◆昨年出場者らリモートでラジオドラマ制作

 8月に兵庫県で開催予定だった「放送の甲子園」ともいわれる第67回NHK杯全国高校放送コンテストが新型コロナウイルスの影響で史上初の中止となったことを受け、出場の夢が絶たれた高校放送部の後輩らを勇気づけようと、昨年度出場した岐阜県内の高校を巣立った大学生が、他県の出場経験者らとラジオドラマを共同制作した。外出自粛や飛沫(ひまつ)感染への警戒が続く中、スマートフォンなどを使い自宅で録音、リモート制作した。作品はインターネット上で配信する予定だ。

 ラジオドラマの制作に取り組んだのは、東京学芸大1年の山崎すがらさん(18)=岐阜北高校出身、岐阜市=を中心とする出場校の元放送部員ら13人。昨年度のコンテストで意気投合し、今春から12人が東京都内の大学に進学する縁から、3月に映画制作団体「黎地(れいち)フィルム」を立ち上げた。しかし、新型コロナ対策の外出自粛要請を受け、上京を延期。企画したドラマ撮影も取りやめとなった。

 そんな中、本年度のコンテストの中止を受け、「表現できないまま、卒部を迎えるのはつらい」「心の整理がつかない」といった後輩の落胆の声が伝わってきた。「表現することを諦めてほしくない。チャレンジするモデルが示せたら」。山崎さんがメンバーにラジオドラマ制作を呼び掛けると、「離れていても、スマホ1台で作れる良い発想」「表現の選択肢が広がる」と全員が賛同し、5月初旬から作業が始まった。

 制作したラジオドラマは、会員制交流サイト(SNS)と文通をテーマとした「葉桜」。田舎の男子高生が、文通で出会った都会の女性と、学年のマドンナ的存在である女子高生との間で翻弄(ほんろう)される、ほろ苦い恋愛模様の物語だ。

 同団体の代表の一人、秋田県の大森開登(かいと)さん(19)が台本を執筆。山崎さんが主人公の語りを担当し、スマホやコンデンサーマイクで在宅録音した。大森さんが「完全リモートでどこまでできるか挑戦だった」と振り返るように、北は北海道、南は沖縄に住むメンバーが制作に携わり、音声データをネット上のクラウドサービスを使って編集した。ビデオ会議で打ち合わせや台本の読み合わせを行い、2カ月ほどかけて約20分の作品を完成させた。

 山崎さんは「これまでの制作スタイルが覆る経験だった。対面と同等の環境で作品づくりに取り組めた」とアピール。メンバーは現在も自宅で大学のオンライン授業を受ける傍ら第2弾を構想中で、山崎さんは「現状を悲観せず挑戦を続けてほしい」と放送部の後輩にエールを送った。

 作品は動画投稿サイト「ユーチューブ」上の公式チャンネル「黎地フィルム」で7月5日から視聴できる。