Photo: Getty Images|地球外生命体の探査に使われる、ウェストバージニア州グリーンバンクにある電波望遠鏡

アメリカ一“静かな”町で育ってみたら。

ウェストバージニア州グリーンバンクには世界最大の電波望遠鏡があり、フットボールフィールド以上の大きさを誇るパラボラアンテナは宇宙からのわずかな信号も拾うことができます。そしてこの小さな町は、1万3000平方マイル(約3万4000平方km)に及ぶ米国指定電波規制地域(NRQZ)の中心地で、携帯電話サービスはなくWi-Fiは禁止されています。さらに望遠鏡の10マイル(約16キロマイル)圏内に住む人たちはBluetooth端末、電子レンジ、コードレス電話機やワイヤレススピーカーの使用も制限されているとNew York Timesは報じています。

グリーンバンクのテクノロジーは90年代のよう

この規制は電波干渉から望遠鏡を守るため1958年から施行されていて、バージニア州とウェストバージニア州の複数の郡や都市にまたがっています。

そしてNRQZの中心にあるのがグリーンバンクです。同町の住民143人は技術的にインターネットを使えますが、今の水準から見ると、日常に現代のテクノロジーがないのは90年代に生きているようなもの。使うのは固定電話で、メールはなく、誰がパソコンを使うかで揉めることもあります。全米では田舎に住んでいて高速インターネットにアクセスできない人が1500万人近くいますが、グリーンバンクの規制は政府指令によるものです。

メールに即レスしなかったからイラつかれた

私自身、スマートフォンや高速インターネットがない環境で育ったことを覚えています。ですが、郊外に住んでいるということは、必然的にSNSや掲示板、メッセやメールなどにハマるということ。たった15年ほど前だったとしても、まるで全くの別世界で育ったかのようでした。

NRQZ住民のMarilyn CreagerさんとCharity Warderさんにとって、21世紀を現在のテクノロジーがない中で成長するということは、現代文化の極めて重要な部分から完全に取り除かれることを意味します。Creagerさんは大学入学時に、メールのやり取りを友人らと同じようにはしていなかったため、即レスしなかったことにイラつかれていたと語っていました。

Creagerさんいわく「私は急にスマホによって仮想世界に束縛され、私はそれを楽しめませんでした」とのこと。

Warderさんはこの秋、大学に入るため町を去ります。Creagerさんのように、みんなが常にネットをしている速いペースのデジタルな世界に順応しようともがく己の姿が思い浮かびます。目の届くところにスマホのない、家族と居間でおしゃべりをしながら過ごすリラックスした夜とはえらい違いです。彼女の母親は「子供たちは話さないから、コミュニケーションは死にゆく芸術よ」と語っています。

インターネットや携帯電話がないデメリット

その意見には議論の余地がありますが、New York Timesに書かれているように確実なインターネットと携帯サービスがないことにはデメリットもあります。道路で立ち往生してしまった場合、助けを呼ぶのは難しくなりますし、インターネット経由で提出する宿題や大学の願書は運に左右されてしまいます。インターネット環境が乏しいと学生の学問的な成功に悪影響を与えうると示した最近の研究もあります。

T-Mobileといった携帯電話会社が地方での5G家庭用回線の試験的なプログラムを展開しても、62年前に作られた無線テクノロジー禁止令のせいで、NRQZに住む大勢はその恩恵を受けられません。

地球外生命体の痕跡を探すためのプロジェクトを進行中

グリーンバンク天文台は2016年10月からは独立機関が運営しており、年間1000万ドルの運用費は民間の資金源に頼っています。現在、同天文台はBreakthrough Listenプロジェクトで、地球外生命体の痕跡のために宇宙をスキャンするという重要な役割を担っています。科学者らが地球外生命体の探査に挑戦するためだけにテクノロジーが没収されるのは不公平のように思えますが、CreagerさんとWarderさんは現代テクノロジーのない環境で育ったことを好み、そちらのほうがよいと思っているそうですよ。

Source: New York Times, Green Bank Observatory, Michigan State University, Breakthrough Initiatives