「ボー・オバマ」初お目見え お犬様騒ぎで記者団ウツケに コラム「東京から見るオバマのアメリカ」(9回目)

うーん、可愛い……! ホワイトハウスにやってきた黒いモシャモシャなワンコ。それに対して、うーん何てくだらない……! 米政治記者の憧れのはずのエリート集団、ホワイトハウス記者団が、このワンコを前にして投げかけた質問のあれこれ。とは言うものの、あの可愛らしさのカタマリを前にして、報道陣が総うつけ状態になっている有様は、なかなか同情できるものがありました。なのでこのコラムも、ちょっとウツケ状態になってます。(gooニュース 加藤祐子)

○公約実現の黒いモシャモシャ

つくづく可愛いなあ……。子犬にありがちな、体には不釣り合いなほど大きい前足が、すっぽり手袋しているみたいに白くて、もしゃもしゃで、肉球が黒くて、元気いっぱいで、落ち着きがなくて、あああ可愛い……!

……と、これではまるで犬好きのブログ・エントリーなので、ついにホワイトハウスにやってきたワンコの「ボー」がいかに可愛いか、いかにモシャモシャで、いかにグシャグシャ撫でくり回したくなるかについて、これ以上ここで騒ぐのは止めます。ボーくんと一緒に走っている大統領や、ボーくんと一緒にいる娘たちがいかにほほえましいか、それについてもここで騒ぐのは止めます。

ともかくも、ワンコを飼うとオバマ氏が世界中に表明してから、「公約実現」まで5カ月かかりました(なかなか決まらないので、オバマ氏本人が「あれは選挙戦中の約束だから……(守らなくてもいいんだ)」とジョークのネタにしたり)。

もうあれから5カ月もたったのかとちょっと目が遠くなる、昨年11月4日のあの夜、オバマ氏は勝利演説で「サーシャとマリーア。君たちにはちょっと想像もつかないほど、お父さんは君たちを愛しているよ。君たちふたりもがんばったから、約束した通り、ホワイトハウスには、新しく飼う子犬を一緒に連れて行けるよ」と公言。以来、アメリカのマスコミが必死になって特ダネ合戦をしてきた「ワンコ探し」がついに終わったのです。

○謎のサイトにオジャンにされた特ダネ

報道合戦はすさまじかったです。そもそも、AP通信によるとどうやらこの件についてはワシントン・ポスト紙がホワイトハウスから特ダネを約束されていたのに、事前に情報が漏れたのか何なのか、10日の時点で「これがファーストドッグ」と宣言するサイトがアップされてしまった。ホワイトハウスは「本物の写真ではない」と否定したものの、「いや、あれは本物だろう」というのが大方の見方。特ダネをかっさわれた形になったワシントン・ポストは、それでも12日に一面で特報した次第です。

そしてこの記事で実に悔しそうに、「この情報を真っ先にお伝えするのはここです」と前置きしておいて、「ボー」という名前の由来を「特ダネ」扱いでもったいぶって披露する有様。ポスト紙いわく、マリーアちゃんとサーシャちゃんが「ボー」という名前を選んだのは、いとこが「ボー」という名前の猫を飼っているからなのと、2人のおじいさん(ミシェルさんの父親)のアダナが「ディドリー」だったからと(「ボー・ディドリー」という有名ミュージシャンにちなんだわけです)。

そしてやはり12日午前、ホワイトハウスのサイトもようやく公式写真を掲載。これは、当時まだ「チャーリー」と呼ばれていたワンコがまず「お試し」としてホワイトハウスにやってきた時の写真だそうで。サーシャちゃんの腰がちょっとひけている感じは、いかにも犬を飼ったことのない家族の姿です。大統領もミシェルさんも、一度も犬を飼ったことがないそうで、なんとなく戸惑っている様子が、何ともほほえましい(首にしている虹色のレイがゲイ・ムーブメントを連想させるからと、「紹介します、ホワイトハウスで初めてゲイをカミングアウトしている犬です」とネタにしたのは、おなじみジョン・スチュワートですが)。

せっかくの特ダネを謎のサイトにかっさらわれたポスト紙は、緻密な事前取材ぶりを見せつけるかのごとく、6カ月にわたる「ボー」の半生を詳報。それによると、ブリーダーのところで10匹きょうだいで生まれた「ボー」は最初、別の家庭に買われていったのだけれども、どうも先住犬と折り合いが悪く返された、いわゆる出戻り犬だそうで。それをケネディ上院議員が買い上げて、オバマ家にプレゼントしたのだそうです。

出戻り犬なので、だから「できればシェルターから引き取りたい」と言っていたオバマ氏の「公約」も、半分は守られたと評価していい——というのが大方の見方なのですが。そんなことより、あの黒いモシャモシャを目の前にすれば、保護犬だろうが出戻り犬だろうが血統書付きだろうがペットショップで買った犬だろうが、そんな違いはもうどうでもよくなってきます。というか、人間側の思惑は何であれ(何がどうポリティカリーコレクトかとか人道的かとか)、犬や猫にしてみれば生まれが何でも温かい家庭を求めているのには代わりはないはず……と、すみません、ちょっと犬や猫のことになると冷静さを失ってウツケになるのは、アメリカの報道陣だけではないようで。

○犬にまともな質問をするのは難しい

とはいえ一方で、集まった記者団の投げかけた質問といったら……。確かに経済対策とか外交問題ではない黒いモシャモシャを前に、洞察力にあふれた鋭い質問をするのは難しいでしょうけれども。

「ボー・オバマくん、君は低刺激性なの?」とか(マリーアちゃんがアレルギー体質なので、アレルギー反応を引き起こしにくい「hypoallergenic」な犬というのが選択要件だったので)。

大統領に「(ボーは)どこに寝るんですか? ベッドですか?」とか(大統領の答えは「ボクのベッドじゃないことは確かだ」と)。

「彼は男の子ですか、女の子ですか」とか(「Is he a boy or a girl?」と本当に聞いていた。しかもオスだっととっくの昔に発表されていたのに)。もちろん、いついかなる時も冷静な「No drama Obama」は淡々と「男の子だよ」と答えていましたが。

そのほかにも「大統領が散歩するんですか?」とか(「みんなで交代して散歩しますよ」というのが答え)。

また、ポスト紙によると、この「ファーストドッグお目見え」が終わったあと、立ち位置をめぐり体を張った戦いを繰り広げていた記者同士が、記者室で殴り合い寸前になったとかならなかったとか。

いやはや、大変なお犬様騒ぎでした。

○おとなしい姉とおしゃまな妹

ちなみに、ボーお目見え会見の娘たちの様子が、例によってほほえましく。10歳のマリーアちゃんは前からちょっと人見知りというかはにかみというか、そういうお年頃なのか、いつも報道陣の前では口数少ない。一方で7歳のサーシャちゃんは幼いからか、物怖じしないというか、おしゃまというか、おしゃべりというか。

ボーをどう思うか聞かれたマリーアちゃん、報道陣に答えるというよりボーに言い聞かせるようにちょっとうっとりした感じで、「I love him. He's perfect(大好き。もう、完璧)」と。一方のサーシャちゃんは、特に何かを聞かれたわけでもないのだけど、「この子、泳げないのよ!」と親切に情報提供。

この姉妹がどう成長していくのか、それもやはり微笑ましく楽しみだというのは、やはり「動物と子供にはかなわない」という鉄則そのものですね。

さらにちなみに、「ボー」という命名には早くもダメ出しが入っていて。犬のしつけに詳しい人たちは「Bo」という名前が「ダメ」の命令の「No」に似すぎているので、しつける際に犬が混乱するのではないかと懸念しています。「No」の代わりに「ストップ」を「ダメ」の指示語に決めればいいという提案もありますが、まさかしばらくして改名騒ぎのスクープ合戦になったりしないか、いらぬ心配をしたりもします。


<このコラムのバックナンバー>
午前4時半の電話を受けて、核廃絶を訴えた(2009年4月5日)
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「オバマ大統領最初の100時間、まるで平和的革命のような」(2009年1月26日)
「真のライバルを使いこなすかオバマ新大統領、いよいよ就任式」(2009年1月19日)
大統領選中のコラム「大手町から見る米大統領選」はこちら。

オバマ大統領の土曜定例ネット演説

<筆者紹介>
加藤祐子(かとう・ゆうこ)
 ウォーターゲート事件や1976年大統領選の頃をニューヨーク の小学校で過ごす。オックスフォード大学国際関係論修士。全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイト「CNN.co.jp」で 2000年と2004年米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。


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