原子力発電所のPR施設に高山植物が咲く理由

原子力発電所のPR施設に高山植物が咲いている。北海道唯一の原子力発電所である泊発電所に隣接する原子力PRセンター「とまりん館」。見学ルートに「アルプスルーム」と名付けられた展示ブースがある。羊蹄山やニセコ山系に自生する高山植物13種の開花した状態を常時見ることができるが、何故、原子力PR施設に高山植物が展示されているのだろう。(吉田知子)


原子力PRセンターとまりん館にある「アルプスルーム」
ガラスケースは2つ並んでおり、片方は花盛りだが、もう一方は土から少々の葉が芽吹いた程度の殺風景な状態である。

高山植物を開花させるためには、実際の自然環境と同じように、凍るように寒い状態を種や苗に経験させる必要がある。ここでは、開花前の苗を冷凍庫で保管しており、半年に一度の頻度で展示ケースの中に移植させている。
植えつけた直後は殺風景でも、ケース内の温度管理によって春を感じた苗は、徐々に育って3ヶ月ほどで開花する。2つの展示ケースでちょうど3ヶ月の時間差をつけると交互に開花時期が訪れ、常に高山植物が咲いている状態を保てるというわけだ。

ケースの中は、コンピュータ制御で照明や空調をし、高山植物の生育環境が人工的に再現されている。発電所に隣接する施設とはいえ、発電所の廃熱利用などは全くなく、熱源は電気ヒートポンプを採用しているそうだ。

展示の理由について、広報担当者は「近隣住民の方々に、できるだけ何度も足を運んでもらいたいからです」と語る。ただのパネル展示ではリピーターは訪れない。だからこそ、多少のコストを掛けてでも集客に策を練る。そのひとつがアルプスルームとなる。

常時咲いている状態を観察できる展示は、確かに珍しいだろうが、原子力とは直接の関係はない。このような展示が、原子力PRセンターの来訪者数獲得に効果的とは思えないが、原子力発電所にPR施設を併設し、同様の策を講じている事例は、日本各地の他の電力会社にも見られる。

東京電力・柏崎刈羽原子力発電所に隣接する「サービスホール」は、原子炉体験など、原子力発電の仕組みや構造を体感できる展示が行われているが、その周辺には同じPR施設として産直野菜も販売する「ふれあいサロン き・な・せ」がある。東北電力・東通原子力発電所の「トントゥビレッジ」には世界各国の森の妖精の人形展示コーナーがあり、中部電力の浜岡原子力発電所の施設では巨大スクリーンでアラスカの映像が流されている。およそ原子力発電のPRと関連するとは思えない展示からイベントまで多岐にわたるが、集客数の確保はそれだけ切実なのだろう。

「原子力に無関係な展示は無駄だ」「もっと工夫を」と言うのは簡単だが、原子力発電そのものの展示だけではなかなか関心を持たれないのも現実で、電力会社を一方的に批判できるようなものでもない。私達がもっと関心を持って関与していれば、このような不自然な展示は企画されなかったのではないか、ガラスケースに咲いた可憐な花々を見て考えさせられた。

 

この記事はgooニュースと北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)のコラボレーションによるものです。取材に当たっては北海道電力などの協力を得ました。


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