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最初に結論めいたことを述べてしまいますが、『龍が如く7 光と闇の行方(以下、龍が如く7)』は2020年の最初の嬉しい驚きでした。最近は特に海外の大作ゲームを好んでプレイしていた筆者にとって、久々に「異常なゲームをプレイしている」と思える体験となったからです。そして同時に本作のことを「無類に面白いゲームである」とも感じました。

実際のところ、ゲームライターとして他のさまざまなゲームを遊ばなければならないようなタイミングであっても、『龍が如く7』を優先して遊んでしまう瞬間が数多くありました。もともと(熱心ではないですが)シリーズのファンだったのもあって、足りなかったピースがハマったかのような、今の自分にすごくフィットした作品だったのだと思います。

『龍が如く7』はシリーズとしては久々のナンバリング新作ですが(とはいえ外伝的な作品はコンスタントに発売されています)、それにもかかわらず非常に意欲的な実験と変化を盛り込んだ作品です。『龍が如く』シリーズはヤクザや闇社会といったあまりゲームで描かれることのないテーマを扱いながらも膨大な小ネタやギャグを含んだごった煮的な側面もあります。

そこに実験的な要素がガッツリ盛られているわけですから、当然、本作の異常さはただならぬことになっています。本作からの大きな変化は二点、「主人公の変更」そして「ジャンルの変更」です。

主人公の変更、魅力的なキャラクターたち

まずはシリーズにおける主人公の変更、そしてキャラクターについて述べさせてください。今作からの(厳密には正当続編であるとされている『龍が如く ONLINE』からの登場ですが、ナンバリングに登場するのは今作からなので、「今作からの」とします)主人公「春日一番」は、今までの主人公「桐生一馬」とはかなり雰囲気の異なる人物です。桐生一馬は簡単に言えば無口で渋く、人格的にかなり完成された「大人」のキャラクターですが、春日一番は気さくで陽気、そしてまだまだ成長の余地のある人物として描かれています。元ヤクザらしいガラの悪さを残しながらもひと目見て好人物とわかるキャラ造形が素晴らしく、筆者は最初の数時間で彼のことが大好きになりました。


なんてったって彼の存在感はキャッチーなのです。今までのシリーズでも見られた真面目な雰囲気とのミスマッチ、いわゆる「桐生一馬のキャラ崩壊」的なギャグめいた演出も、「まあ一番ならこれぐらいのことはやりそうだな」と納得させられていまいます。桐生一馬によるハイテンションカラオケなどのギャップ描写も楽しくて好きでしたが、ストーリー部とフリーローム部分の親和性という点においては、春日一番に軍配が上がるでしょう。

桐生一馬はカリスマ的な人気のある、『龍が如く』の「顔」のようなキャラクターですから、ここにきての主人公変更はかなりリスキーな決断だったことだろうと推測されます。しかし春日一番は、そんな「偉大な主人公からの交代」という重責をはねのけるような本当に素晴らしいキャラクターになっていますし、クリアした今となっては「なんだったら桐生一馬より好き」とも思うほどです。


一番と共に冒険する仲間たちも魅力的な人物ばかりです。特に安田顕演じるホームレスの「ナンバ」は、一番と共に成り上がっていく相棒的な存在として印象深い人物でしょう。中盤以降仲間になる韓国人組織「コミジュル」のヒットマン「ハン・ジュンギ」、中国マフィア「横浜流氓」のリーダー「趙天佑」なんかも一見するとかなりとっつきにくい人物であるにもかかわらず、ちゃんと愛嬌のあるところ、感情移入できるところが描かれます。

シリーズ作品に共通することでもありますが、ホームレスやヤクザ、マイノリティによるギャング集団のような社会からはみ出してしまった存在をできるかぎり偏見に基づかないように、ひとりの人間として描こうとする姿勢は本作の美点です。偏見の排除が充分に行われているかどうかは一考の余地がありますし、正直バイアスを感じる点も少なくはないのですが「できるかぎりやろうとしている」ということに、まずは「価値がある」と言えるでしょう。


本作は後半部で、「春日一番」という人間の個人的な出自にストーリーが集約されていくことになります。彼の出自に関係のない仲間キャラクターは徐々にストーリーから爪弾きにされ、存在感が薄くなりかねないわけですが、そこはうまくキャラクターごとのサブストーリーである「絆ドラマ」やパーティーチャットで補われています。

「絆ドラマ」は選んだ選択肢によってのセリフ変化がかなり面白く、キャラクターの魅力が端的に示されていておすすめですし、パーティーチャットには(「水曜どうでしょう」をはじめとした)サブカルチャーについての小ネタが仕込まれていたりします。仲間への感情移入度の高さはシリーズ随一でしょう。


その一方で「魅力的な敵役」という部分では疑問も残りました。例えば、春日一番に立ちふさがる元上司(という言い方がヤクザ的に正しいのかどうかわかりませんが……)「沢城丈」は、演じる堤真一の迫力もあって非常に重厚な存在感を放っているわりに、最後までプレイすると「単に卑小な人物」という印象になってしまって、少々残念でした。最大の敵役(本稿では名前を伏せます!)も、設定がかなり非現実的。その決着についてもかなり唐突です。この辺りはキャラクターの問題というよりは脚本の問題でもあるでしょうから、後述します。

ジャンルの変更、RPGへの挑戦

次は「ジャンルの変更」について触れていきます。本作は戦闘システムを今までのアクションゲーム的なモノからターン制コマンドバトルへと変更し、「JRPG」的なジャンルにぐっと接近しました。「春日一番は『ドラクエ』が好きなためにすべての戦闘をこのように認識している」という、本来まったく必要のない悪意混じりの説明まで足されるあたり、ふざけているのか真面目にやってるのか判断がつきかねます。そして、「戦闘システムのRPG化」はゲーム全体に劇的な変化を及ぼすことにもつながっています。


「戦闘」そのものはきわめて普通のコマンドバトル式の戦闘なので、ちょっとだけプレイヤーと敵の位置が関係してくる以外は特段目新しいこともありません。しかしそこに『龍が如く』シリーズの世界観が混ざってくることによって、なんだか異常な質感を生み出すことになるのです。「ハローワークでジョブチェンジが出来る」なんてのも(ツクールゲーなどにはありそうですが)聞いたことがないですし、職業もホストだったりストリートミュージシャンだったり、ハローワークには存在しなさそうなものが混ざっていてとにかく変です。


例えばストリートミュージシャンには「CDリリース」という「CDを敵に投げつける」という技が用意されています。明らかにふざけており、プレイヤーによってはかなり評価が割れるところでしょう(はっきり言って筆者はこういうおふざけが大好きです)。

ジョブチェンジを繰り返すと技が増えすぎて技リストが見づらくなったり、「一部の敵が硬すぎてテンポが阻害されているように感じられる」、「人間型の敵が前提となっているため一部の人間型でない敵に対して(おそらくアニメーションの問題から)使えない技がある」、「位置を能動的に変えられないため位置と関係のある技は実質運要素になってしまっている」がなど、原因は色々ありますが、戦闘自体は現状完成度が高いとは言いづらいところです。

総合的な評価としては「野心的ではあるが、問題点も多い」と感じます。実際、3Dアクションの戦闘のほうが良かったと言うシリーズファンの意見は少なくありませんし、筆者個人としてもRPGらしい戦闘システムが面倒に感じられるときも多くあり、特に一部のダンジョンはかなり退屈でした。そしてこれは些細なことなのですが、一人のボスに対してパーティーメンバー全員で挑むと、まるで弱いものいじめをしてるような気持ちになったりもしました。


不満点はありますが、金銭でゲストキャラによる必殺技を繰り出せる「デリバリーヘルプ」など楽しい遊び心がいっぱいあり、かつ無数にあるアイテムに(今までのシリーズ作品以上に)一応の意味が与えられていたりと、ターン制戦闘になったことで新たに生まれた美点も見過ごせません。洗練不足ではあるでしょうが、シリーズがこの方向性で進むのであればより良くなっていくことを期待したいです。


ジャンルがRPGへと変更されたことで「ゲーム全体に劇的な変化」が及んでいる、と先述しましたが、その変化の際たるものがボリュームでしょう。本作のボリュームは(おそらく)過去最大級になっており、メインマップとなる「伊勢佐木異人町」はかなり広大。そして「神室町」と「蒼天堀」も(オマケ的な感じではありますが)登場します。既存のマップのままではRPGとしてかなり手狭でしょうから、このボリューム感の増加はジャンルの変化に伴ったものだと考えられます。また仲間がパーティーとして常に同行するので、前述のように仲間キャラクターへの感情移入度が高くなる点もRPGになったからこその魅力でしょう。

RPGになったことによってキャラクターの成長要素も強化されています。主人公である春日一番には攻撃力などのRPG的なパラメーターとは別に「人間力」という成長要素があり、人間力を高めることでジョブチェンジが可能になるなどの特典を受けられます。また、サブストーリーやミニゲームをこなすと人間力が上昇することも。既存のシリーズ作品よりも更に「寄り道」を促す仕組みになっているわけで、そこに面白さを見出すプレイヤーもきっとたくさんいるでしょう。

「成長要素がストーリーの(成り上がりという)テーマともうまく噛み合っている」ということは、本作を語る上で欠かせないポイントです。まだまだ実験的な側面が強いRPG要素ですが、突き詰めていけばスゴいことになりそうなので、賛否両論あるにせよ個人的にはこの方向性を強く応援しています。

膨大なサブ要素

『龍が如く』シリーズとしては恒例ですが、本作にも膨大なミニゲームなどのサブ要素が含まれています。『バーチャファイター』シリーズに至っては『バーチャファイター2』『バーチャファイター5 ファイナルショーダウン』の二作が収録。こちらもとんでもないボリュームになっていて、過去作品からの使いまわしのミニゲームは数多くあれど「全部入りにしてやる」という気合を感じます(『龍が如く 極2』にあった『電脳戦機バーチャロン』が収録されてないのは残念です)。ひとつひとつについて語っていたら日が暮れてしまうほどの物量なので、「むしろこっち(サブ要素)が本編」と考えるプレイヤーも多いかと思います。


本作のミニゲームの中で筆者が特に気に入ったのは「会社経営」です。街の菓子屋である「一番製菓」を成長させ一大企業にするというもので、(きわめて簡易的ではありますが)楽しい経営シミュレーションに仕上げられています。あくまでミニゲームなのであまり難しいものではなく、数時間でゲーム内の目標である企業ランキング一位を獲得できてしまう点が残念でしたが、なんだかんだ結構ハマってしまったのでそう感じるのでしょう。

ただ、スタジアム球場を所持している上に地元の企業ランキング1位でテレビCMにも出まくっているはずの春日一番が、シナリオ上では無名人物として描かれたりもする点は気になりました(もちろん、ミニゲームの進行度とシナリオを一致させるのは至難の技でしょうが……)。


企業経営の他にも『マリオカート』ライクな「ドラゴンカート」、変形モグラたたきゲームのような「名画座」など、楽しい新規ミニゲームも収録されています。どれも適度にやり込み要素が浅いので、ハマったミニゲームに対しては「もうちょっと遊ばせてくれよ」と思わないこともないのですが、ただでさえボリュームがあるゲームなので、贅沢なわがままですね。

「スジモン」と呼ばれる敵キャラの図鑑要素(捕まえるわけでもないのになぜか『ポケモン』パロディなのがすごい)、クリア後ダンジョンなど、いかにもRPG的なやり込み要素もあります。個人的にはあまり興味がなかった「パチスロ」もやたら気合が入っているので、「せっかくだしやってみるか」と思いつつ知らない文化に触れるきっかけになりました。

重厚なストーリー

このように、このようにふざけまくってお祭り騒ぎとなっている本作ですが、打って変わってストーリー部分は異様にシリアスです。大衆演劇が描かれる冒頭部から、主人公・春日一番の壮絶極まりない境遇が描かれるオープニングにかけて、物語は一切ふざけていませんし、渋く重厚です。

このなんとも言えないミスマッチ具合はシリーズ共通のことですが、今回は前述の通り戦闘までもかなりユーモラスなので(過去作にもふざけた必殺技や武器はありましたが、あくまでいち要素でした)、ストーリーとユーモアの乖離はかなり独特なバランスです。


ストーリー序盤部、具体的に言うとナンバとの出会いと再起を誓うポイントまでは個人的にかなり感情移入してしまいました。「どん底まで落ちて、そこから成り上がる」というテーマは普遍的なものですし、春日一番というキャラクターの魅力と深みがきちんと説明されているので、序盤部のストーリーは文句なしに面白いと思います。

ただ、残念なことに(これもシリーズ恒例ですが)終盤にかけて物語はどんどん複雑化し、スケールが大きくなるとともに納得できない部分も増えていきます。特に(繰り返しになりますが)ラスボスの境遇と行動原理はあまりに絵空事ですし、その結末も一作目の『龍が如く』になぞらえることだけが目的化したような悲劇で締めくくられるため、かなりがっかりしました。

しかしそんな荒唐無稽さもシリーズの恒例ですし、もともとゲーム全体として「プレイヤーの納得」を目指しているわけではなさそうなので、シナリオ上の瑕疵がひとつひとつ気になってゲームプレイに影響が出てしまうタイプのゲーマーには『龍が如く』シリーズをそもそもオススメできないと思います。


荒唐無稽さやどんでん返しの展開など『龍が如く』的なシナリオの大味さには「そういうものだ」と目をつぶることができるのですが、個人的に最も残念だと感じるところは、「成り上がり」という物語やテーマが有耶無耶になってしまう点です。

物語終盤は彼の過去の因縁や出自についての話になってしまうのですが、せっかく「春日一番」という過去作の文脈からある程度自由で魅力的なキャラクターが主人公であるのにもかかわらず、彼が既存の『龍が如く』的な文脈に飲み込まれていってしまうのが、プレイしていてとても悲しかったです。

シリーズファンとしては過去作との繋がりをもって「これぞ『龍が如く』だ」と思う方もいるでしょうし、「過去作と繋がってなければ『龍が如く』ナンバリング新作である意味がない」というような論評も成り立ち得るでしょう。この不満点は完全に「個人の好み」ですし、この悲しみは強く感情移入しているからこそのものでもあります。このあたりを詳しく語ると物語の最終盤のネタバレになってしまうので、興味を持たれた方はぜひ最後までプレイしてみてください。

総評

『龍が如く7』はまったくもって完璧なゲームではありません。スタイリッシュでもなければ、完成度が高いわけでもないし、シナリオは問題だらけです。

しかし、それを補って余りある魅力が本作には存在します。大衆演劇が描かれるゲームなんて他にありますか? こういう変なゲームを愛好するプレイヤーは一定数いますし、筆者もその中の一人です。ゲームを通して自分が見たことのない世界や考えたこともない物語と出会える満足度は、「想像がつく」ようなウェルメイドなゲームを遊ぶよりもはるかに高いとも思います。

余談ですが、同様のゲームの愛好家かつ懐に余裕のある方はぜひ発売時期が近い『シェンムーIII』と比べて遊んでみてください。両方とも変なゲームではあるのですが『シェンムーIII』が天然ボケ的な異質さであるのに対して、本作は「全力で“変なこと”をやりにいってる」とも言えます。


本作はさまざまな挑戦をしています。正直、そのすべてが大成功で万々歳というわけではないですが、その試み自体は刺激的で面白いので、ぜひ今作で終わりにせず続けてほしいと思います。春日一番の物語をこれからも見ていきたいですし、RPG要素もまだまだブラッシュアップする余地があって、この方向性のままあと何作か遊んでみたい気持ちにさせられました。

そして本作は(春日一番の陽気なキャラクターもあって)シリーズの中で最も「ストレートに笑える作品」に仕上がっていると思います。そのためにストーリー部の「破綻したシリアスさ」がより浮き立って気になってしまうという側面はあるのですが、とにかくプレイしている間はずっと楽しいゲームです。人を選ぶ作品なのは間違いないですが、誰がなんと言っても僕はこのゲームが好きなのです。


総合評価: ★★★
良い点

・春日一番をはじめとしたキャラクターが魅力的
・実験的で新鮮味がある
・過去作最高とも思える凄まじいボリューム
・ストレートに笑える

悪い点

・ダンジョンが退屈だったりと、RPG要素に洗練不足を感じる
・ストーリー後半部が大味

※ UPDATE(2020/1/25 21:00):本文を一部追記し、スクリーンショットを削除しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございました。

※ UPDATE(2020/1/28 13:20):ゲームタイトルの表記を正しいものに修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございました。



「Game*Sparkレビュー」ではハードコアゲーマーなライターから読者に向けて、オリジナルレビューをお届けします。対象となるタイトルはAAAからインディーまで、ジャンルやプラットフォームを問わず「ハードコアゲーマーのアンテナが反応するゲーム」です。

このレビューでは、3段階評価をベースに「良い点」「悪い点」を挙げながら総評を下します。最低評価は「難アリ/オススメできない」、中評価は「ふつう/そこそこオススメ」、最高評価は「とても面白い/とてもオススメできる」に当ります。「プレイレポート」として公開している記事では、本企画と同様の評価を付けません。また、記事の性質上、ストーリーなどの「ネタバレ」を含む場合がありますので、閲覧の際はご留意ください。

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