山梨学院大学に奨学生として招かれて以降、日本のラグビーシーンを盛り上げ続けてきた一人、NTTコミュニケーションズ シャイニングアークスのレイルア マーフィー選手。卒業後はトップリーグのチームからスカウトを受け、トントン拍子でプロの道へ。華々しい選手歴、そして身長185cm・体重110kgという圧巻の肉体は、まさに生まれながらのラグビー選手!しかし、本人いわく「ラグビーの才能があるとは言い難い」とか。 そんなレイルア選手の、成長と上達の秘訣(ひけつ)を聞いた。

―15歳でのスロースタート、才能はなかった
高校生のときに、友達に誘われて遊んだのをきっかけにラグビーを始めた。15歳だったかな。ニュージーランドではプロとして活躍するほとんどの選手が幼少期から始めているから……僕はかなりのスロースターターだと言えるね。

大のラグビーファンの父親に対し、僕はそうでもなくて(笑)。でも実際にやってみたら、すごく気に入ってしまったんだ。何よりも楽しかったのがタックル。小さい頃からやっていたサッカーでは体験したことのない、刺激と興奮を感じた! 仲間との絆がとびきり深いことも魅力的だったね。

当初の自分は、才能があったとは決して言えないかな。ここまで成長できた秘訣はただ一つ、ラグビーに対する愛情のみ。好きだから、もっとうまくなりたい。そして、もっともっとプレーしたい。そんな思いで、日々コツコツと練習を重ねていたよ。

―日本での自立が人間としての成長につながった
プロの選手になる、という選択が現実的になったのは大学生のとき。デラセラカレッジ在学中に、山梨学院大学から奨学生として招待されたんだ。当時は日本のことを何一つとして知らなかったから、かなり迷ったけど……新しいことに挑戦するいい機会だ!と留学を決意。

来日してからしばらくはホームシックだったなぁ。最大の試練は語学の壁だったね。おまけに人見知りってこともあってなかなか友達ができず、自分の殻にこもる日々が続いたよ。でも仲間とのコミュニケーションや信頼関係なしにラグビーはできない。覚えたての日本語と簡単な英語、そこにジェスチャーを交えながら積極的に話し掛けるようになったよ。

そうして1年もたったときには友達もたくさんできて、日本での生活が大好きになっていたよ。そんな経験を通して精神的に自立できたことが、一人の人間、そしてラグビー選手としての成長につながったと思う。

―ピンチのときにこそ、冷静さ死守!
精神的な自立によって培われた能力の一つで僕の最大の長所と言えるのが、冷静な判断力。ラグビー選手はフィジカル面で強いことと同じくらい、もしくはそれ以上に精神力が求められる。以前の僕はピンチやプレッシャーに面すると「コーチはどう指示するだろう」「チームメイトは僕にどうしてほしいだろう」と、他人のことばかり考えてしまっていたんだ。すぐに結論が出ないからさらに焦って、フィールド上でパニックになることもしばしばあった。

でも自分を信じることを覚えてからは今どんな行動をとるべきかを冷静に判断できるようになったおかげで、焦ってミスをすることがグッと減ったんだ。さらに自分だけでなくチーム全体を客観的に見られるようになり、アシスト能力も向上したと思う。

―試合前には必ず、音楽で精神統一
とはいえプレッシャーを感じると、ときに平静を失いそうになることもある。だからプレッシャーを忘れて集中力を高めるために、試合の前には必ず10分ほどかけて精神統一を行うんだ。そこで欠かせないのが、大好きな音楽! ヒップホップを大音量で流して雑音を遮断し、その日の試合で自分が何をするべきか頭の中で復唱する。いわゆるイメトレってやつさ。

趣味でトランペットを演奏する父親の影響から、幼い頃から音楽は身近で特別な存在だった。僕も趣味でたまにギターやドラムを演奏しているよ。試合の前だけでなく、毎日のルーティーンごとにプレーリストがあるんだ。筋トレなどのワークアウトを行うときには、テンションが上がるダンスミュージック。朝はまったりとしたR&B。大声で歌えば、ストレス発散にも! 人前では恥ずかしいからシャワー中にこっそり歌っているよ(笑)。音楽という癒やしがなかったら、ラグビーを楽しみ続けられなかったかもなぁ。

―能力を高めるためには継続がマスト!
「継続は力なり」とは、僕自身が身を持って実感してきたこと。筋トレやダイエットはもちろん、語学や趣味など好きなこと、興味のあることを上達させるためにはどうしたらいいんだろう?と悩んでいる人は、まずは毎日コツコツと続けることから始めてみて。

たとえばランニングなら、最初は10分ずつでいい。ストレスを感じない範囲で続けて「もう少しいけるかも」と感じたら5分増やしてみる。続けるうちにコツをつかんで、コツをつかんだら徐々に結果が現れてくるはず。必要なのは「好き」と「上達したい」という強い思いと、ホッと一息つける“癒やし”のみだよ。

レイルア マーフィー 1988年12月2日生まれ、ニュージーランド出身。ポジション:プロップ、185cm/110kg。高校よりラグビーを始め、ラグビーの名門デラセラカレッジへ進学。08年、山梨学院大学への入学を機に来日。卒業後の12年、キヤノンイーグルスに入団。14年、日本国籍を取得する。 17年、現在所属するNTTコミュニケーションズ シャイニングアークスに移籍。