犠牲者の期待に応える国を アリゾナ乱射追悼でオバマ大統領が演説

米アリゾナ州トゥーソンで8日に起きた銃乱射事件の死者を追悼し負傷者の回復を祈る式典が12日夜、アリゾナ大学で開かれ、オバマ米大統領が追悼のス ピーチを行った。標的となったガブリエル・ギフォーズ下院議員が病院で「目を開けた」と報告した上で、犠牲者を悼み、現場で救援に走った人々を「英雄」と称えた。さらに大統領は「私たちを分断する力は、私たちを結びつける力ほど強くない」と呼びかけ、事件の責任を糾弾し合うのではなく、国民が礼節をもって対話を重ねて、犠牲になった9歳少女の期待に応えられるような国にしなくてはならないと強調した。(gooニュース 加藤祐子)

ホワイトハウスなどが中継した演説でオバマ大統領は、頭部を撃たれて重体の状態が続くギフォーズ下院議員を見舞ったことを報告。自分たちが病室を出た後に、「ギャビー(議員の愛称)が初めて目を開けたそうです」と伝えると、会場は拍手と大歓声に包まれた。

大統領は、乱射事件の現場でギフォーズ議員が『あなたの街角で議会』と呼ぶ市民対話集会を開いていたことを説明し、これは「人民の人民による人民のための政府のアップデート版だ」と紹介。「このいかにも典型的にアメリカ的な場面が、銃を持った男の弾丸によって打ち砕かれてしまった。土曜日に命を落とした6人も、アメ リカの最善の部分を代表していました」と述べ、犠牲者6人の名前と人柄を一人ずつ紹介していった。

そして6人が「急にいなくなってしま い、私たちは悲しみにくれている。悲しみで心が壊れてしまった。けれども、心を満たしてくれるものもあります。私たちの心は13人が生き残ったことで希望に満ちている」と大統領は述べた。さらに続けて、乱射事件の現場で銃弾をかいくぐって議員の元へ駆け寄り助けたインターンの大学生や、容疑者と格闘して短銃に弾丸を補充させないようにした61歳の女性、ならびに医療従事者たちに対して、「あなたがたへの感謝の気持ちで、私たちの心は一杯になります。英雄行為というのは戦場に限られたものではないと、この人たちは思い出させてくれます。英雄行為とは、特別な訓練や頑健な体がなくてもできるのだと」と称賛。会場が再び大拍手と歓声に揺れた後、大統領は続いて、こうした犠牲や英雄行為を前に国としてどう前進すべきか考えなくてはならないと問題提起した。

アメリカでは事件発生後、政治的な意見対立を過激で暴力的な言葉遣いで煽る近年の風潮が「精神的に不安定な人たちにどういう影響を与えるかもっと考 えて欲しい」と地元警察幹部が記者会見で批判。また、2012年大統領選への出馬が取りざたされるサラ・ペイリン前アラスカ州知事がかつてギフォーズ議員をはじめ対立陣営の政治家たちの選挙区に銃の照準にも見える印をつけた地図をウエブサイトに掲載していたことなどが、インターネットやマスコミに大きく取り上げられるなど、近年のアメリカの攻撃的な政治議論の風潮と、今回の事件との関係性がさかんに議論されている。

オバマ大統領はこういう背景に直接言及はしないながらも、「すでに国中が議論している。事件の動機についてだけでなく、銃規制関連の法律の是非から、精神医 療制度の質についてに至るまで」と指摘。その上で、「議論がこれほどまでに鋭く対立している今、世界のあらゆる諸悪は自分たちと意見の異なる連中の責任だ と言いたくて仕方がないというこの状況にあって、相手を傷つけるのではなく、傷を癒す話し方をしているか、今一度確認することが大事です」と、冷静さを呼びかけた。

「この悲劇を通じてさらに対立を重ねるようなことをしてはいけない。それはしてはならない(中略)誰かを指さしたり誰かのせいにするよりも、この機会に自分たちの道徳的な想像力を広げましょう。互いの言うことをもっとちゃんと聴いて。他人に共感する本能を研ぎ澄ませて。私たちは実に色々な形で、希望と夢で結ばれているのだと、思い出して」。

大統領はこう述べ、大統領就任前から繰り返してきた国民融和を呼びかけ、 「この事件を機に行う議論が、失った人々の犠牲に報いるものであるようにしよう。この人たちを失ったことを機に、私たちは自分たちの生活をもっと良くするよう努力すべきだし、政治対話はもっと礼節あるものにしていかなくては」と強調した。

さらに、「犠牲になった人たちが誇らしく思ってくれるよう、私たちが課題に応えていくには、礼節ある公の対話を重ねていくしかないのです。(中略)犠牲になった人たちは社会に奉仕する人たちでした。彼らの奉仕にふさわしくありたいから、私たちは礼節をもって行動すべきなのです」、「私たちは世界の全ての悪を止めることはできないかもしれない。けれども自分たちが他人にどういう態度を取るかは、すべて自分次第だ。私たちはきわめて不完全な存在だけれども、真っ当で善良なものをたくさんもっていると信じています。私たちを分断する力は、私たちを結びつける力ほど強くないことも信じています」とも呼びかけた。

大統領は最後に、犠牲者のひとりで、同時多発テロが起きた2001年9月11日に生まれた9歳のクリスティーナ・テイラー・グリーンさんについて、「この少女は、この国の民主主義に気づき始めたばかりでした。市民としての義務を理解しはじめたばかりでした。いつの日か自分も、自分の国の未来を形作る役割を担うことがあるかもしれないと、気づき始めたばかりでした。彼女は学校の生徒会に選ばれ、社会奉仕はわくわくする楽しい物だと思っていた。彼女は、地元の下院議員に会いに行ったのです。自分のお手本に なってくれる、良い人、偉い人のはずだと思って。彼女はこうした全てを子供のまなざしで見つめていた。私たち大人がついつい受け流してしまうシニシズムや罵詈雑言などに、目を曇らされることなく」と紹介。

そして感情を込めた語調で、「私はこの国の民主主義が、クリスティーナが思ったと同じくらい良いものであってほしい! 私はアメリカが、彼女が思ったくらい良いものであってほしい! 子供たちの期待にこの国が応えられるよう、私たちは出来る限りのことをするべきなのです!」と強く訴えた。

会場にはギフォーズ議員の夫をはじめ、犠牲者の家族が多く出席。大統領の言葉に時に立ち上がりながら、繰り返し拍手していた。

追悼式が沈痛で重々しいものでなく、拍手と歓声に溢れたものだったことについて、生中継したCNNでは一部のコメンテーターが「驚いた」と発言する一方で、現地リポーターは「ここトゥーソンの人たちは5日間、悲しみと恐怖で涙に暮れていた。気持ちを明るくさせてくれる言葉をみんな必要としていて、大統領はそれに応えたのだと思う」と説明していた。

一方でペイリン氏は同日、自分の発言や「照準」付き地図への批判に応える形で、自宅撮影のスピーチ映像を公開。乱射事件は「一人の悪人」の犯行によって引き起こされた惨事だと強調し、「マスコミや評論家たちは憎しみや暴力を非難するといいながらかえって憎しみや暴力を煽り立てるような血の中傷は慎むべきだ」と自分に対する批判に反論。この「血の中傷(blood libel)」という表現は歴史的に、ユダヤ人差別を由来とするもののため、その表現の使用について新たな論争が起きている。


おすすめ情報

gooニュースの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

国際・科学 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

国際・科学 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索