3頭のトラとプールでポーズをとるのは、米サウスカロライナ州にあるサファリパークのオーナーと従業員だ。「ロードサイド・ズー(道端の動物園)」と呼ばれるこうした商業施設や個人宅で飼育されるトラは、全米で5000頭から1万頭にのぼるとの推定もあり、虐待の横行も指摘されている。米国の写真家、スティーブ・ウィンター(64)は、米国のトラの実態を2年間取材し、一連の写真におさめた。

そもそもトラは、野生の生息数が約3900頭にとどまる絶滅危惧種だ。生息地ではない米国でここまで飼育数が増えた背景には、娯楽としての需要と、それを満たすための過度な繁殖がある。

商業施設では、幼いトラと触れ合い、一緒に写真を撮る有料のイベントが人気を集める。しかし、客の相手ができるのは体が小さい生後3〜4カ月までだ。子どもが次々に供給される一方で、成長したトラはもてあまされる。

栄養不足や飼育放棄、近親交配などの結果、健康に深刻な問題を抱えていることも少なくないという。トラの保護をうたう施設もあるが、ウィンターは「トラと写真を撮ることの本当のコストを考えないといけない」と否定的だ。

規制の不備もある。トラなど大型ネコ科動物の所有を規制する包括的な連邦法はない。州の対応もまちまちで、全米50州のうち4州では規制する法律がないという。ただ、ペットとして所有することなどを禁止する法案が連邦議会に提出され、改善に向けた動きも出始めた。

ウィンターは大型ネコ科動物の撮影を専門にしてきた。「生態系を健全に保つために捕食者としての大型ネコ科動物の存在は重要だ」と保護の意義を強調している。

■野生のトラはいま

20世紀初めには10万頭いたと考えられる野生のトラ。森林伐採に伴う生息地の減少や、漢方薬の原料になる骨などをねらった密猟、違法取引に加え、気候変動もその生息を脅かしている。世界自然保護基金(WWF)の研究では、インドとバングラデシュにまたがるマングローブ林にあるベンガルトラの一大生息地は、気候変動による海面上昇のため2070年までにほぼすべてが姿を消す可能性があるという。

トラを飼育する「農場」も問題だ。WWFによると、東アジアや東南アジアで推定7000〜8000頭を飼育。トラの骨や毛皮などの需要がなくならない原因になり、違法取引の隠れみのにもなるという。(太田航)