4月16日夜。政府が緊急事態宣言の対象地域を岐阜県を含む全国に拡大したことを受け、県庁でも急きょ本部員会議が開かれた。県内の全市町村長がテレビ会議で参加する中、古田肇知事は店舗や施設への休業要請と、一律50万円の協力金の支給をセットで発表した。休業を求めるのは18日からで、事業者への周知期間は事実上、1日のみ。説明や問い合わせへの対応を担う市町村の首長からは、質問や懸念を訴える声が相次いだ。

 「前代未聞のスピード感で決まった」(県幹部)という決定劇の裏側には、愛知県の存在があった。

 愛知県が、休業要請と協力金50万円の支給方針を固めたとの情報がもたらされたのも、16日だった。岐阜県幹部は「岐阜県の店が開いていると、愛知から人が流れ感染リスクが高まる。さらに、愛知の協力金は50万円なのに、岐阜がそれより低いと店舗の協力も得られにくくなる。岐阜も打ち出す必要があった」。岐阜県で協力金事業を担当する商工労働部に古田知事の決断が伝えられたのは、同日昼ごろだったという。

 そこからは早かった。市町村長に方針を説明したのは16日午後1時過ぎで、事業概要を発表したのは同7時30分過ぎ。政策は1日で決まった。古田知事は記者会見で「感染(の拡大)は待ってくれない。通常の政策と同じペースで進めるべきものではない」と市町村に理解を呼び掛けた。

 翌日朝、県庁の電話とホームページがパンク状態となった。「自分の店は休業要請の対象なのか」などの問い合わせが殺到。県商工労働部の職員約200人のほぼ全員が、電話にかじり付いた。

 崎浦良典部長は「想像を絶する光景だった。県民の関心の高さや、休業による収益悪化の深刻さが伝わってきた」と振り返る。

 さらに、4月23日に申し込みが始まると、ぎっしりと申請書が詰まったコンテナが連日、次々と県庁に運ばれてきた。件数は約1万6千に上り、各課から集められた職員約40人が対応に追われた。多くの申請書に不備があり、追加の書類提出などを求める想定外の問題もあったが、担当した企業誘致課主事の九野絢圭さん(24)は「金銭的に困っている皆さんの声に何としても早く応えるため、必死だった」。県担当者によると、同様の枠組みで協力金を支給する都道府県のうち、岐阜県が最初に支給決定手続きが完了したという。

 一方で、事業規模約76億円の協力金支給は、県財政への負担も大きかった。

 県は5月、条例を改正して県庁舎整備に向けて積み立てた基金を約20億円切り崩し、新型コロナ対策費を捻出した。リーマン・ショック以上の経済打撃と言われる「コロナ・ショック」で税収減も確実視されている上、仮に第2波が来た場合、さらなる対策も必要となる。県の貯金に当たる財政調整基金の残高は約75億円だが、県担当者は「今後の事態によってはすぐに底を突く可能性もある。予断を許さない状況だ」と分析する。