オバマ政権はリベラルか・保守も取り込んだ「おやじキラー」(上)
ひとつのテーマを二人の論者が違った視点からアプローチして、その本質に切り込むgooニュース×Voice連携企画「話題のテーマに賛否両論!」。今月のテーマはオバマ大統領です。
保守も取り込んだ「おやじキラー」(加藤祐子・gooニュースデスク)
「私のような雑種」。昨年十一月七日の記者会見でオバマ米大統領は自らをこう呼んだ。娘たちに約束した犬をどう選ぶかの話題で出てきた表現だが、よくよく考えてみれば、オバマ氏の在りようをじつに端的に表現している。人種的なことだけでなく、政治信条的にも。否応なくこれから「オバマのアメリカ」と付き合っていく日本は、オバマ氏の「雑種性」を承知しておかないと判断を誤る。「オバマはリベラル」とか「初の黒人大統領」などといった単純なレッテル貼りは、理解を助けるよりもむしろ損なうだろう。
リンカーン大統領のフル活用
「初の黒人大統領」。これはもはやオバマ氏の枕詞だ。予備選の対立候補がクリントン上院議員(現・国務長官)だっただけに、「初の黒人か初の女性か」という歴史的な対立軸は何ともドラマチックで、マスコミにとって好都合だった。オバマ氏本人も著作などで自分は「黒人」と自己規定しているし、米国では少しでもアフリカ系の血が入っている人は「黒人」と見なされる。しかし、本当にそうだろうか? あるいは、それだけだろうか?
オバマ氏の選挙戦はたしかに、公民権運動の指導者キング牧師にちなんだフレーズを演説にちりばめるなど、「オバマ=キング牧師の後継」というイメージ戦術を展開していた。しかしキング牧師の後継者というだけでは、これまで選挙に敗れてきたあまたの黒人指導者と同じ轍を踏みかねない。オバマ氏が人種の壁を越えるため、陣営がフル活用したのがリンカーン大統領だった。
リンカーンが嫌いだというアメリカ人は少ない。オバマ氏はリンカーンゆかりの旧州議事堂前で大統領選出馬を正式宣言した。リンカーンの統治手法を参考にしていると発言し、就任式にはリンカーンを真似て列車でワシントン入り。リンカーンが使った聖書で宣誓するという念の入れようだった。
「初の黒人大統領」というあまりに強力なイメージの前にかすんでいるが、大学進学までのオバマ氏は主に白人の母と祖父母に育てられている。白人の価値観に囲まれて成人したその経験は、オバマ氏が大統領になるために不可欠だったのかもしれない。いまだ白人中心の国の最高権力を握りにいくにあたって、白人権力者を理解し説得できなくては話にならないのだから。
それでも本人は自分を「黒人」と公言してきた。だからなおのこと、当選数日後にジョークというかたちでぽろりと出た「私は雑種」発言が、示唆的だと思うのだ。
「オバマ=黒人大統領」というイメージに続き、「オバマ=リベラル」というイメージも広く流布している。なにせ米政治雑誌に「最もリベラルな投票行動をとった上院議員」に選ばれたこともあるくらいだ。しかし「オバマ=リベラル」というレッテルも、あまりに単純すぎる。
そもそも「リベラル」とは何を意味しているのか。日本では何となく「自由や人権を大事にする人」という意味合いだが、米国政治の文脈で「リベラル」といった場合、経済的リベラルを意味するのか、社会的リベラルを意味するのか、定義をはっきりさせる必要があるのだ。
米国で支持政党を決める要因は大別すると(1)経済的価値観、(2)社会的価値観――の二つに分かれる。同じ民主党支持者でも前者重視だったら福祉・公教育・低所得者減税などを重視。後者だったら同性愛や中絶などの権利重視となる。あくまで一般論だが、アフリカ系など非白人は(1)については民主党支持だが同性結婚には反対という人が多いというように、民主、共和のどちらの党でも(1)は党綱領に賛成だが(2)は反対(もしくはその逆)というねじれ現象は珍しくない。つまり「リベラル=民主党、保守=共和党」という整理の仕方は、便利ではあるけれども単純すぎるのだ。
米国政治の文脈では「リベラル」という言葉は時に悪口にさえなる。民主党政治家でさえ「リベラル」と呼ばれることを嫌う始末だ。大統領選序盤の討論会で「あなたはリベラルか」と質問されたクリントン現国務長官は、「私は進歩派(progressive)」と答えていた。クリントン氏が「リベラル」のレッテルを避けようとしたのは、「リベラル」という言葉に、〈権利主張ばかりする無責任者、ばらまき福祉に依存する怠け者、社会風紀を乱す神をも恐れぬ不道徳者、市場に介入する保護主義、危機に弱い弱腰ハト派〉というネガティブなイメージが染みついてしまったからだろう。
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