ルンバのマップは売るの? 売らないの? iRobot社Vice Presidentに聞いてみた

Photo: ギズモード・ジャパン編集部


ルンバIoT化の真意を聞きました。

ルンバに久しぶりに新機種「ルンバ890」「ルンバ690」が登場しました。今回のアップデートによって、一部限定モデルを除きルンバは全機種がIoT対応します。2015年に発売されたフラッグシップモデル「ルンバ980」からエントリー機種におけるまで、スマホで繋がり、管理できるようになったのです。

おそらくIoTへの対応は、今後主流になっていくであろうスマートホーム構想を予見したものだと思われますが、同時にルンバが収集する家のマップデータのやり取りについて、不安視する声も聞こえてきます。果たしてiRobot社はマップデータを販売するのか。そしてデータをどのように使っていこうとしているのか。

iRobot社のテクノロジー部門Vice Presidentであるクリス・ジョーンズさんにお話をお聞きしました。


Photo: ギズモード・ジャパン編集部


──今回発表された新機種(ルンバ890、ルンバ690)はIoT対応で、米国ではスマートスピーカーにも繋がります。これらはスマートホームにおいてどんな活躍をしてくれるのでしょうか。

これまでに2年ほど、我々はiRobot製品のWi-Fi接続性を確立しようと取り組み、広い意味で「スマートホームのエコシステムとの統合」に着手しています。例えばAmazon AlexaやGoogle Homeなどとの連携もその一つです。こうした、スマートスピーカーとの連携が取れるようになると、やはりユーザーとしては「楽」ですよね。例えば音声を通じて、家の中のどこにいてもロボットと楽に交信ができる仕組みも作れます。

今現在、そうした統合された製品展開は米国ではすでに実現しています。今後はAmazon AlexaやGoogle Homeが海外展開をする中、我々が主流としている製品も一緒になってグローバルで統合を図っていければと願っています。


──Amazon Alexa、Google Home以外のスマートスピーカーとの連携は計画されているのでしょうか。

今後のiRobot社の戦略、将来的な方向性としてはどんなコネクテッドデバイスであってもスマートホームの可能性を追求できるのであれば、積極的に検討していきたいと考えています。もしApple(アップル)がスマートスピーカーを展開すれば、iRobot社としても手を組んで何かやっていきたいという関心が出てくると思います。

また、他のメーカーでスマートスピーカーを展開したり、家庭用のコネクテッドデバイスを世に出すような会社が将来的に色々出てくるのであれば、そういった所ともパートナーとして前向きに考えて行かねばならないと思っています。消費者に価値を提供できるか、ありとあらゆる可能性を追求していきたいです。

そしてiRobotとしては、今現在具現化されているような領域よりも、はるかに広域に渡ったスマートホームにおけるロボットのあり方と、広いビジョンを持っています。


未来のスマートホームではロボットはどんな役割を持つ?


──スマートホームにおけるロボットのあり方とは、いったいどんなものなのでしょうか?

ロボットは「動く」という特徴を使って、色々な環境を察知することができます。その概念はルンバにも実装されていて、ほぼ毎日家の中ありとあらゆるところを探検できます。

そうしたルンバのあり方は、据え置きスピーカーなどのように、家の特定の部分だけを監視する役割を持っているのとは性質が全然違います。ルンバは動き回ることで、家の中のさまざまな情報を集めることができます。そういった情報を取り込んで活用すれば、従来スマートホームとされていたコンセプトよりも、はるかに概念が広まり、ユーザーとしてはスマートホームをよりスマートにしていくことができるのではないかと考えています。


──動き回るというメリットがさらに活かせるということでしょうか。

その通りです。広いスマートホームのエコシステムの一環として、ロボットが可動式であるということ、その周りの環境を察知することができる感覚。これらがとても重要視されて行くのではないかと考えています。

現在ルンバは、家の中のレイアウトをマッピングする事ができます。つまり、家のレイアウトの青写真を作ることができるのです。その情報源を活用し、それを他のスマートデバイスと共有することにより、さらに家の中の環境や性質、あるいはレイアウトを深く理解することができます。


ルンバの作った部屋のマップはどう使われるのか?


Photo: ギズモード・ジャパン編集部


──ルンバ980は、当初は掃除のたびに新しいマップを作る方式だったと思います。今ではマップのデータを残すと言う方針へと変わったのは、スマートホーム構想における方針の転換があったのでしょうか。

確かに掃除をしている間、ルンバはマップ情報をルンバ本体に集積しますが、掃除が終わればそれまで本体に蓄積していたマップデータはリフレッシュされます。しかし今年初めから我々はClean Mapレポートという機能をモバイルアプリに追加しました。これにより、一旦ルンバが掃除をし終わるとマップデータはクラウドを経由してユーザーのモバイルデバイスのアプリに転送されるようになりました。ユーザーはその転送されたデータを見ることによって、掃除された場所を確認できるようになりました。

今後のステップとしては、クラウドに一旦送られた情報を活用し、その情報をパートナーと共有することによって、何かもっと構想を広げることができるのではないかというビジョンがあります。そちらはまだ実現されていませんが、今後の方針としてそういう風に考えているのです。

一つ特記しなければいけない点としては、マップ情報はユーザーの許可・承認が出されなければ決して共有されることはありません。


──将来的には水拭きロボット「ブラーバ」などもIoT化する可能性があるのでしょうか。

iRobot社は、お互い連携し合いながら複数のロボットがチームワークのように同期化していろいろと家の中で動いてくれるようなコンセプトを描いています。例えば床を水拭きする前に一旦は掃除機をかける。掃除機が終わったら水拭きが入るというような、そういった順番をデバイス間でわかるようにすることが我々の狙いであり、それがまさにスマートホームであると考えています。

なので、将来的には当社が提供する製品だけではなく、他社のデバイスとも接続性を確立して、連携しながら同時進行でチームワークを組み動作していけるようにしていきたいと考えています。


──今後ルンバが得たマップを使って、他のスマートホーム機器をサポートしていくような構想はあるのでしょうか

はい、その通りです。しかし、それはあくまでもユーザーの判断です。

ユーザーがマップ情報の共有を許可すれば、家の中にある他のスマートデバイスもルンバのマップ情報を活用し、ルンバがより賢くなるのと同時に、他のデバイスもよりスマートになっていくことを考えています。


──つまりiRobot社の製品間だけではなく、例えばAmazon AlexaやGoogle Homeデバイスなどにマップデータの共有や売却するプランがあるのでしょうか。

現在、共有、売却するような具体的なプラン、予定はありません。ただし将来、これらの情報がスマートホームやデバイスの機能を一層高め、ユーザーに更なる価値を提供できるのではないかとは考えています。


軍事用ロボットよりも家庭用ロボットだ!?


──iRobot社は軍事用のロボット開発の技術力をアピールしてきた中で、軍事部門が売却され、家庭用ロボットに注力した理由は何なのでしょう?

iRobot社はロボット技術の開発では27年間の経験を培っています。その間には、玩具や産業用ロボット、軍事用ロボット、そして家庭用のロボットなど、多岐に渡って我々のロボット技術を採用してきました。

しかし、我々は将来的に「家庭用ロボットが、世の中に広く影響をもたらす強いビジネスになるだろう」と結論づけたのです。そして、「我々の会社の全エネルギーを家庭用ロボットに投入しようではないか」と考えています。


──軍事ロボットよりも家庭用ロボットの方がビジネス的に強くなると。

軍事用のロボットというのは非常に我々の強みを発揮できた領域でありましたし、過去数年に渡って我々のビジネスの中核的な取り組みでした。それが世の中にどう影響したかは、これまでの経緯を振り返ってみると非常に誇らしく思っています。しかし、現在のiRobot社としては家庭用ロボットに非常に大きな期待感を持っております。

これからその事業基盤は非常に強固なものになっていき、持続的な成長をもたらすものであり、また継続的に新たな機会を創出してくれるようなビジネス領域ではないかと判断しているんです。であれば私たちの会社の力を100%注ぐべきだという考えに至ったのです。


iRobotが考える今後求められるスマートホームテクノロジーとは?


Photo: ギズモード・ジャパン編集部


──今後どのような機能やテクノロジーがスマートホームを作るにあたり必要になっていくと思いますか。

現在のラインナップでは、ルンバ900シリーズだけがカメラを持っています。

マッピング機能を持たせるためには、考えられる技術は多々ありますが、その中でもカメラは比較的難しい手法でした。にもかかわらず我々がカメラ搭載を決断したかというと、やはりカメラが捉えた視覚的な情報がとてもリッチな情報だからなのです。それは、我々がコアとしている技術に最も活躍してくれるような情報源であるとともに、コンピュータテクノロジーの中で最も有用であるという考えからカメラを搭載しました。

将来的にはロボット掃除機が家に置かれている色々な物を視覚的に認識することが、とても重要であると思ったからです。

たとえば家の中には、リビングルームにカウチソファ、 ダイニングルームにはダイニングテーブル、テレビや冷蔵庫など家電もたくさんあります。それら、どういうものが家にあるのかという情報をロボットが認識し、知性を持って理解することによって、よりスマートでより効果的に家の中の掃除ができるようになるのです。たとえば、ダイニングテーブルがどこにあるのかわかれば、

<きっと他の所よりも汚れているな、ここはより入念に掃除しなければいけないな>

とロボットが認識して、ロボットが自ら行動することができます。また、家具が認識できれば、Amazon Alexaからルンバに対して

「リビングルームの中にあるカウチソファの前が汚れているから、そこをより入念に掃除しなさいね」

というような指示を出して、ルンバも応じることができます。どういうものがあるのかを認識するのは、よりインテリジェントな動きをするためには必要なテクノロジーです。この貴重な情報源をルンバが察知して集積し、それを他のデバイスと共有する。それによって、他のデバイスもよりスマートに家の中で動きまわれるようになれば、それがまさにスマートホーム構想の発展につながるのではないかと思っています。

これは全て研究段階にありまして、家具の認識やマップデータの活用機能は、世に出ているものは現在ありません。しかし今はリサーチを重ねながら、「スマートホーム自体を充実したものにしていくためには他に何が求められているのか?」 を研究しています。


* * *


目指しているものは、「ロボットによる監視」ではなく「ロボットによる理解」。家の中を知ることにより、もっと僕たちはスマートな暮らしが実現できるのではないか? ルンバにはそういった思いが託されています。


関連記事: ルンバ、全機種IoT化へテレーレレー♪ スマホ操作可能な新モデル「ルンバ690」「ルンバ890」が登場


Photo: ギズモード・ジャパン編集部
Interview: 小暮ひさのり
(小暮ひさのり)

おすすめ情報

Gizmodo Japanの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

トレンドのニュースランキング

ランキングの続きを見る

トレンドの新着ニュース

新着ニュース一覧へ

人気記事ランキング

ランキングの続きを見る

東京の新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索