命、平和...短歌に込め 杉原ウィーク記念大会

 第2次世界大戦中に"命のビザ"を発行し多くのユダヤ難民を救った元外交官杉原千畝(ちうね)氏(1900〜86年)を顕彰する杉原ウィーク記念短歌大会が岐阜県加茂郡八百津町で行われた。「平和・命・思いやり」をテーマに第18回となる大会に寄せられた歌は、児童から一般まで過去最多の5095首。作品は、命の輝きと生あるものへの慈しみ、さらに時代の危機感をにじませ、7月30日には人道大賞など各入賞作の講評、表彰も行われた。

 大会は、どんな状況や立場でも人道を優先した杉原千畝氏の精神と平和への願いを受け継ごう―と毎年開催。戦後72年の今年は中・高校生の応募がほぼ倍増し、若い世代の関心の高まりとともに相次ぐ紛争やテロ、ミサイル発射など国際社会の緊張をも示す形となった。応募作は歌人平井弘さん(81)、県歌人クラブ副会長後藤すみ子さん(68)、本紙で県歌壇史を執筆する小塩卓哉さん(57)を選者に人道大賞、愛賞、心賞、勇気賞、佳作計45点と学校賞(東京・成城学校)、同奨励賞(八百津町・潮見小学校、小牧市・小牧南高校)が選ばれた。

 大賞は学生の部が《三びきのうりぼう走るがけのぼるいっしょうけんめい生きてるいのち》(潮見小3年後藤綸(りん)さん)、一般の部が《この指をモロー反射で握る手に武器を持つ事教えはしない》(名古屋市・細川みちえさん=57歳)の2首。後藤作品は「歌のリズムも良く生の健気(けなげ)さ、必死さ、うれしさが含まれている」(平井さん)、細川作品は「新生児の反射行動に国際社会の危機感と平和を願う思いが重ねられた」(後藤さん)と評された。

 大賞作に顕著なのが、命の輝きとそれを守り育てようという平和への願いだ。また"うりぼう"の必死に生きる姿は、大震災や原発事故後のわれわれの姿にも重なりはしないか。表現こそ異なっていてもそれらは各受賞作に通じる思いだ。

 心賞の《一つぶのたねそこからつながるえだまめのかぞえきれないあたらしいいのち》(潮見小3年いとうかなとさん)や《握られた人差し指が湿りだす赤子の体温命の証》(一宮西高1年佐野友香さん)は、植物や幼子への細やかなまなざしと命をとらえる感性に満ちている。さらに愛賞の《羽広げ飛んでいこうと思い動くそしたらきっといい風が吹く》(八百津中3年安藤茉央さん)、《ボール置きバットを置きて若者がいがぐり頭を垂るる一分》(関ケ原町・大橋順雄さん)には、自身の体験と照らし合わせた共感と世代を超えた共鳴がある。大戦時に激戦地となった沖縄からは勇気賞の《蝉たちは墓標の名を忘れぬと鳴いているんだ今もこれからも》(糸満高2年儀間勇樹さん)の作品もあった。

 入賞者約30人が出席した講評会では小塩さんの司会で一点一点、批評と作歌の思いを語り合った。歌作の動機、助詞一文字で変わる表現力、比喩や短歌表現の可能性、そして何よりも命や日々の出来事を頭だけで考えるのでなく、自らの感性で表現する大切さを確認し合った。また、表彰式の総評で小塩さんは「過去の大会を見直しても素晴らしい作品が多い。18年の重み、その精神が短歌という文芸で連綿と続き、秀歌を生んできた」と話した。

 当日は、杉原記念館などがある人道の丘公園も訪れた参加者たち。周囲の林からヒグラシの鳴き声が響き渡るなか、"命のビザ"などの資料も見学し杉原千畝氏の足跡をしのんだ。

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