川島永嗣の存在価値は?メスでの新たな1年で期待されること【海外日本人展望】

川島永嗣の存在価値は?メスでの新たな1年で期待されること【海外日本人展望】

チーム内序列:レギュラー候補

ノルマ:昨季同様真摯な姿勢で日々取り組むこと

目標:リーグアンで先発GKとして出場を重ねる

文=小川由紀子(フランス在住ライター)

■想像以上の影響力を与えた昨シーズン

川島永嗣の2016-17シーズンは決して順風満帆だったわけではない。メスに加わったとき、先発の座は保証されていなかったし、ベンチ入りすら限られるような状況だった。

しかし、川島はフィリップ・ヒンシュベルガー監督以下、スタッフの想像をはるかに越えた真摯な取り組みで徐々に信頼を勝ち取っていった。コーチ陣の「エイジを実戦でプレーさせたい」という思いは日に日に強くなり、21歳の若き正守護神トマ・ディディヨンが残留争いのプレッシャーを受けてパフォーマンスを落としたことも相まって、先発GKの重責が託されることになった。

そして残留がかかった大一番、川島はアウェーで行われたリール戦でクリーンシートを達成するなど、期待に応えて正念場を乗り切って見せた。

そういった表に見える部分以外でも、川島がいかにチームに好影響を与えていたかは、ヒンシュベルガー監督やGKコーチ、チームメイト、地元の報道陣たちの発言や態度からひしひしと伝わってきた。シーズン終盤、コーチ陣は川島が翌シーズンもメスに残ることを切望していた。そして川島自身も、フランスリーグ挑戦初年度で得た充実感を受け、2季目に挑むことを決めたのだった。

■正守護神争いの現状は……

6月24日に始動したメスは、さっそくフランス北西部のブルターニュ地方で合宿を行った。ここまでフレンドリーマッチを6試合こなし、満を持して開幕戦に臨んでいく。

調整試合では川島とディディヨンが交互にゴールを守った。

日本代表に参加した影響で遅れて合流した川島は、7月14日の3試合目、オセール戦が初戦となった。先発フル出場したものの、リーグ2のクラブ相手に1-4と大敗を喫する結果となった。続くエウペン戦は、ベルギー合宿の最中に現地で行われたもの。この試合はディディヨンがゴールを守ってメスが2-0で勝利。スタンダール・リエージュ戦は、古巣を相手に川島がゴールマウスに入り、1-1の同点となった。そして最後のクリスタルパレス戦はディディヨンが先発し、こちらも1-1で試合を終えている。

実際のところ、コーチ陣にとってもディディヨンと川島は、それぞれ利点のあるほぼイーブンな関係であるように思える。

サポーターにとってもそれは同じなようで、「クリスタルパレス戦は誰が先発するか?」というフォーラムを覗くと、フィールドプレーヤーに関してはみな迷いなく1名ずつ選んでいるのに対し、ゴールキーパーのポストだけ「Kawashima/Didillon」と書いているケースが多かった。中には「Kawadillon」という合体版を編み出した者もいた。

GKに表向きの序列があるのが常なら、クラブとしては実力に加えて生え抜きの新鋭であるトマ・ディディヨンを第1GKとするのではないかと推測する。手塩にかけて育てた彼をビッグクラブに羽ばたかせたいからだ。もちろん、そこには金銭的な事情も絡んでいる。

しかしこの2人に関しては、実際のところ明確な序列がない。ある一定の優先順位は設けても、コンディションや状況に応じて、コーチ陣は2人を使い分けるのではないだろうか。

なお、この夏離脱した昨季の控えGKダビ・オーベルハウザーの後任には、松井大輔の古巣ル・マン出身のクェンタン・ボーナルドーが加わった。2年間ベルギーの2部リーグで実戦経験を積んだ23歳で、彼もカップ戦を中心にゴールを守ることになるだろう。

■揺るがない川島の存在価値

34歳になった川島だが、フィジカル的にも精神的にも、年齢からくる衰えなど少しも感じさせない。逆に体のキレは増しているようにさえ見える。GKは経験の豊富さがとりわけ大事な要素となるだけに、今の川島は円熟期にあるといえる。

ハングリーさは持ち続けつつ、チーム全体のレベルアップや後輩たちにとって見本という意味でも影響を及ぼせる存在だ。実際、ディディヨンへの影響は絶大だった。一昨シーズン、第1GKとしてゴールを守り、昨季も先発で開幕を迎えた彼にはどこか「自分のポジションは確約されている」という思いがあった。

しかし、川島の存在が彼を変えた。安穏とはしていられないことを悟り、より真剣に成長へ向けて取り組むようになった。経験豊富なGKを獲得したクラブの狙いが見事に当たったわけだ。

メスは川島を、かけがえのない存在と考えている。ディディヨンにしても「ポジションを奪われた」という思いより、先輩を慕う気持ちが表れているように感じられる。ひとえに、川島の人徳と言ったところだろう。

プロスポーツは結果がすべて。1試合の出来が将来を変えることもある。

だからこそ、川島は日々、目の前のことを懸命にこなしていく。その行いが、自分を行くべき場所へ導いてくれると知っているからだ。

シーズン序盤からレギュラーとしてプレーできるかどうかはまだ分からない。しかし、彼は焦ることなく、自分がやるべきことに黙々と取り組むはずだ。正GKであっても、仮に違ったとしても、川島のフランスにおける挑戦に、無駄なことなど何もないのだから。

文=小川由紀子(フランス在住ライター)

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