“史上最高額の男”ネイマールがパリ・サンジェルマンを頂点へ…フランスで栄華を築けるか

“史上最高額の男”ネイマールがパリ・サンジェルマンを頂点へ…フランスで栄華を築けるか

パリ・サンジェルマン(PSG)は、大げさではなく今世紀最大の契約を完了させた。2億2200万ユーロ(約290億円)という金額は、ポール・ポグバがこれまで持っていた世界最高額、1億500万ユーロ(約137億円)の2倍を超える額であり、比類なき額である。

ネイマールのパルク・デ・プランス入りは、昨シーズンのリーグ・アン準優勝チームの並々ならぬ決意を、この上なく明確に示すものである。つまりPSGは、チャンピオンズリーグ制覇を成し遂げてきたメガクラブに肩を並べるべく、ついに本気を出したのだ。

ビッグイヤー獲得は、PSGのオーナーであるカタール・スポーツ・インベストメンツ(QSI)の悲願でもある。QSI がクラブを買収した2011年以降、PSGはチャンピオンズリーグの準々決勝より上に進出できないできた。昨シーズンは、バルサをファーストレグで4−0と蹴散らしておきながら、歴史に残る大逆転負けを喫し、不名誉にもベスト8に勝ち残ることはできなかった。あまりにショッキングな敗退だっただけに、PSGには勝利への意欲が欠けているのではないかという批判を集め、中心選手であるマルコ・ヴェッラッティの移籍話が加速する事態となった。

ネイマールとの契約は、PSGがその断固とした野望を華々しく示したことを意味する。ただチームを改良するだけでなく、「PSGは本気だ」というメッセージが世界中に発信されたのだ。

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■ネイマールがPSGへ加入する意味

2015 年のバロンドールでは第3位に輝き、その後、2016年には第5位となった25歳のブラジル代表ネイマール。個人賞では、2008年からバロンドールを独占している32歳のクリスティアーノ・ロナウドと30歳のリオネル・メッシの後塵を拝しているものの、彼らにはできない、今後の長きにわたる活躍を保証することができる。

PSGは、ネイマールが個人の力で組織的な守備陣を粉砕する姿を、まさに目の当たりにしてきた。3月、チャンピオンズリーグでPSGが華々しく打ちのめされた時、バルサの驚嘆すべき6−1の勝利を主導したのはネイマールであり、試合終了を知らせるホイッスルを鳴らされる直前、セルジ・ロベルトがバルサに勝利をもたらす前に2得点を挙げたのが、ネイマールであった。

バルセロナいやネイマールの前にチャンピオンズリーグの舞台から退場させられたPSGは、次のチャンピオンズリーグの戦いまでに、クラックを自身のチームの一員とすることができたのである。議論の余地はない。この移籍はPSGの歴史のみならず、サッカー界全体の歴史において、まさに決定的な瞬間である。

HD Neymar Barcelona Real Madrid ICC

ネイマールが鳴り物入りでカンプ・ノウに登場したとき、当初、ヨーロッパには懐疑的な見方が流布していたが、ネイマールが地球上最もエキサイティングな選手のひとりであるという評判を構築するまでそれほど時間はかからなかった。PSGはすでに、ヨーロッパで最も優れた中盤を誇っているが、彼が加入すれば、それにふさわしい最前線を手に入れることになる。

2012年、ACミランからズラタン・イブラヒモビッチを釣りあげたPSGにとっても、ネイマールの加入は、まったく次元の違う話である。あの当時、スウェーデン代表のイブラヒモビッチは31歳になろうとしており、サッカー人生の黄昏に向かっていた。残されたサッカー人生でイブラヒモビッチが数多くの輝かしい瞬間を生みだすことができるかどうか、予言できる者は誰もいなかった。

イブラは幾度とない成功を手にしてきたサッカー選手だったが、PSGに来た時にはチャンピオンズリーグではまったく活躍できないという、哀れなジンクスを持っていた。それに引き換え、ネイマールはすでに、各国のクラブが競う欧州最高峰の大会を制したことを意味するビッグイヤーを、自身のキャビネットに飾っている。

信じがたいほど高額の移籍金が、リーグ・アンの新たなスーパースターとなったネイマールにとって、大きなプレッシャーとなるのではないかと案ずる人たちもいるだろう。だが、そんなことは若くして母国を離れたネイマールにとって、母国で表舞台に出る道を切り開いて以来日常茶飯事だ。

とりわけ、2014年のワールドカップでは、開催国のどの都市を訪れても、ネイマールの顔を見ないところはなかった。サッカー狂の国の、おそらくはすべての国民が、ネイマールが母国に栄光をもたらすという希望を抱いていた。だが、準決勝でブラジルがドイツに1−7で大敗した時、ネイマールはグループリーグでストレッチャーに乗って退場する原因となった、折れた背骨を養生していた。

大舞台でも軽やかにゴールを決めることのできる決定力のある選手は、かねてよりPSGに欠けていたピースである。イブラヒモビッチはヨーロッパの大きな大会で結果が出せず、エディンソン・カバーニにはどこか信頼に足らないところがあり、チアゴ・シウバは、敵チームから恐れられるような存在ではなくなってしまっている。

右サイドバックのトーマス・ムニエが『Goal』に語ったことによると、クラブにはかねてより勝者のメンタリティーが欠けているという。

「今のPSGには、自分たちが強いと思うような文化がない。今まで成長してきたように成長し続ければ、選手はバルセロナに行きたいなんて思わなくなり、代わりにPSGにいたいと思うようになるだろう」

確かに、ネイマールが加入したことで、ワールドクラスのスターたちは、パルク・デ・プランスへ引きつけられることだろう。

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■フランスでの注目度は?

一方、ネイマールのようにメディアに取りあげられる選手がいるということになれば、PSGは世界規模で展開されるもう一つの銀河に飛びこむことになるだろう。ネイマールはビジネスの面から見てもスターなのだ。

この移籍は、フランス全土で歓迎されているわけではない。オリンピック・リヨンのジャン・ミシェル・オラス会長は、移籍市場で抜け目ない動きをすると評判だが、ネイマールのPSGへの加入はリヨンにとって災難だと『ジャーナル・ドゥ・ディマンシュ』紙で語る。

「ネイマールのような偉大な選手が来ることに私が反対しているとは、言われたくない。彼はリーグ・アンの視野を大きく広げてくれるだろう。TV放映権の値段も跳ねあがる。だが、そんな風に注目度が上がったからといって、チャンピオンズリーグに出られないせいで減った収入が埋め合わされるものではない」

さらに、リーグ・アンの3番手以降が大きな損失を被る可能性についても言及した。

「PSGが不相応な財務利益のおかげで資格を得て、ASモナコが2番目に資格を得るとしたら、他のクラブは、多額の収入を発生させるシステムから疎外されてしまう。それでは、最もよく働いている者が損をする」

そうは言っても、世間の反応はおおむね温かいものだ。

「我々もネイマールが欲しかった。だが、残念ながら、PSGに負けた」と、トゥールーズのパスカル・デュプラッツ監督は冗談を飛ばす。

「サッカー通の間では、リーグ・アンは、弱小で感動に乏しいリーグだと言われている。それほど面白みのないと揶揄されるリーグにネイマールのような選手が入ったというのは、悪くないことだ」

ディジョンFCOのゴールキーパー、バティスト・レネは、スーパースターと対戦することを楽しみにしている選手のひとりだ。

「僕はゴールキーパーだから、ネイマールが来れば、ありとあらゆる困難が僕に降りかかってくる危険を感じてはいる。でも、リーグ・アンにとっては、素晴らしいニュースだ」

Neymar Barcelona 2017

■背負う大きな期待

何はともあれ、PSGは、自分たち自身の世話に精を出すことだ。PSGは、ネイマールと契約したことで、こうした大騒ぎや、経済上のフェアプレーに関する議論の渦中に飛びこんだわけだが、とはいえ、ヨーロッパ列強の中に自分たちを引き上げるのにふさわしい、この上なく理想的な選手を手中に収めることができたのも事実だ。

PSGは、ピッチの外での仕事をやり遂げた。今度は、これから9カ月が過ぎた先に、ピッチの上で野望をなし遂げたところを見せなければならない。それはまさにネイマールの足元にかかっている。少なくとも言えることは、彼がバルセロナでのパフォーマンスをフランスでも続けることができれば、パリの人々は皆が笑顔になるということだ。

文=ロビン・ベアナー/Robin Bairner

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