我が家は、ひとりっ子。きょうだい喧嘩がなくて静かです。でも年の近い遊び相手が家にいないので、結局、私がやりとりをすることに。すると、だんだんとお母さんと息子の関係というより、まるできょうだいのようになってきます。

リモコンやチョコレートを取り合ったり「そっちがずるい」の言い合いで喧嘩をしたりで、結局静かなんてものではありません。大人気ない「姉」と負けず嫌いの「弟」の諍いがやかましいと、リモート中のパパがやってきて苦笑い。静かにできないものかとクレームしてくるほどです。

もうひとり子どもがいたら、どうだったのだろうか。子ども同士で争ってくれれば、私は大人らしいシュッとしたお母さんでいられたかも。いや、どうでしょう。不公平にならないように冷静に対応して、同じように平等に愛せるかしら。あれこれ想像してみます。

ふと私が子どもの頃を思い出しました。私には妹がいます。でも5歳半になるまでひとりきり。おもちゃやお菓子があふれる家ではなかったものの、子どもが受け取るものは全て独り占めということです。

きょうだいと奪いあったり分かち合ったり、さらには競い合ったり嫉妬したりする経験もないままでした。でもとうとう、妹ができると知りました。とても楽しみで、可愛くても不細工でも一緒に遊んであげてね、とお友達にお願いするほどでした。

ところが、いざ赤ちゃんがくると、可愛いばかりではない。泣いてばかりでうるさいし、おまけに母は赤ちゃんにかかりきり。急に母の背中ばかりが目に映るようになった記憶がおぼろげにあります。

6歳間近の子どもですから、仕方がないと我慢できてはいたものの、妹が1歳になったお誕生日、とうとうはっきりと私の中に寂しさと嫉妬の感情が芽生えていることに気づきました。その初めての感情に戸惑ったことは今でも鮮明に覚えています。

なにせ、祖父母や親戚から差し出されるプレゼントというプレゼントは、すべて妹のもの。それを私は「素敵ね、良かったね」という程で笑顔を作り、手を叩いて喜んで見せていましたが、心のうちには全く違うわけです。それを予知していたのか、祖母だけが、私に目を向け、「これはアンヌちゃんにね」と言って小さなプレゼントを用意していてくれました。

包みを開けると、赤でもピンクでもない、臙脂色の折り畳み傘。大人っぽい色合いと複雑な折り目を目にして、もうジャンプ傘はもう卒業なんだなと、私のお姉さんとしての気持ちが満たされたのが思い出されます。

こんな風に新しくきょうだいが生まれると、上の子の気持ちは嬉しさや喜び、不安や寂しさなどが入り混じって、不安定になることも往々にしてあるでしょう。

でも息子はひとりっ子なので、そういった機会がありません。

いや、そうとも言えないかな。

「ねえねえ、ママぁ〜、タンタンと僕、どっちが好き?」

こんな質問をしたことがありますからね。タンタンとはウチの猫ですよ。

「ねえねえ、どっちが可愛い?」

本当に困る質問ですね。

「猫と息子だもの、比べられないわよ」「どっちもよ」「タンタンもあなたも可愛いよ」などと本当のことを伝えても、息子は治まらないわけです。

「ねえねえ、どっちか、って言ったら?」

じゃあ、とばかりに、もちろん息子だと伝えてみると「えー! じゃあ、タンタンは可愛くないの?」と寂しそう。そういうなら、と「タンタンかな」と試しに言ってみると「ふん!」と不服そうです。

それからしばらく手を替え品を替え答えているうちに、気づくと夕食の話題に移行していましたよ。結局、そういうやりとりをして確認したかっただけなのかな。タンタンを弟に見立てて、ぼくも、愛されてるもんね、と。

絵本『わかってるって』(しもかわらゆみ:さく/イマジネイション・プラス)は、こうした上の子の気持ちを忠実に描いてくれています。

アライグマのお兄ちゃんは赤ちゃんが大好き。「ぼくんちのあかちゃん、かわいいでしょ」。でも、だんだんと寂しい気持ちになってきます。それこそお母さんは赤ちゃんにかかりきり。実はお母さんも精一杯なんですね。

上の子とお母さんの気持ちに寄り添って、安心させてくれる作品です。定評のあるしもかわらさんの動物の絵は、やっぱり可愛い! 1ページごとに見入ってしまいます。たまには下の子ではなく、上の子を膝に乗せて、一緒に読んで聞かせて見てはどうでしょうか。(3〜5歳)

エズラ・ジャック・キーツと言えば、世界的に高く評価された絵本作家ですが、最近は知らない司書さんもいるという記事を読んで、いちファンとして、居ても立っても居られなくなりました。この場を借りて改めて紹介したい。『ピーターのいす』(偕成社)です。

だいぶ背が伸びたピーターの家には、生まれたての赤ちゃんがいます。ピーターは、静かにしないといけないし、今までのようにはいきません。自分が使っていたゆりかごも食堂椅子もピンクに塗られていきます。つまらない気持ちになったピーターは家出を思いつきます。といっても、門前ですけどね。さりげないユーモアを交えつつ、お兄さんとしての心の成長を、シンプルに、且つ見事に描いた名作です。コラージュの技法を使った絵のタッチも魅力的!(5・6歳から)

『二日月』(いとうみく:作/そうえん社)

三人家族だった杏のところに、新しく赤ちゃんがやってきます。お姉ちゃんになるのを心待ちにしていた杏ですが、なんだかパパとママの様子がおかしい。妹はよく吐くし、病院にもよく行く。どうやら「障がい」があるみたい。徐々に杏の心に、不安や寂しさが渦巻いて行きます。

ゆとりがなくなってゆくパパとママと、思わず不満をぶちまける杏とのやりとりは力強く、序盤からドキリとさせられます。強いお母さんや優しい友達に支えられ、成長してゆく杏の姿が、素直でグッときます。同じ状況になくてもうなづける、高学年向けの読み物。

上の子も下の子も、大切に育てたい。ウチのボクもタンタンも。 (Anne)