ワクチン接種反対派が発表した「誤った論文」の問題点を科学者が指摘して非難する


ワクチンの接種は感染症を防ぐ有効な手段ですが、近年ではワクチンの接種が病気を引き起こすといった反ワクチン派の活動が活発化しており、2019年には世界保健機関(WHO)がワクチン忌避の流行を健康に対する主要かつ世界的な脅威と位置づけています。そんな反ワクチン派の人物が2018年、「子宮頸がんワクチンの接種が不妊を引き起こす」という論文を発表しましたが、科学者からは多くの問題点が指摘されています。

Bogus Paper Claims HPV Vaccine Causes Infertility, Scientists Shred It to Pieces
https://www.sciencealert.com/bogus-paper-claims-the-hpv-vaccine-causes-fertility-problems

子宮頸がんなどの発生に関係する特定のヒトパピローマウイルスの感染を予防するHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)は、子宮頸がんを予防するための有効な手段であり、アメリカ疾病予防管理センターも安全で効果的なワクチンだと認めています。長年にわたって科学者らによる副作用の調査も行われており、不妊などの悪影響は確認されていません。

ところが、反ワクチン派の中には「近年アメリカにおける出生率が低下しているのは、HPVワクチンのせいだ」と考える人が依然として少なくないとのこと。その1人が反ワクチン活動家であり、ニューヨーク市立大学バルーク校ジックリンビジネススクールで経済・金融の准教授を務めるGayle DeLong氏です。

「経済・金融の准教授」とある通り、Delong氏は医学の専門家ではありませんが、2011年に自閉症とワクチン接種の関連性を主張する論文を「Journal of Toxicology and Environmental Health Part A」にて発表。内容がこれまでに積み重ねられた研究結果と矛盾するものだったため、自閉症の専門家らから非難を浴びました。


Delong氏は2014年には、家族にがん発症者がほとんどおらず自分自身が健康的な生活を送っているにもかかわらず乳がんになったことについて、「2人の自閉症の子どもを育てたストレスによるものだ」と主張。これも、専門家から非難されました。

極めつけとして2018年にDelong氏が発表したのが「HPVワクチンが不妊を引き起こす」と主張する論文です。2011年の論文と同じく「Journal of Toxicology and Environmental Health Part A」に掲載されたこの論文でDelong氏は、2006年にアメリカでHPVワクチン接種が導入されたことが、2007年以降、25歳〜29歳のアメリカ人女性の出生率が低下している原因となっている可能性があると主張しています。


この研究に対しては、淀川キリスト教病院の柴田綾子氏や兵庫県立尼崎総合医療センターの片岡裕貴氏といった医学研究者から、さまざまな問題点が指摘されています。

柴田氏らは、HPVワクチンの接種が10代の青少年に推奨されている点を挙げ、もし本当にHPVワクチンが不妊を引き起こすとしても、その影響が出るには数年以上の期間がかかると指摘。そのため、DeLong氏が指摘する「2006年のHPVワクチン導入が2007年以降のアメリカにおける25歳〜29歳女性の出生率低下を引き起こしている」という主張は的外れだとのこと。また、既にHPVワクチンの接種が高い割合で行われているオーストラリアやヨーロッパ各国でも、目立った出生率の低下は見られていません。

これらの点から柴田氏らをはじめとする専門家は、アメリカの出生率低下の原因は、様々な避妊方法を利用しやすくなったことや、人生計画において子どもを持つ年齢を後ろにずらそうとする考えの高まりが原因である可能性があると主張しています。DeLong氏の研究では出生率の低下のみに焦点を当て、避妊率などの上昇については考慮されていなかったとのこと。


さらに、DeLong氏の研究ではアメリカで行われたNational Health and Nutrition Examination Survey(全国健康栄養調査)で収集された、800万人の女性データを分析しているかのように言及されていますが、実際にはサンプルサイズとしてわずか700人の女性を調査したに過ぎませんでした。しかも、HPVワクチンを接種していない人が全体のうちで400人を超え、サンプルグループの規模にも違いが見られたそうです。

DeLong氏はHPVワクチンを接種したグループ、接種していないグループにおいて妊娠した割合を調べましたが、HPVワクチンを接種したグループは大学の学位を持っている可能性が高く、これらの女性は子どもを産む年齢が遅くなる傾向にあります。研究は25歳〜29歳の女性に関してのみ行われたため、学位を持つ女性が最初の子どもを持つ平均年齢未満の時点で調査が行われたことになります。

なお、DeLong氏の論文を2度掲載した「Journal of Toxicology and Environmental Health」は査読付きの雑誌ですが、以前から反ワクチン派による真偽の疑わしい論文を掲載している「怪しげな雑誌」だとのことで、仮にDeLong氏が他の雑誌に論文を送っても、掲載される可能性は低いと考えられています。


Photo by whitesession


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