「信頼される」主将の宣誓から始まるセンバツ4度目制覇の道 広陵(広島)

 3月15日(金)の組み合わせ抽選会で秋山 功太郎(3年・捕手)主将が選手宣誓を行うことになった広陵(広島)。昨年の新チーム発足から11月末までの練習試合・公式戦計35試合で敗れたのは明治神宮大会2回戦の星陵戦のみ。豊富な投手陣と堅実な打撃・守備を強みに優勝候補の一角にあげられる彼らの冬の取り組みと、センバツ4度目制覇への青写真を聴いた。

みなぎる緊張感と頂点獲得への意欲

力強いボールを投じる広陵・河野 佳(新3年)

 どんよりとした雲の間から徐々に光が差し込む2月28日夕方、広島県広島市安佐南区。広島市中心部を眼下に見やる広陵グラウンドには徐々に先輩たちの名前も記された練習着を着た選手たちが集まり始めた。

 この日は期末試験前、雨上がりということもあり練習はセンバツメンバー候補20名ほどでの室内中心2時間程度のメニュー。それでも、彼らの醸し出す雰囲気は「頂点を狙う」獲物を狙う者たちならでは緊張感に満ちていた。

 ショートダッシュでは自分たちの声でテンションを上げ、最速148キロ右腕のエース・河野 佳(3年)に加え、昨秋公式戦登板経験を持つ石原 勇輝(3年)、森 勝哉(3年)、そして「冬に入って急成長した」とコーチ陣が評する高 太一(3年)の左腕コンビが投げたブルペンでは、バッテリーが試合も想定しながら投球を形作る。その横では野手陣がプラスチック製の小さなボールでティー打撃。これも彼らはことごとく芯を捉え続けていた。

 「明治神宮大会での星陵戦は自分たちから崩れて7回コールド負けに終わりましたが、あれをいい負けにしないといけないし、力を出し切れば詰められる差。ですので攻撃では打てるボールを絞り、低めに手を出さない。守備ではいらない点をやらないことを意識してやってきました」

 名将・中井 哲之監督の描く構想と「チーム全員で日本一を獲って、中井選手を胴上げしたい」と異口同音に語る選手たちの意思は完全に合致している。

 そして、そんな選手たちの輪の中心にいるのが……。河野が「この代はとっても個性が強い選手が多いので、1年冬からマネージャーをやってくれている石岡(洋介・3年)と、努力家でミスをしても誰にでもいえる彼がいなかったまとまらなかった」と全幅の信頼を寄せる主将・秋山 功太郎(3年・捕手)である。

新主将・秋山、冬に仕掛けたチーム内改革

ミットを構える広陵主将・秋山 功太郎(新3年・捕手)

 その秋山だが、実は昨秋の公式戦は主将ではなかった。「神宮大会の翌日に急に言われて、びっくりしました」。本人は当時を振り返る。

 ただ、驚いてばかりもいられない。早速彼はチーム内でのミーティングを開く。そこで示されたのは「具体的な数字を出すこと」であった。

 「グラウンドでの姿勢は当たり前のこととして、体重で言えば3キロアップ。太ももなら3センチアップ。明治神宮大会で奥川 恭伸と対戦したので、常にそこを意識して練習に取り組むようにしました」

 チーム内改革の効果はてきめんだった。「いつも先頭に立っている秋山さんと石岡さんが前に立って話されていると説得力もあるし、チーム全員が同じ方向に向いている」と話す2年生のまとめ役・宗山 塁(遊撃手)も「目標を何となく設定してもしんどいですが、明確な数字を出されることでみんな率先して乗り越えていけるようになった」と、その効果を認める。

 かくして「誰が出てもおかしくない高いレベルで競争していく」広陵の狙いは果たされることに。投手陣は昨秋未登板の高が「17」でセンバツメンバー入り。野手陣も昨秋二けただった2選手がレギュラー番号を付け、峯元 幸季(3年・捕手)が「12」番でメンバー入りを決めた。

信頼の輪を広げ、狙うは4度目のセンバツ制覇

練習最後にグラウンドを眼下に全力発声する広陵の選手たち

 「初戦の入り方が大事。簡単なことを当たり前にしようとしても甲子園は普通でできない場所なんですが、そこを乗り越えると勢いがついて乗ってくる。そこの勢いをつけてあげたいですね」

 このように中井監督はセンバツで注意すべきことをあえて全体的に述べた。これも主将の秋山が率いる選手たちへの信頼の現れからだろう。はたして、秋山に同じ質問をすると、やはり彼は細部をよく把握していた。

 「甲子園では『打ってやろう。抑えてやろう』という個人の力だけでは勝てない。チームが勝つためには自分が犠牲になることも必要です。88人の部員がいることは広陵にとっては強みになる要素。僕はそこでみんなが同じ方向に向いていくようにして、チーム全体に声掛けをして日本一になりたいです」

 図らずも秋山主将は3月15日(金)の組み合わせ抽選会では選手宣誓の大役を担うことになった。決まった瞬間はやや困惑の表情を浮かべていたが、ここは「野球以外、勉学も含めてしっかりやる部分にひかれて」岡山西リトルシニアから広陵の門を叩いた秋山 功太郎の考えを表現すればいいだけのこと。そして広陵は主将が宣誓する「信頼の輪」を起点に、1926年・1991年・2003年に続く4度目の「センバツ制覇」を獲りにいく。

(文・寺下 友徳)


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