働くって何ですか、「みんなの就職活動日記」を立ち上げた、伊藤将雄さんに聞いてみた

働くって何だろう。こんな自問をここ数カ月間、何度も繰り返してきた。大学4年で目下「シューカツ」中の私。今更ながら、社会に出て何をやりたいのかが定まってなかったことに気づき、愕然とする。もちろん同じような学生が回りにもいるけど、逆にありきたりな感じに自己嫌悪し、不安が募る。「変わらなきゃいけない。迷える私たちに導きの言葉を!」。ワラをもつかむ思いで、就職活動コミュニティーサイト「みんなの就職活動日記」を学生時代に立ち上げ、その後も転職や起業を経てIT業界で活躍する伊藤将雄さん(35)を訪ねた。(新田麻里奈・武蔵野大学)

■インタビュー、いきなり終了?
「就職活動でもビジネスでも、うまくいっちゃってる人って、実はなぜうまくいっているかわかってない場合が多いんですよ。すんなりうまくいってるというか。だからアドバイスを聞いても参考にならなかったりしますね」。さらりと言う伊藤さんを前に、こけそうになった。


さらに、「年上だからといって過去の体験談を信じない方がいいと思いますね。正直、昔の就職活動の苦労なんて忘れてるし」。もくろみはいきなり「不発」に終わった…

■就活生の9割が利用する「みん就」
就職活動中の大学生の90%以上が利用し、約50万人が登録するというウェブの口コミサイト「みんなの就職活動日記」。

企業の採用試験や内定状況などの情報を掲示板に書き込むことができ、学生だけでなく、自社がどう評価されているのかを知ろうとする企業の採用担当者らもチェックしている人気サイトは13年前、伊藤さんが早稲田大学4年のときに立ち上げた。

当時はまだ就職氷河期。伊藤さん自身は日経BP社から内定をもらっていたが、「学生同士が悩みを話せる場があったらいいなと思ったんです。すでに掲示板サイトはあって、これが使えるんじゃないかって思いました」と開設の理由を明かす。

インターネットの可能性をいち早く見いだしていた伊藤さんだが、このころは「あくまで情報を伝えるためのツール」だと考えていた。だが間もなく、こうした価値観を壊し、人生を変える出来事が訪れる。

■沖縄でネットの可能性に衝撃を受ける
入社3年目の99年。同僚たちと行った沖縄旅行でたまたまある小さな居酒屋を訪れたときのことだ。「うちの泡盛、インターネットでも売ってるんです」。店主の話に耳を疑った。見た事も聞いた事もない店から商品を買うなんて危険だと思っていたし、それが世間の常識だとも思っていたからだ。

「ネットは情報を伝えるためだけのものではなくて、商売にもなるのかと驚きました。しかも、それが東京だったら、東京でやるんだなっていう感じだったと思うんだけど、沖縄にまで行っているってことが凄い自分の中では衝撃的だった」

当時は、ネット環境も、東京とそれ以外の地域ではずいぶん差があり、「自分が流行るわけがないと思っていたものが、沖縄で使われるようなものになっていたという事実。単純にすげえなと。信じていた自分のセンスが間違っていたと気付かされましたね」。

偶然にも、通販サイトは学生時代の友人がシステムを提供していた。旅行から帰った後、友人を訪ねた。友人は楽天の副社長になっていて、そのとき、初めて三木谷浩史社長に出会った。
三木谷社長は当時30台半ば。ネットが社会のインフラになっていくことを熱っぽく語ってくれた。その姿は、「世の中を変えていく人」に見えた。ネットがおもしろそうだという気持ちを抑えることが出来なくなり、楽天への転職を決断した。

■好調なのに社長を辞める
転職から2年後、今度は起業を決意する。「みんなの就職活動日記」の会社化だった。ADSLの普及が進み、サイトのアクセスが多くなりサーバーが落ちることが度々生じていた。「これは流行る」と確信したが、周りは冷ややかだった。


伊藤さんが立ち上げたサイト「なかのひと」

ここで沖縄での体験が後押しする。「そのときは見向きもされなかったものが後になってみると世の中を変えるようなものになっていくんだ。みんなが信じていないことを信じられるくらいにまで持っていってはじめて他の人たちが付いてきてくれる」。会社化を実現させ、見込みどおり、サイトの人気も上昇した。

ところが06年、業績好調の「みんなの就職」の社長を辞めてしまう。情報技術を勉強し直そうと母校の大学院に進学するためだった

「社長をしながら大学院に行くっていうのは、格好悪いっていうかなかなか大変なんですよ。勉強と仕事を両立させるのは難しい」

研究対象はサイトへのアクセスを解析すること。これを生かして会社「ユーザーローカル」を設立した。

単にサイトを訪れたユーザー数がわかるだけでなく、ユーザーの性別や年齢層、勤務先などまでも解き明かす「なかのひと」「うごくひと」などの事業を手がけている。「このときは起業してやろうっていうビジョンはなかったんです。深く考えていたわけじゃなかった。勢いですね」。

■人生は限りがあるから意味があることをやる
転職、起業、進学、起業。伊藤さんは常に変化し続けている。それに比べて、私はまだ最初の一歩も踏み出せないでいる。伊藤さんを一箇所にとどまらせず、チャレンジさせるものは何か。


「ほかの人から見たらわがままに見えるかも知れないけど、サラリーマンみたいに言われたことをやらないとお金がもらえないことをやるよりは、自分にとって意味があると思ったことをやりたいと思ったんです。それがたとえお金にならなくても、自分が意味があると思えることの方が重要ですね」

仕事でも自分がやりたいことをやる。誰もがあこがれるけど、なかなか実行できることじゃない。どうしてそんな決断力が持てるのか。

「やっぱり、自分の人生には限りがあるんだって思うかどうかだと思うんだよね。人は年を取るし、いずれ死ぬ。だから生きているうちにやりたいことをやっておこうと。これは、楽天時代に三木谷社長にも言われました」

伊藤さん自身、父親を早くに亡くしている。だからこそ、三木谷社長の言葉がすっと入ってきたのかもしれない。

■肩書がなくなるより大事なこと
伊藤さんは、ひょうひょうとしていて、つかみどころがない。初めての入社も転職も起業も、人生にとって重要な転機のはず。さぞかし奥深い考えがあるんだと思って質問しても、「あんまり考えたことない」「覚えていない」と想定外の回答ばかり。一方で、自分がやりたいことについてはあふれんばかりの言葉が出てくる。まるでこれ以外には興味がないといった感じで…
実は、これが重要なことなのかもしれない。大学を卒業したら、とにかく就職しなきゃという強迫観念がずっとあった。どこの会社にも属さなくて、肩書がなくなったらどうしよう、世間からどう思われてしまうんだろう、という不安感ばかりが先走っていた。もっとシンプルな、そもそも何がやりたいのかということが置き去りになっていた。まずはやりたいことを探す。今更だけど、伊藤さんは大事なことを教えてくれた気がする。


この記事はgooニュースと大学生向けのジャーナリスト育成プログラム「スイッチオンプロジェクト」のコラボレーションによるものです。


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