プレイするだけで投薬並みに集中力が高まるゲーム「Decoder」をケンブリッジ大学が開発

プレイするだけで投薬並みに集中力が高まるゲーム「Decoder」をケンブリッジ大学が開発

ケンブリッジ大学の研究者がゲーム開発者とともに「Decoder」と名付けられたゲームアプリを開発しました。Decoderを1カ月プレイし続けた人は注意力・集中力が高まり、興奮剤などの投薬時と同程度の認知能力アップをみせたそうです。

Frontiers | Improvements in Attention Following Cognitive Training With the Novel “Decoder” Game on an iPad | Frontiers in Behavioral Neuroscience
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnbeh.2019.00002/full

Cambridge University releases a brain-training app that improves concentration akin to Ritalin - ABC News (Australian Broadcasting Corporation)
https://www.abc.net.au/news/2019-01-22/cambridge-uni-develops-app-with-ritalin-like-effects/10737268

ADHDや統合失調症などの神経精神障害や外傷性脳損傷(TBI)では、損なわれた注意力を補う目的でメチルフェニデート(リタリン)やニコチンなどの興奮剤が使用されています。注意力が低下するのは病気の症状に限らず、健常者であってもストレスや疲れなどの環境要因によって注意力が散漫になることはあり、注意力を高め、高い状態でキープするための方法について研究が進められています。

そんな中、ケンブリッジ大学のバーバラ・J・サハキアン博士らの研究チームは、プレイすることで集中力を高めるゲームアプリ「Decoder」の開発を行っています。iPadでプレイすることを前提に開発されたDecoderがどのようなゲームなのかは、以下のムービーで確認できます。

Decoder Trailer - YouTube

Decoderは、プレイヤーが諜報員になって世界中の犯罪組織の壊滅を目的として活動するというゲームです。

ゲーム内では目的達成を妨げる数字パズルが頻繁に登場するとのこと。

与えられるミッションは最大3つ。ミッションの難易度は、ユーザーのパフォーマンスに合わせてリアルタイムで変動する仕組み。ミッションをクリアするごとに暗号の一部が解読できます。

解体ターゲットとなる犯罪組織をプレイヤーは選択できます。

研究用とはいえ、Decoderのゲームとしての完成度はかなり高そうです。

サハキアン博士の研究チームはDecoderによって集中力を高めることができるかを調べるため、75人の健康な青年を被験者として集め、1つのグループにはDecoderを、もう1つのグループには伝統的なゲームであるビンゴを、残りのグループには何のゲームも与えませんでした。Decoderとビンゴをするグループは、1カ月間に1時間ゲームをするセッションが8回義務付けられたとのこと。

4週間後に3つのグループのメンバー全員に対して、アルツハイマー病やうつ病、統合失調症など神経学的な疾患を持つ人の認知機能を評価するために推奨されている「Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery's(CANTAB)」と呼ばれるテストが行われました。

CANTABは、画面にランダムに表示される数字に対して、一定の条件に合致するものが表示されたときにできるだけ素早くボタンをタッチすることが求められるとのこと。CANTABをプレイする様子は以下のムービーで確認できます。

CANTAB Rapid Visual Information Processing - YouTube

3つのグループのCANTABの結果、Decoderをプレイしたグループは「ターゲット感度」という項目でビンゴ・グループの約2倍という目覚ましいスコアをたたきだしました。

CANTAB以外にも、25個の点をできるだけ早くつなぎ合わせる「Trail Making Test(TMT)」というテストにおいてもDecoderグループが良好なスコアを記録したとのこと。

そして、プレイ間隔を1時間とったゲームテストにおいても、Decoderグループはビンゴ・グループに比べて「楽しさ」「やる気」「俊敏さ」「前向きな感情」といったメンタル面で高いスコアが維持されたことも判明しています。

集中力アップという点で優れた効果をもたらしたDecoderのプレイですが、それだけでなく集中力が持続する時間においても良好な結果がみられたとのこと。以上の結果から、サハキアン博士の研究チームは、「認知トレーニング用に開発されたiPad向けゲームDecoderをプレイすることで、注意力・集中力が著しく改善された」と結論付け、統合失調症などの疾病で行われている投薬治療の代替として、副作用のないゲームの活用についても期待を寄せています。

もっとも、ロンドン大学のニリ・ラビー教授は「CANTABにおけるテストの内容は、Decoderアプリ内のプレイ内容にあまりにも似通っている」と述べており、Decoderをプレイしたグループは集中力・注意力を測定するテストに慣れていたことが好成績をもたらした可能性があるとして研究結果を疑問視する意見もあるようです。

・おまけ
サハキアン博士は、アルツハイマー病や統合失調症に関係する脳の領域の機能をゲームによって回復させる方法についても研究しています。

Brain Training - Barbara Sahakian - YouTube

メタ分析によると統合失調症患者に対する認知トレーニングと他の形態でのリハビリテーションの効果を比較した結果、認知トレーニングの有用性が確認できたとのこと。しかし、認知トレーニングは専門家による特別なサポートを受ける必要があるためコストがかかります。そこで、認知トレーニングに代わる有効な訓練として、サハキアン博士は「ゲーム」が有望だと考えているとのこと。1カ月に及ぶゲームを使った訓練によって、統合失調症患者がエピソード記憶を強化しただけでなく、日常生活の活動量も増えるなどの結果を得たそうです。

サハキアン博士は、ゲームによって認知機能を高める効果は病人だけでなく健常者にも役立てられると考えています。年をとるにつれて衰える認知機能ですが、ゲームトレーニングによって認知機能の低下ペースを緩やかにする方法についても研究を続ける予定だそうです。


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