「家族や地域の人たちに聖火を持って走る姿を見せたかった」「リスクがある以上致し方ない」―。大会組織委員会が24日夜、福島県で26日に始まる予定だった国内聖火リレーの中止を決定した。4月4、5日に岐阜県内を走るはずだったランナーや、リレー区間の住民からは、戸惑いや落胆の声が上がった一方、一定の理解を示す意見もあり、複雑な思いが入り交じっていた。

 準備を進めてきたランナーたちは急な決定に肩を落とした。久松波音君(12)=大垣市上石津町=は小学校が休校になってから毎朝、祖父と学校まで走って体力を付けてきた。「聖火ランナーに選ばれたことを多くの人が喜んでくれて、『見に来てね』と声を掛けてきたのに」と残念な様子。パート従業員長谷部亜希さん(36)=美濃市大矢田=は先週末にはコースを下見していた。「88歳になる祖父に聖火を持って走る姿を見せたかった」と話し、不破郡関ケ原町で民泊を営む高木愛さん(36)は「宿泊客や昨年8月に生まれた長女に『お母さんはこんなことをしていたよ』と自慢したかった」と悔やんだ。

 一方で、和菓子店店主の古田敦資さん(45)=関市本町=は「聖火リレーは火だけでなく、人々の思いも運ぶもの。残念だが、コロナの影響が続く中では仕方ないことかもしれない」と受け止めた。県内最年長ランナーの赤梅昭三さん(91)=下呂市少ケ野=は「一人でも犠牲になる人の数を抑えることが大事」と話し、医師山内雅裕(まさひろ)さん(42)=岐阜市市橋=は「残念なのと安心した気持ちが半々。医療者である以上、感染リスクがあるところに赴くのに懸念はあった」と複雑な心情を打ち明けた。今後については未定だが、蓑谷雅彦さん(54)=高山市森下町=は、「今回選ばれた同じメンバーで走るのがベスト」と望んだ。刀匠・二十六代藤原兼房さん(41)=関市小瀬=も「コロナに打ち勝った後、チャンスがあれば思いっきり走りたい」と願った。

 県内の聖火リレーの出発地に決まっていた旧中山道馬籠宿がある中津川市神坂の神坂公民館では24日夜、市担当者が住民約50人に聖火リレーが行われない方向性を伝えると、会場は重苦しい空気に包まれた。

 会合では、リレー当日のおもてなし内容を決定する予定だった。昨春に約60年ぶりに行政区が統合された馬籠、神坂地域の住民が2月から準備を進めてきており、地元への思いがこみ上げて涙を流す出席者もいた。神坂地区区長会の洞田初男会長(69)は「こういう事態になって残念だが仕方ない。来年に聖火リレーがあるのならそれを楽しみにしたい」と語った。

 一方、聖火リレー岐阜県実行委員会の担当者は24日夜、26日に始まる予定だった国内聖火リレー中止の決定を冷静に受け止め「方針に従い、今後の準備を進めたい」と述べた。

 県内でリレーが予定されていた11市町とは25日に連絡を取るという。担当者は大会組織委からの連絡を待った上で「必要な業務を整理したい」と語った。