本格的にラグビーを始めたのは高校からというスロースターターながら、めきめきと才能を発揮。山梨学院大学で主将を務め、現在はNECグリーンロケッツで活躍する後藤輝也選手。トライ・アンド・エラーを重ねて地道に努力するラガーマンが多いなか、彼のモットーはなんと「楽しくない、つらいと感じることはきっぱり諦める!」。「好きなことだからこそ成長できる」という後藤選手が体現する“ポジティブの連鎖”、ぜひとも取り入れたい!

―自分の成長を感じられないと楽しくない!
初めてラグビーに触れたのは中学3年の夏。卓球部を引退し退屈な毎日を過ごしていた時に、昔ラグビーをしていた先生から「スクールへ通ってみないか」と誘われて。友達と一緒ならいいか!と、遊び感覚で通い始めました。

受験を控えていたため2カ月でやめたのですが……めちゃめちゃ楽しかったんですよ。小学校ではサッカー、中学では卓球をしていたのですが、どちらも思うように力を伸ばすことができず苦しんだ経験があります。その点ラグビーは初心者だったから、日々、成長しかしないんです! 昨日できなかったことが今日はできる、という快感にハマり、ラグビー部のある高校へと入学しました。

と、まあなかなか楽天的にラグビーを選択したのですが(笑)、もちろん続けるうち、楽しめないことや試練の一つや二つは経験しました。そこで学んだのが「どうあがいても、無理なことはある」ということ。

―無理せずに諦めることもまた、戦略のひとつ
スポーツ選手として、自分よりうまくて強いプレイヤーは山ほどいる。もちろん昔は「絶対に勝ってやる!」と、強気な時代もありました。でも実際に対戦すると「ああ、この人は絶対に超えられないな」と悟ってしまう瞬間があって。努力し続けることは大事ですが、同じ土俵で戦い続けて結局、勝てなかったら意味がないんですよね。だったら、ライバルにはない自分だけの強みを身につけたほうがいいじゃん!という考えに至りました。

もともと楽しいことが好きでプラス思考な性格だから、悩むことがすこぶる苦手で(笑)。うまくできないことを続けるのはとにかく苦痛だし、ラグビーも嫌いになってしまいかねない。悩むくらいなら楽しいことをしたいし、楽しいと思えることの方が、絶対的に成長が早いんですよ。だから僕は「諦めないことが美徳とは限らない」と思う んです。

―正直、怒っていいことってひとつもない!
練習中も、注意されたことではなく褒められたことを覚えておくようにしています。褒められるとうれしいですし、また褒めてもらえるよう、もっと頑張ろう!と気分が盛り上がりますから(笑)。それは後輩に対しても一緒で、僕、あまりに怒らなさすぎるせいで「優男 (やさお)」って呼ばれているんですよ。

僕自身が、怒られるとテンションが下がるし緊張すると余計にいいプレーができなくなる。怒ってもいいことって一つもない。言葉でロジカルに伝えた方が、相手の理解はもちろん絆も深まりますし。怒らない代わりに、こまめに「ナイス!」「いいね!」などと声を掛けて後輩を褒めるようにしてます。

プライベートでは大のゲーマー。ラグビーをしているとき以外は、ひたすらゲームをしています(笑)。なかでも戦略をじっくり練るタイプの対戦ゲームが好きなんですけど、そのせいか試合中も冷静に分析する能力が高いんですよ。みんながテンパっているときも落ち着いてチーム全体の動きを把握し、どう攻めるべきかを考えることができるんです。つまりゲームも無駄ばかりじゃない、ってことですよね!うん、きっとそうだ!!(笑)

後藤輝也(ごとう・てるや)1991年12月18日生まれ、山梨県出身。ポジション:ウィング、177cm/80kg。10年、山梨県立桂高等学校を卒業し、山梨学院大学に入学。13年、同大学ラグビー部の主任に就任し、チームを11年ぶりの関東大学ラグビーリーグ戦にグループ1部昇格に導く。14年、大学を卒業して現在所属するNECグリーンロケッツに加入。16年、リオデジャネイロオリンピックでは7人制日本代表に選ばれる。あだ名は“ごっつぁん”。