グーグル流ビジネス・崇高な理念に隠れた欺瞞(下)

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パブリックを食い物にしている

  グーグルが小ずるいのは、「全世界の情報を一つにまとめる」といったきわめて合理的、崇高な「理念」を掲げながら、その理念に隠れてビジネスをつねに優先していることだ。

  グーグルが運営するブログサービス「blogger.com」は、英語圏では最大級のブログサイトだが、そのユーザーには違法コンテンツを扱うものが少なくない。巨大ファイルホスティングサイトにアップロードされた音楽や動画のコンテンツのURLをbloggerのブログに貼り付け、広告収入を得る。 こうしたブロガーは「blogger」のなかに大量に存在し、英語圏で問題視されているが、グーグルはほとんど放置のままだ。

  違法行為を認知しても、なぜやめないのか。答えるまでもない愚問だが、儲かるからだ。

  個人的な情報であれ何であれ、情報が多いほうがそれにアクセスする広告出稿枠を増やせる。なにも無数のユーザーのためを思って慈善事業をしているわけではないのだ。一方、儲からないサービスは平気で撤退している。その一つが日本における「OKWave」のようなQ&Aサービスのグーグルアンサーだ。も しグーグルが掲げる崇高な「理念」が本心であれば、仮にサービスの人気が二番手、三番手となろうとも続けるはずだろう。だが、事業に人が集まらなければ撤退する。
  
  こうした背景を踏まえてグーグルの事業を考えると、その本質がわかる。要は、グーグルがしている事業とは、個人情報を(別の誰かが利用できる)公のものに移し替えてもらい、それを糧にするという構造だ。崇高な理念という煙幕がかかっているとわかりにくいが、煙を飛ばしてみると普通の企業と何ら変わりない。

  おそらく、2ちゃんねるユーザーはネットを深く利用している(と思われる)からこそ、そうした同社の欺瞞を敏感に感じ取り、不快感を表明しているのだ。

  ただし、グーグルに関わる人々は自分が不用意にパブリックにさらされるのは嫌らしい。

  2005年、米ニュースサイトCNETの記者がグーグルのCEOエリック・シュミットの個人情報をグーグルを使って30分間で調べ、純資産、政治献金、趣味などを掲載し、「こうしたサービスは不快だ」と記した。特別な調査取材でも何でもなく、誰でもできたことだ。にもかかわらず、この記事にシュミットCEOは激高し、CNETの取材には一年間応じないとした(実際には2カ月でこっそり手打ちをした)。

  シュミットCEOの自宅をグーグルで検索してみる。4エーカーの土地に4つのベッドルーム、4つのバスルームをもつ大邸宅という情報を見つけることができる。では、その邸宅をグーグルマップの衛星画像で詳細に見たいと思っても、それは不可能だ。画像は広域の地図ではぼんやりと映っており(ヤフーやマイクロソフトが提供している地図と比べると修正が加えられているように見える)、ある一定の距離以降は画像が削除されているのだ。

  他人の情報は事業にし、お金にする。だが自分がそうされるのは嫌。ずいぶん都合のよい話だが、それが同社の本質だ。実際、グーグルに個人情報を集中させない傾向は、『ザ・サーチ』の著者ジョン・バッテルなどグーグルに詳しい人ほど増えている。
  ユーザーが違法行為をした場合にはユーザーに責任を押し付けるが、同社が収集した個人情報はユーザーの意思を超えそうなところまで同社が最大限に活用する。規約には概略、そう記されている。
  
  こうした欺瞞に気付いているのは、いまのところ――どちらかといえば若い人が多そうだが―― 一部のようだが、自分たちの個人情報の総体=パブリックを食い物にしているという認識は、遅ればせながら次第に普通の人にも広がりつつある。

  グーグルはこれまでのところ、それほど重大な失策を起こしていないことは確かだ。だが、仮に巨大な情報漏洩が起きたり、ほかにもっとよいサービスを提 供する企業が現れれば、ユーザーは簡単に乗り換えていく可能性がある。ウェブサービスではβ版という一時的なリリースが一般的だが、じつはウェブではユー ザー自体がβ的な存在なのだ。そんなネットの流動性の怖さは、グーグル自身が十分知悉しているはずだ。
  グーグルがけっして崇高な理念を下ろすことはないのは、そういう理由もあるからかもしれない。

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対論は野口悠紀雄氏(早稲田大学教授)の「飛躍的に高まる仕事力」です。
 

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