安倍晋三首相が、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため3月2日から春休みの終わる4月初旬まで学校を閉鎖するよう要請してから遅れること2週間。サンフランシスコ・シリコンバレーの多くの学校でも3月16日の月曜日から学校閉鎖になりました。 

「感染拡大を防ぐために3月の最初の1、2週間が極めて重要な時期、なので学校閉鎖を要望します」という記者会見を首相官邸のInstagramで見たときは、思い切った措置と驚きましたし、日本にいる子育て中共働きファミリーの友人たちの顔が浮かびました。が、いよいよこちらも対岸の火事ではなくなったのです。

私の子供が通学する公立の小学校では、学校閉鎖が始まった初日の月曜日と次の日の火曜日を準備期間に費やし、水曜日からグーグル社が無料提供しているソフト「グーグルクラスルーム」を利用したオンラインラーニングが直ちに始まりました。

まず朝の9時までに出欠記入用のシートに書き込みこみます。出席は PresentのP、 病欠はSickのS、という具合です。そして、クラスルームにログインすると、その日やる課題が表示されます。

子どもたちが書き込む出欠表

クラスルームにログインすると表示される課題の一覧

5年生に在籍している私の子供のクラスでは、朝の10:30AMから12:00PMまでビデオ通話やチャットなどができるグーグル社のアプリ「ハングアウト」を利用して、先生とクラスの全員がビデオで一堂に会します。この時間に近況を確認し、毎日授業のある算数を始め、その日の課題をチェック。新しく習うポイントについて先生が説明します。課題をやるにあたりわからなかったことや、アプリの使い方の不明点なども話し合います。

この日は分数x 整数、分数÷整数を先生が紙に書いて、カメラに見せて説明します。

ビデオで集合する前も後も、パソコンの画面上には、ひっきりなしにチャットが飛び交っています。先生に質問するほか、「どこのどれやるのー?」などの疑問点が投げかけられると、クラスメートの1人が回答してくれて解決ということも。先生も何かあれば即座にチャットで返信します。チャットのボリューム、スピードと参加率の高さ。みんなでつながっている感は、大人で言えば職場のSlackチャネルとほぼ同じ感じです。

算数の本日の課題 (Unit 8のLesson 3)を提出しました。赤字部分は先生から添削されて戻ってきた部分です。先生から個人宛のプライベートチャットで間違えたところが補足されることもあります。

一方、先生の方もエンジニアというわけではないので、この突然始まったオンライン授業に戸惑うことも多いようです。操作方法がわからなかったり、アプリがうまく使えなかったりすると、先生は逆に子どもたちに質問しています。「一回アンインストールして、再起動して、もう一度インストールして、そして、パスワードを変えたらできたよ」と10歳の男の子が先生の質問にベラベラと回答しているのをみて、さすがデジタルネイティブは違う!と感心しました。先生の方も「You are my IT guru! (あなたはわたしのITの先生!)」と返していました。

社会は1755年のフレンチ・インディアン戦争について学習しています。グループワークで、3人で一つの作文の完成に取り組んでいます。ひっきりなしにFaceTimeなどのビデオ電話を利用してディスカッション(というかゴシップも含めたおしゃべり?)をして作業を進めていきます。宿題をやっているとは言え、実際に会えなくてもビデオで顔をみて話すことで孤独感が紛れることもあるでしょう。

子どもたちの「デジタルネイティブ」ぶりに驚いたことがもう一つ。私は職場で、年齢が上の人たちと大勢でビデオ会議をすることが多いのですが、「しゃべらないときは、ミュートにしてください!」とお願いすることがよくあります。でないと、タイプしている音や背景の音を拾ってノイズが入り、聞き取りづらくなるからです。

では、子どもたちはどうかというと、自分が話すとき以外はミュートにする、ということが誰から言われることなく自然にできていたのです。オンラインラーニングが始まった最初の週から、まるで以前からずっとしていたかのようなスムースな移行でした。

娘は自宅の中でラップトップを持ち歩き、自分の部屋や階段(なぜかお気に入り)など、その日の気分によっていろんな場所でオンラインクラスを受けています。今日はキッチンからクラスに入りました=グリーンバーグ美穂撮影

一堂が会し、ビデオでもクラスメートの顔を見るというのは、授業の遅れをなくすということよりも、子供達の精神安定上ずっと大事な気がしています。というのも、サンフランシスコはカリフォルニアの中でも、また他の州よりもいち早く Shelter in Place と呼ばれる「外出禁止令」が要請され、スーパーマーケットや病院など生活に不可欠な場所以外、職場に行くこともレストランで外食することもできなくなりました。スーパーマーケットでも感染リスクを避けるため、レジで並ぶときも180cm程度あけて並ぶ「Social Distance」を守らなければならない状況です。

大人も精神的に振り回されていますが、子供にもその影響は及んでいます。外には少し連れ出してスケードボードで遊んだり軽い運動を数時間させたりしますが、他の友達と遊ぶことは御法度、家族以外でアクセスできる人数は非常に限定的です。そんな中、ライブで友達や先生の顔を見て話せるというのは精神的な支えになっている気がします。現在、パソコンやスマホを見ている時間が異様に長くなっていますが、もうそういったことは気にしていられません。

そして1日の終わりには保護者がちゃんとやったかどうか確認するチェックボックスにイニシャルをサインし、それをカメラで撮影するかスキャナーで読み込んで自分のページにアップロードし、先生に提出します。音楽の授業の課題もあって、「Erie CanalをYouTube を見ながら3回歌う」となっていました。娘はやったことにしているので、「歌ってないよね」と聞くと、「もう、いいからサインしてよ」。プチ反抗期です。

プライベートメッセージで先生に個人的な相談や今の気持ちなどちょっと言いたいことを共有します。送ると先生から返事がきます。私の子供は「学年度末まで学校がなくなってしまうのではないか。もしそうなったら家に閉じ込められた状態で家族とだけでやっていけるのかなあ。学校は楽しい」と、彼女の気持ちを綴っていました。

ところで、PCやMacを買い与える余裕がない家庭はどうするかというと、学校が貸し出しをしています。準備期間の月曜日と火曜日の二日間でさささっと手配されました。また、なぜこんなに短期間でオンラインラーニングが可能だったかと言うと、ある程度インフラができていたからだと思います。子どもたちは入学時に学校のアドレスをもらいますが、それはGmailにひもづけられているので、グーグルのサービスがすぐに使えます。低学年のうちからコンピュータの授業が導入され、作文などを提出する際には「グーグルドキュメント」を利用して提出していたこともありました。

低学年の子どもにとっては、完全にオンラインで課題を提出するのは難易度が高いので、学校が保護者あてのメールで、家庭でやる課題の内容について連絡するというやり方をする場合が多いようですが、先生と子どもが1対1で10分間近況を共有するビデオ面談がスケジュールされ、先生が子どもの様子を見るようになっています。

運河のシステムや経済効果の勉強で、実際に厚紙を使って運河を作っている娘。作った運河は、ビデオを通じてクラスメートと見せ合っていました。

オンラインラーニングは春休みが始まる4月3日(金曜日)まで実施、その後1週間の春休みを挟んで学校が再開、というのが当初のシナリオでしたが、アメリカでは感染が急速に拡大し、カリフォルニア州知事は、「6月の学年末まで学校閉鎖が続くかもしれない」と発表しました。アメリカの夏休みは超長いです。それが現実になってしまうと今から半年間、9月まで学校がないという可能性がでてきました。

実は、サンフランシスコ・シリコンバレーでは子供が学校閉鎖になる2、3週間前から自宅勤務に切り変わる企業が増えました。日本と逆で、子供は継続して学校に行っているにもかかわらず、大人の方がリモートで自宅から働く状態がしばらく続き、私の職場があるファイナンシャル・ディストリクトからはヒトが日を追うごとに少なくなっていきました。夕方6時のラッシュアワーの電車に乗っても、車両で私一人とか。各企業にしても行政にしても連日新しい予防措置を取り、めまぐるしい変化が続きました。何かの発表ごとにショッピングパニックが加速し、棚から商品が消えていったのは、日本や他の国と同様です。

外出禁止令が要請されて1週間が経とうとしています。巨大な不安の中で、学校の先生たちができるかぎり日常と変わらないように授業を続けていてくれていることには本当に感謝しています。