も起きないPCモニタを見つめながら合計4時間近く座り続けている僕の身体はそろそろ悲鳴を上げ始めています。


え?ここまでやってもまだ半分ちょっと(54%)しか進んでないの……?


思わず機内誌にも「Sure?(マジかよ)」と落書き。実際にこんなことやったら張り倒されます。ちなみにこの所業のおかげで、ゲームクリア時に「Animal(畜生)」という大変不名誉な実績がアンロックされました。公共の器物を損なうような者は人間ではないという言外のメッセージでしょうか。

客席の窓もしっかり再現

いやぁ……まだ到着しません。まだ68%。モニタの前に座って身じろぎひとつとれない身体からどんどん力が抜けていくのが分かります。筋肉がしぼんでゆく。フライトがあと半分という認識が余計に心を蝕み、まだかまだかと時計を繰り返し確認しては、たった数分しか経過していないことに絶望します。

エアラインではありませんが、僕自身が飛んでいる際、上空では常に「次はどのプランを選択するか」「いま最悪の事態に陥ったらどのプランを実行するか」と先手先手で考えては、このあと忙しくなっていく時間帯に備えてワークロードを減らすようにしているため、時間があっという間に過ぎ去ります。しかし、こうしてパッセンジャーとなって椅子の上に縛り付けられていると、たちまち機内は精神と時の部屋と化してしまいます。


そんな虚無の表情で外を眺めていたら窓にちゃんとBleed holeが再現されていることに気づいて笑ってしまいました。芸が細かいな!このBleed holeは簡単に言ってしまえば、高高度の飛行において機外と機内の圧力差によって窓ガラスがばちこーん!と割れないよう、または内外の温度差による霜ができないよう、バランスをとるために設けられた穴です。映像付きでわかりやすい解説動画(英語注意)がYouTubeにあるので、興味のある方は是非確認してみてください。

あと一歩で届かない機内食

そろそろ5時間が経過。先のフライトと合計で7時間に届きそうです。心身の啓蒙(有り体に言えば発狂、またはSAN値)が高まっていくのを感じます。宇宙が空にあると呟き始めたまさにそんなとき、機内アナウンスと共にモニタに表示された機内食選択画面にどれだけ救われたことか!躍りだしたい気持ちを抑えながらチキンを選択し、ワクワクしながら食事を待ちます。


ギャレーを押したアテンダントさんが現れます。待ってました!隣の青色紳士も微笑みを浮かべています。苦楽を共にした僕らはもはや戦友と言っても過言ではありません。銀シャリで乾杯しましょう。


ご覧ください、夜が終わり朝がやってまいりました。いみじくも食事のサーブがもたらす心理への影響を爽やかに表現した演出と言えましょう。やっぱりストーリーには起承転結の動きがなければいけません。PCモニタの前に座る僕には何の食事もないのですが。


ところがアテンダントさんはあろうことか、通路を挟んで反対側の旅客へ食事を渡すポーズのまま微動だにしなくなってしまいました。え、バグ?こんな直前で食事お預けとかあります!?ケータリングサービスの大変さについて書こうとしたらこれ!?(編集部注:ライター当人からはかなり細かく面白いお話を聞くことができました。カットされてしまったのは全てこの不具合のせいです。いや、ホントに)


とっさに吐く真似をする僕。こうすれば「お客様!いかがいたしましたか!」という反応を引き出して、アテンダントさんを強制的にこちらへ振り向かせることが可能なはず……って、本当に中身出とるがな!


あ、いります?(小粋なジョーク)


アテンダントさんは氷漬けになったまま動く気配すら見せません。どうしようもないので、しっとりしたゲロ袋は僕らの間の座席に置くことにします。ここからの旅は青色紳士と僕とゲロの三人組でお届けしてまいります。

アイスランド到着


ゲーム内時間で出発から5時間45分、とうとう降下開始の機内アナウンスが聞こえてきました。若干のディレイはあるもののついに目的地までやってきたのです。表示も99%!


戦友たちのシートベルトを確認します。ゲロ袋におかれましては、ベルトを絞めると中身が飛び出すのでそのままです。なお、時が止まったままのアテンダントさんは、このままギャレーごと着陸を試みるようです。あとでチーフパーサーに絞め落されて、帰りの便では跡形もなく姿が消えていることでしょう。


この着陸直前、海から陸に流れて滑走路が見えてくる瞬間がたまらなく好きです。


着陸!




流れ出すエンディング。あああやっと解放される!


戦友の皆さんも笑顔がこぼれます。

おわりに
…………。
……………………。
……………………………。

ライターとしてあるまじき感想ですが、言葉が出ないんです。ゲームが終わった後、とりあえず僕は椅子からへなへなと床に崩れ落ちてしばらく動けませんでした。この合計7時間、微動だにせず椅子の上で唸りながらプレイしていましたよ。実際のフライトでのんびりくつろいでいる皆さん凄いですね……。僕はこんな至れり尽くせりな空の旅ですら息も絶え絶えなのですから、キングオブ深夜バスなどに乗った日には事切れてしまうかもしれません。

さてあらためて、このゲームのシミュレーションとしての再現度はどうなんだろうという部分に立ち戻ります。途中でも何度か書きましたが、細かい機体の動きやディテールなどはよく再現されていると思います。空港レイアウトだけはちょっと怪しいところがありましたが……。

また機内での暇つぶしの再現は完璧で、手持ち無沙汰で機内ゲームを何週もクリアしたり、数分に一回現在の飛行機の位置をマップで確認して、わずかに進む%の値にじれったい思いをしたりと、いつの間にか本当にエコノミークラスの座席にいるような気分を楽しませてくれました。

もし今後もアップデートがあるとして、希望を強いてあげるとするならば、出発前にボーディングブリッジから搭乗、到着後に降機する演出、天井部の荷物棚の使用、さらには機内を歩き回ってお手洗いに入るといった機能が欲しいですね。

このご時世、諸事情でなかなか飛行機旅行が楽しめないという方、是非本作をプレイして気持ちだけでも大空の旅を楽しみましょう!ああそれにしても、ゲームの中でくらいファーストクラス乗りたかったな……!


タイトル:『Airplane Mode』
対応機種:PC(Windows/Mac)
記事におけるプレイ機種:PC(Windows)
発売日:2020年10月15日
記事執筆時の著者プレイ時間:7.3時間
価格:通常版 1,220円


「爆速プレイレポ」ではハードコアゲーマーなライターから読者に向けて、新作タイトルの生の内容を伝えるプレイレポートをお届けします。対象となるタイトルは、執筆時点で発売48時間内の新作、かつAAAからインディーまで、ジャンルやプラットフォームを問わず「読者が気になるだろうゲーム」もしくは「ハードコアゲーマーのアンテナが反応するゲーム」です。

性質上、本企画においてはゲームの評価や採点は行いません。ストーリーなどの「ネタバレ」も軽度な内容に留まることが殆どです。また、記事執筆にはデベロッパー/パブリッシャーからプレイレポート用として提供されたゲームソフトが含まれる場合もあります。プレイ時間自体も基本的には短い段階での執筆となります。

なお、マルチプラットフォームで展開されている作品においては、対応している機種のうちのひとつのエディションのみをプレイしています。そのため、本文内でプレイした際の使用機種についても明記しています。