おとなの社会科見学、原子力発電所に行ってきた

頭には白い頭巾を被り、服の上から白衣を、さらに薄手の布手袋と靴下を履く。一人ひとり名前が呼ばれてカードを受け取り、ゲートを潜り抜け、そして最後にヘルメットを装着。全身白装束の大人がぞろぞろ行く先は、通常立ち入り困難な原子力発電所内の放射線管理区域… 普段は入ることができない工場や研究所内を、大の大人が見学する「社会科見学」が人気を集めている。今回は究極の見学場所とも言える、原子力発電所内に入ることができた。(東海林 竜也)


  バス車内でも説明を受ける
大人の社会科見学が幅広い世代の間で密かに流行しているらしい。mixiやブログで仲間を集めて、団体で申し込めば見学することができる。また、地下防災施設や研究所、はたまたビール工場など… 多くが無料、そのうえ知的好奇心を刺激できるという点が人気の秘密だという。

しかし、実際には、どういうものなのだろうか。そう思っていたわたしに、北海道電力の泊(とまり)原子力発電所を見学する機会がまわってきた。

今回見学した泊原子力発電所は、北海道の積丹半島西部にあり、札幌市からバスで2時間30分程の距離にある。

最初に訪れるのは、原子力PRセンター「とまりん館」。メインの原子力展示(4月下旬までリニューアル中のため見学不可)には、原子炉容器のカット模型、放射性物質の流出を防ぐ厚さ1.3メートルの鉄筋コンクリート壁の実物大模型があり、発電所のしくみが理解できるようになっている。また、所在地の歴史・風土・自然がわかる地域展示、ひいては無料の温水プールまであり、家族連れでも楽しめる。

事前予約なしで泊発電所に訪れた場合は、この「とまりん館」で当日申し込みすれば、構内展望台までの専用シャトルバスを利用することができるが、発電所内部までは見学することができない。今回は、北海道大学CoSTEPの授業の一環ということで、泊発電所1・2号機と、さらに建設中のプルサーマル計画を実施する3号機内部も見学することができた。企業や団体、地域住民のグループでも受け入れていたが、テロへの警戒で制限されているという。


PR施設「とまりん館」で説明を受ける
とまりん館で概要説明を受けた後、バスで発電所に向かう。トンネルをくぐり、フェンスで仕切られたゲートでいったん停止。警備員の方から一人ひとりに身分証が手渡される。3号機が工事中ということで警戒が厳しい。

1・2号機のメインは、何と言っても燃料取扱棟の見学だろう。テレビで時おり紹介される、青いプールに沈む燃料がある。

冒頭で紹介したようなものものしい格好をして、原子炉や核燃料を扱う放射線管理区域へと入場する。駅の改札のようなゲートがあり、従業員は個別のカードによって出入りがチェックされている。持たされたカードは被ばく線量計。もしものために、男性は胸に、女性はお腹付近に取り付ける。

リノリウム張りの広い通路は、一見どこにでもあるような造りをしているが、管理区域というだけで心なしか緊張する。しばらく歩き、さらに狭い階段を上ると、体育館や倉庫を思わせる高い天井の広々とした場所にたどり着く。そこが燃料取扱棟だ。

未使用の核燃料と、青い水で満たされた深さ8mの貯蔵プール(使用済燃料ピット)の中には、使用済み核燃料が眠っていた。
使用前の核燃料は、放射線がでていないため目の前で観察することができる。一方、使用済み核燃料は安全上の観点から、取扱棟内に設置してある小屋の中からガラス越しに見学した。使用済み核燃料をガラス越しとは言え、こんなにも間近で見学できるとは思いもしなかった。管理区域から出る際も、全身を包み込むようなゲートを一人ひとりがくぐって被爆量をチェックする。室温が高いこともあり、水分が欲しくなる(従業員用には清涼飲料水が用意されていた)。

また、燃料取扱棟以外に、24時間体制で発電所を運転する中央制御室も見学した。20年以上前に作られた中央制御室は、大小様々なスイッチやモニターが多数あり、さながらヒーロー映画の司令室のよう。我々が制御室の隅っこから見学しているなか、発電所が安全に動作しているかどうか運転員が目を光らせて業務をこなす姿が印象深い。

12月の運転開始を直前に控えた3号機施設は、見学通路が設けられている。中央制御室、発電機を回し電気を作るタービン建屋、燃料取扱棟が、エレベーターと通路で結ばれていて、見学スペースも設けられている。1・2号機のように建物を変わるたびにゲートを通過したり、靴を履いたり脱いだりせずに見学できるのはスムーズで快適だ。ただガラス張りの廊下越しに全体を見下ろすだけでは、臨場感には欠ける。

案内を担当した職員に熱心に質問していると見学時間が迫り最後は駆け足に。ゲートを抜け身分証を返却、とまりん館に戻り発電所ツアーは終了した。

従業員に見送られ、札幌に向かう30余名を乗せたバス車内も、出発直後は見学の感想を話し合う会話でにぎやかだったが、それもやがて静かになった。広い発電所内を動き回りながら、あちこちで職員からの説明を受けたため、心地よい知的な興奮と肉体疲労に襲われたのだろう、多くの見学者が眠りについていた。トータルで4時間越えの今回の社会科見学は、大変満足のいく内容だった。

事故報道などでなんとなくイメージの良くない原子力発電所だが、自分の目で実際に見てみることで、発電の仕組み、課題や危険性、安全への取り組みについても興味を持つことができた。安価に知的好奇心を満たしつつも、普段何気なく接している社会の問題について、改めて考えることができる。それが大人の社会科見学の魅力だと感じた。

 

この記事はgooニュースと北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)のコラボレーションによるものです。取材に当たっては北海道電力などの協力を得ました。


おすすめ情報

gooニュースの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

国際・科学 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

国際・科学 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索