なぜ中国人留学生は香港デモを理解できず中国政府を支持するのか?


香港では2019年6月から中国政府に対する数万人規模のデモが続いています。インターネットが検閲されているため、デモ隊はAirDropやポケモンGOを利用してコミュニケーションを取っていることも報じられており、8月になってもデモが収まる気配はなし。一方で、アメリカやカナダでは、デモ支持者たちの活動が、中国政府を支持する中国人たちによって妨害される事態もみられます。人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の研究者であるYaqiu Wang氏は、なぜ海外在住の中国人たちが反デモの立場を取り中国政府を擁護するのか、自分自身の経験をふまえて語っています。

Op-Ed: Why so many Chinese students can't understand the Hong Kong protests - Los Angeles Times
https://www.latimes.com/opinion/story/2019-08-20/hong-kong-chinese-students-propaganda

アメリカやカナダ、イギリスなど、欧米の大学に通う中国人学生の中には、2019年6月から始まった香港デモについて中国政府を支持する立場を取る人が多くいます。このため、中国国外で起こったデモ支持の運動が、中国人の反デモ参加者によって妨害される事態も報じられています。

Wang氏は、このような親中国の立場を取る人々のことを「賛同はできないが理解はできる」と述べています。というのも、中国に生まれてアメリカに渡ったWang氏もまた、思想のギャップを経験した一人であるためです。

2009年に中国からアメリカに渡ったWang氏は、当時、ワシントンD.C.の中国大使館前でチベット亡命者たちが抗議行動を取っているのを目にし、理解ができなかったそうです。Wang氏の頭には「なぜチベットの人々は中国が建てた建物や高速の電車があるのに幸せではないのだ?どうして中国人と協力してビジネスを行わないのだ?」と疑問が浮かび、実際に親密になったチベットの友人に尋ねたこともあるとのこと。友人は、中国人の攻撃から逃れてインドにたどり着いた難民の両親を持つチベット人だったそうですが、Wang氏の質問を見下すことなく理解をもって答えてくれた、とWang氏は語っています。

しかし、Wang氏が感情レベルでチベット人たちのことを理解できるようになるには、数年を要しました。中国政府は「中国はチベット人の農奴を自由にし、彼らに繁栄と幸福を与えた」というプロパガンダを子どもたちに教え込んでおり、Wang氏は検閲のため反対意見に触れることができないまま育ちました。チベット人たちが言論や文化、アイデンティティーに対する抑圧への抗議行動として焼身自殺を行っているとは思いもしなかったとのこと。


中国国外で暮らす中国人学生は世界で150万人にのぼり、これらの学生は依然として検閲された情報を利用しています。しかし、中国政府の検閲の影響は、この問題以上に深いものだとWang氏は述べています。

情報がコントロールされた社会で育ったWang氏は、中国から離れて10年たっても、自分の知識が正しいのか間違っているのか疑問に思うことがあるそうです。中国の学校では「毛沢東が考える科学的システム」や「中国的特徴を持つ社会主義者のシステム」といった内容を学びますが、Wang氏はこれらの言葉の意味を深く考えず、テストに受かるために丸暗記しました。共産党の支配下において、「考えないこと」は自己保存の手段になります。中国では好奇心や、修正を経ていない情報を読むこと、内省的思考などは推奨されていません。

このため、中国人学生が国外に出て勉強すると、日常生活や授業クラス、インターネットなどで「あなたは政府に洗脳されている」という指摘にたびたび直面します。学生たちはこれらの指摘を攻撃的だと感じ、中国で学んだ「西欧には偏見があり、彼らは敵対的だ」という考えを再確認することになります。なかなか中国国外の教育システムに適応できない学生たちが多いのはこのためです。


また、中国では感情さえもコントロールされるとWang氏。中国では特定の出来事に対して「これは喜ぶことだ」「悲しむことだ」「怒るべきことだ」と教えられますが、その理由については言及されません。中国の最高指導者だった鄧小平が亡くなったとき、Wang氏の友人が弔いのために中央政府駐香港連絡弁公室に向かったそうですが、建物から出て泣きながら歩いているところを「あなたはなぜ泣いているのか?」と質問された時に答えに窮したといいます。「なぜ自分が泣いているのか自問したけれど、まったくわからなかった」とその友人は語ったそうです。

中国人学生たちにとって、育った文化と根本的に異なる考えに触れる経験は大きな課題です。しかし、大学関係者たちが親中国の立場を取る中国人学生たちに対し、敬意を持ち、偏見のない態度で関わりを持ち続けることは重要であるとWang氏は述べました。


Wang氏は、中国政府の人権侵害を知ることがヒューマン・ライツ・ウォッチの仕事につながった、と語っています。長い目で見れば、中国国外に住んでいる学生は、故郷に戻り、中国の新しい方向性を探ることができる可能性を秘めているといえるわけです。
Photo by PPPSDavid


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