家電ジャーナリスト安蔵靖志が本音で語る!

【ホットクック VS バーミキュラ】ヘルシオ ホットクック・詳細レビュー編

前回は「ヘルシオ ホットクック vsバーミキュラ ライスポット」ということで、どちらがどのような人に向くのかという結論から紹介した。今回はヘルシオ ホットクックの最新モデル「KN-HT24B」(実売価格6万6500円)の魅力や欠点などについて、より詳しく紹介していきたい。

↑シャープが2016年12月に発売した「ヘルシオ ホットクック KN-HT24B」(実売価格6万6500円)↑シャープが2016年12月に発売した「ヘルシオ ホットクック KN-HT24B」(実売価格6万6500円)

 

「まぜ技調理」と「食べごろ予約調理」がバーミキュラにはない魅力

ホットクックの大きな魅力は、水をまったく使わずに食材と調味料の水分だけで調理する「無水調理」を実に手軽に行える点にある。もちろん無水調理だけでなく、普通に水を使って調理する料理のレシピもふんだんに用意されており、野菜の下ゆでからメインの料理作り、発酵食品作りなどさまざまな用途に使えるようになっている。

 

無水調理ができるという点では、次回紹介するバーミキュラ ライスポットも同様だ。しかしホットクックにしかない大きな魅力として「まぜ技調理」と「食べごろ予約調理」が挙げられる。まぜ技調理というのは、内釜の内ぶた部分に搭載されている「まぜ技ユニット」の「まぜ技ウイング」が自動的に開閉し、必要に応じてカレーやシチューなどをかき混ぜてくれるというもの。

↑内釜の内ブタに搭載されている「まぜ技ユニット」。写真右は開いたところ↑内釜の内ブタに搭載されている「まぜ技ユニット」。写真右は開いたところ

 

食材をセットしてから最大12時間後までのできあがり時刻を設定できる「食べごろ予約調理」も、このまぜ技調理機能があってこそ生かされるといっても過言ではないだろう。カレーを作る場合、通常は肉や野菜などに先にしっかりと火を通して柔らかくしてから、最後の最後にカレールウを投入して味を調える。しかしまぜ技ユニットを搭載していることで、「帰宅してから最後にルウを投入する」といった一手間すらかけずに、まさに“放っておくだけ”でできあがるのだ。

 

予約調理機能も、簡単そうに見えて実はかなり高度な機能だ。どの炊飯器にも予約調理(予約炊飯)機能は搭載されているが、予約炊飯では炊き込みご飯はNGとなっている。長時間具材を水に浸した状態では、食材が腐敗してしまう危険性があるためだ。

 

しかしホットクックの場合、野菜だけでなく生肉などもセットして最大12時間もの予約調理が可能となっている。これは予約調理をスタートしてからすぐに食材に火を通し、食品が腐敗しやすい温度帯を避けて高温状態を保つためだ。予約時刻に近付くとそこから調理をスタートして最終状態まで仕上げるため、安心して放っておくことができるようになっている。

↑食べごろ予約調理機能の火加減のイメージ(シャープのプレスリリースより)↑食べごろ予約調理機能の火加減のイメージ。食品が腐敗しやすい温度帯を避けているのがわかる

 

調理メニューを選択しスタートボタンか予約ボタンを押せばOK

使い方はとてもシンプルだ。内鍋に食材をセットしてフタを閉め、メニューボタンを押して調理メニューを選択する。スタートボタンを押すとおおよその残り時間が表示されて調理がスタートする。ここでスタートボタンではなく予約ボタンを押すと、できあがり時刻の設定を促されるので、設定してスタートボタンを押すと予約が完了するという流れだ。

↑ホットクックの操作部。ディスプレイはかなりシンプル。調理をスタートすると残り時間が表示される↑ホットクックの操作部。ディスプレイはかなりシンプル。調理をスタートすると残り時間が表示される

 

調理メニューは「カレー・スープ」、「煮物」、「ゆで物」、「蒸し物」、「めん類」、「発酵」、「お菓子」の7つがあり、それぞれにサブメニューが用意されている。「ビーフカレー」と「クリームシチュー」、「ひじきの煮物」と「きんぴら」といったように、同じ調理メニューで違う料理を作れるようになっている。

 

では、実際に作ってみることにしよう。

 

1つめは「豚の角煮」だ。最初にサイコロ状に切った豚バラ肉を内鍋にセットし、肉を下ゆでして油抜きをするメニュー(まぜ技ユニットを使わない「カレー・スープ 1-2(まぜない)」メニュー)を実行する(約30分)。煮込んだ豚バラ肉をいったん取り出して内鍋を洗い、肉と調味料、水を入れて「煮物 2-7」メニューを実行する。トータル約1時間30分でできあがり。完成した豚の角煮は、事前に下ゆでしたため脂がしっかりと抜けており、柔らかくさっぱりとした印象に仕上がった。なお、豚の角煮は予約調理も可能だ。

↑約30分かけて下ゆでした豚バラ肉を取り出し、調味液で煮込む↑約30分かけて下ゆでした豚バラ肉を取り出し、調味液で煮込む

 

↑完成した豚の角煮↑完成した豚の角煮

 

レシピ通りに作ると比較的味が薄い傾向に

続いて「ブリ大根」(予約調理可能)に挑戦してみよう。筆者はほぼ毎日料理をするのだが、魚の料理はあまり得意ではない。魚というと刺身か焼き魚かフィッシュフライ程度で、煮魚を作ることはほとんどない。そんな人でも手軽に作れるのだろうか。

 

レシピに従って調理を進めていきたいのだが、いきなり「ぶりは熱湯をかけ、霜降りする」とある。調べてみたら熱湯をかけて表面の臭みを取る処理のことのようだが、知らなかったので面食らってしまった。ブリ大根の場合は豚の角煮と違い、別途お湯を沸かして下処理する必要があるようだ。

 

下処理さえすれば、あとは簡単。輪切りもしくは半月切りにした大根、ブリ、調味料の順にセットし、「煮物2-11」メニューを選んでスタートするだけだ。他のレシピも試してみて感じたことだが、ホットクックは「健康調理」を大きなコンセプトとして打ち出したヘルシオブランドの1モデルということもあって、レシピは比較的味が薄めになっている。「煮付けのおいしい定食屋のブリ大根」などをイメージすると、ちょっと味が薄すぎるきらいはあるかもしれない。とはいえ「薄すぎる」ということはなく、「優しい味」という印象を受けた。

↑大根、下処理したブリ、調味料を入れ、約40分調理したところ(間違えてブリを下に敷いてしまった)↑大根、下処理したブリ、調味料を入れ、約40分調理したところ(間違えてブリを下に敷いてしまった)

 

↑白髪ネギを添えてできあがり。味は薄めで優しい印象の仕上がりだった↑白髪ネギを添えてできあがり。味は薄めで優しい印象の仕上がりだった

 

カレーは香味野菜の味わいが効いた上品な味わい

3つめにまぜ技ユニットを使う「チキンと野菜のカレー(無水カレー)を紹介しよう。最初の2つはどちらも下処理が必要だったが、これは本当に簡単。トマト、タマネギ、セロリ、鶏の手羽元、にんにくとショウガ、市販のカレールウを順番にセットし、自動調理メニューから「カレー・スープ 1-1」を選んでスタートを押すだけだ。あとは約1時間5分、完全に放っておくだけでできあがる。

↑トマト、タマネギ、セロリの上に鶏の手羽元、カレールウを入れたところ。トマトは見えていないが、3個しっかりと入っている↑トマト、タマネギ、セロリの上に鶏の手羽元、カレールウを入れたところ。写真ではトマトは見えないが、3個しっかりと入っている

 

↑約1時間5分、しっかりと煮込んだところ。水を全く入れていないのに、かなりの水分が出ていることが分かる↑約1時間5分、しっかりと煮込んだところ。水を全く入れていないのに、かなりの水分が出ていることが分かる

 

↑無水カレーのできあがり↑無水カレーのできあがり

 

一般的なカレーと違ってトマトをふんだんに使う(4人分でトマト3個、約450g)こともあって、酸味が効いている。さらにタマネギやセロリの甘みがタップリと出ているのも大きな特徴。ぶつ切りのニンジンやジャガイモがたくさん入った家庭のカレーというより、高級レストランのような上品な味わいという印象を受けた。トマトをたっぷりと使うのは野菜の水分を利用するためなので、酸味が苦手という人はトマトを減らしてタマネギを増やすというのもいいかもしれない。

 

【メリット1】 放っておけるのはとにかくラク!

前回も紹介したが、ホットクックの魅力はとにかく「放っておけること」にある。「カレー・スープ」のメニューはそのほとんどが予約調理に対応しており、カレーやシチュー、けんちん汁、ポタージュ、クラムチャウダー、サムゲタンなどさまざまなメニューを「朝に仕込んで夕方にできあがる」といった予約調理ができる。

 

予約調理に対応するのは「カレー・スープ」メニューのほとんどと「煮物」メニューの一部のみだが、それ以外のメニューでも「工程のたびに作業が必要」といったことはほとんどないため、調理をホットクックに任せながら他の家事をしたりできるし、筆者の場合はゆっくりと原稿を書いたりすることもできる。工程のたびに呼び出されては作業をしなければならないとなると、結局キッチンに居っぱなしでなければならなくなるので、その点はかなりありがたく感じた。

 

【メリット2】 レシピ集に従えば確実においしく作れる

もう1つの大きなメリットとして、「レシピ集が分かりやすい」ことを挙げたい。

 

例えば「ビーフカレー」の場合、お肉何グラムというのは当たり前だが、野菜が「玉ねぎ(くし切り) 2個(400g)」、「にんじん(乱切り) 1/2本(100g)」といったように「個数」と「切り方」、そして「重さ」が表示されている。もちろん、野菜の切り方については料理の基本を教えてくれる本などを参考にする必要がある。しかし、重さが書いていないレシピ集は結構多いので、「玉ねぎ(大) 2個」とか「玉ねぎ(中) 3個」といわれても、それがどのくらいの分量なのか分からないという人もいると思う(筆者もその一人だ)。

↑こちらがレシピブック。野菜の個数だけでなく分量もしっかりと記載されているのが料理に慣れていない人にはうれしいところだ↑こちらがレシピブックの中身。野菜の個数だけでなく分量もしっかりと記載されているのが料理に慣れていない人にはうれしいところだ

 

調理家電をレビューする場合、いかにして正確にレシピ集のやり方を踏襲するかが重要になるため、分量が書いていないと困ってしまうのだ。これは一般家庭でレシピを評価する場合もそうだろう。その人の書いたレシピが自分に合っているかどうか、塩加減などの味付けはどうか、一度しっかりと標準の分量で作らないと判断がしづらくなってしまう。ホットクックのレシピはそこがハッキリとしているので、あとで好みに合わせて分量や調味料の配合をアレンジするのにも役立つだろう。

 

【デメリット】 操作に慣れが必要で応用しにくい

ホットクックの最大の難点は、この調理メニューを番号で選ぶ点だろう。「チキンと野菜のカレー(無水カレー)」は「1-1」、「豚の角煮」は「2-7」といったように、すべての調理メニューは数字で選ぶ仕組みだ。このため、レシピブックもしくはメニューガイド(メニュー番号と作れる料理を一覧できる紙)がないと、極端な話、何もできなくなってしまう。

↑ディスプレイが小さくて表示される情報が少ないので、操作には慣れが必要だ↑ディスプレイが小さくて表示される情報が少ないので、操作には慣れが必要だ

 

また、レシピ集を基にアレンジするのは難しくないが、例えばクックパッドなどで見つけた料理をホットクックで調理するのはかなり難しい。ホットクックの調理の流れが鍋などの普遍的な調理道具と異なるためだ。

 

おいしい料理が手軽にできるが料理を覚えたい人には不向き

改めて結論を紹介したいが、ホットクックは「おいしい料理を手間暇かけずに作る」のがかなり得意だ。「時短調理」といっても圧力鍋のように高温で短時間に火を通すというのはなく、「手間をかける時間を短縮する」という方向性に向かっているのがユニークだ。機械まかせで繊細な温度管理が可能なので、とろ火でコトコトと炊くような煮魚も安心して作れるのも魅力となっている。

 

ただし先ほども紹介したように、ディスプレイがかなり小さくてシンプルになっているため、レシピブックもしくはメニューガイドがないと何もできなくなってしまう。鍋のような道具とは使い勝手が異なるため、ホットクック用に作られたレシピ以外のものを作るのが難しい。

 

結婚して家庭を持つとか、単身赴任をスタートする、社会人生活を始めるなどの節目に、手軽においしい料理を作れる家電がほしいという人にはかなりオススメだ。しかし、料理上手になるために選ぶ調理家電となると、ちょっと違うのかなというのが筆者の印象だ。もちろん、主菜作りを安心してホットクックに任せつつ、四苦八苦しながら副菜を作って料理を覚えていきたいというのであればいいかもしれない。

 

ホットクックは「調理道具」というよりも、「自動でおまかせできる便利な調理家電」という位置付けの製品だ。例えば「料理は一通りできるけど、共働きなので料理にあまり時間をかけられない」という人や、「ガスコンロに火をかけたまま忘れてしまうことがあるので、安心して料理を作れる家電がほしい」という人などもピッタリなのではないだろうか。

 

次回は【 ホットクックvsバーミキュラ】の最終回。バーミキュラ ライスポットの詳細レビューをお届けする。