岐阜市大宮町の加藤栄三・東一記念美術館で企画展「岐阜新文化展がくる」が開かれている。岐阜をアニメキャラクター風のイラストで盛り上げようと、県内外のイラストレーター仲間がグループ「岐阜新文化展」を結成。岐阜の名所や名産品、ゆかりの武将や姫を描き下ろした。県内の公立美術館でアニメイラストの作品展を開くのは初めてで、注目を集めている。9月13日まで。

 ヒット映画「君の名は。」や映画化された漫画「聲(こえ)の形」などで舞台となった岐阜県は、全国的にアニメの聖地と認知されているものの、「アニメ風キャラクターで地元の魅力を発信する文化が、県内では充実しているとは言えない」と話すのは、同展代表のイラストレーター由愛乃(ゆめの)ナカさん(30)=岐阜市=。この現状を打破しようと、大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」放送を機に、今回の作品展を働き掛けた。イラストレーターや日本画家ら計16人が賛同し、約50点を出品した。

 由愛乃さんは、岐阜城を背景に斎藤道三、明智光秀、織田信長の3武将をアニメキャラクター風に表現し、岐阜市土産品協会の商品パッケージに採用された「戦国城下町岐阜」や、関市の通称「モネの池」、岐阜大仏を題材にしたデジタルイラストを出品。絵の背景部分を変更するだけで昼夜双方を手軽に描けるのはデジタル作品ならでは。デジタル作品では、イラスト用のソフト選びや印刷技術で個性を出すという。

 イラストレーター小島千枝さん(36)=羽島郡岐南町=は、岐阜特産の柿をモチーフにしたオリジナルキャラクター「柿猫」のイラストなどを出品。漫画を手掛けるたくろうさん(47)=本巣市=は、岐阜発祥といわれる口裂け女をアニメ風に描き、掛け軸に仕立てた異色作を出品するなど、作家たちは見た人が楽しいと感じるような作品の制作を心掛けたという。

 ともすれば大衆文化、サブカルチャーなどと位置付けられ、美術館では扱われることが少ないジャンルのアニメ。同館の山本真一館長(52)は「特に美術に関して、岐阜の人は保守的」とばっさり。日本画と漫画は多視点画法をとるという特長が共通しており、「アニメ作家は、どう描けばかわいく、格好良く見えるかを熟知している」と感心する。県内初の試みとなる今回の企画展の狙いについて、「アニメのように若者が熱狂するものには必ず何か魅力がある。良いものをどんどん紹介したい」と語る。

 実際、アニメファンはもちろん、同館を訪れた高齢者からも「作品が明るく、違う世界のよう」と好評を博している。由愛乃さんは「最初は面白がってもらえれば。発信を続けていくことで芸術、文化としての価値を高めていきたい」と話している。岐阜新文化展は今後もグループ展などを継続的に行っていく予定。