新型コロナウイルス感染拡大の影響で「東京オリンピック」が1年延期された。開幕は2021年7月23日。ゴルフも各国・地域の代表選考の時期が1年延び、女子は同年6月28日の世界ランキングをもとにした五輪ランクで決まる。開催時期、選考期間の延長は代表およびメダル争いをどう変化させるのか。解説者としてもおなじみのプロゴルファー村口史子が解説する。

プランが崩れた渋野日向子は?

東京五輪が1年延期されたことで、選手たちのプランは崩れる形になってしまいました。渋野日向子選手もその一人。彼女は当初今夏の東京五輪での活躍を目指し、その後秋には来年の米ツアー出場権をかけた予選会に出場するという青写真を思い描いていました。

昨年の全英女子オープン優勝で一気に出場の現実味が帯びた東京五輪は彼女の今の大きなモチベーションになっています。世界ランキングは4位の畑岡奈紗選手に続く日本人2番手の12位。14位の鈴木愛選手を含めた3人が現在、日本代表選出圏内にいます。

渋野選手のプランこそ崩れましたが、主戦場を米国に変えても東京五輪という大きなモチベーションがさらなる活躍にプラスに働くのではないかと思っています。今の世界の状況を考えれば、ゴルフ界も今後どのような日程になるのかは誰もわかりません。米ツアーの最終予選会は12月への延期が発表されましたが、仮に通過すればまた新たな気持ちでゴルフに取り組むことになるでしょう。

もちろん芝質の変化への適応、アプローチ技術の向上など課題は出てくるでしょうが、彼女は目標に向けて“突き進む力”が強みの一つだと思います。昨年一気に注目され、国民的な存在になりました。誰にでも、自分が気をつけていても無意識のうちに気が緩むことがあります。米ツアーに主戦場を移した際、環境変化など気持ちの浮き沈みが出るケースもあると聞きます。

ただ、近い未来に目標に掲げているものがあることは、彼女の“突き進む力”が発揮される場面だと思います。そういう意味で、五輪は彼女の原動力の一つになると思います。

世界ランクのポイント配分は、米ツアーの方が多いです。ツアーが再開されるようになったら国内で小技などをさらに磨き、来年以降、人目にさらされない海外で伸び伸びとプレーできることはプレーヤーとしても彼女の良さをこれまで以上に引き出すと思っています。環境面においても彼女の人懐っこい性格を考えれば、きっと海外の選手に馴染むのも早い。実力は十分に通用します。壁にぶつかってもうまく切り替えられる選手ですので、米国に主戦場を移してもさらにランクを上げる可能性もあると言えるでしょう。

“3強”は続くか 15位の壁

五輪出場を争う上で重要になるのは “15位以内”。一つの国・地域でランク上位2人が代表に選出されますが、15位以内に複数人選手がいれば最大4人までが出場できます。前出の通り現在は畑岡選手、渋野選手、鈴木愛選手が15位以内。五輪が1年延期されたことで後続の選手たちにもチャンスは出てきましたが、この15位以内のハードルはけっこう高い。

畑岡選手は本命、渋野選手も鈴木選手も簡単にランクを下げる選手ではありません。日本勢の4番手は稲見萌寧選手(59位)、5番手は河本結選手(62位)、さらに上田桃子選手(63位)、勝みなみ選手(67位)、比嘉真美子選手(71位)、小祝さくら選手(76位)、古江彩佳選手(78位)が続いています。河本選手を除き、他の後続選手たちは日本ツアーが主戦場です。

世界ランクのポイントは出場した試合数なども関わり、出場試合の少ない古江選手は平均ポイントが上がりやすい状況にあります。ただ、昨年賞金女王の鈴木選手は日本で7勝(1勝は日本開催の米ツアー「TOTOジャパンクラシック」)を挙げながらも14位。入れ替わりが激しい女子ゴルフ界ですが、15位以内に食い込むためには、昨年の鈴木選手と同等の活躍は必要になってくると思います。

第2の渋野日向子が出現すれば…

世界ランクを一気に浮上させたのは、やはり昨年の渋野プロです。全英女子の優勝で46位から一気に14位まで浮上しました。日本人のメジャー優勝が42年ぶりだったことが難しさを物語りますが、若い世代には「渋野選手にできたなら、私にも可能性がある」と前向きにとらえる選手もいると思います。

15位以内を目指すには、来た流れに乗り切ることが最も重要です。五輪への出場を目標にして、チャンスが来たら必ずつかむ。畑岡選手、渋野選手、鈴木選手の争いに食い込むにはそれくらいの勢いが必要になると思います。

金メダリスト排出の韓国はさらに熾烈

日本以上に熾烈な代表争いとなっているのが韓国です。1位コ・ジンヨン選手をはじめ15位以内に最多の6人がいます。前回のリオデジャネイロ五輪金メダリストの朴仁妃選手は11位で5番手と現在代表選出圏外。若手が多い女子ゴルフ界のなかで31歳の朴選手はベテランの域に入っていますが、パッティング技術はいまも世界一です。今年も2月の「ISPS HANDA オーストラリア女子」で優勝しました。

10代や20代前半の選手たちが台頭しているので簡単な代表争いにはならないでしょうが、リオ五輪も照準を合わせたようにケガから復帰し金メダルを獲りました。五輪の出場さえ決めれば、1試合に力を出し切ることができる選手。1年後、日本勢最大のライバルになり得る存在であることは変わりません。