【第101回選手権大会総括】星稜vs智辯和歌山で炙り出された今大会の象徴

 履正社の初優勝で幕を閉じた今大会、最も印象に残ったのは準優勝校・星稜のエース、奥川 恭伸(3年)のピッチングだ。とくに強い印象を残したのは3回戦の智弁和歌山戦で、「14回、165球、3安打、23三振、1四球、2死球、失点1」でわかるように盤石の出来だった。

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炙り出た今大会の象徴

強いインパクトを残した奥川恭伸(星稜) 写真:共同通信

 私が注目したのは1イニング平均11.8球という球数である。9回に換算すれば106球。

 ライバルの佐々木 朗希(大船渡)が岩手大会3回戦の盛岡四戦で同じく14回投げ194球を要していることを思えば、奥川の球数の少なさが実感できると思う。ちなみに、佐々木の盛岡四戦の球数は1イニング平均13.9球で、9回に換算すれば125球なのでこっちも非常に優秀である。

 奥川の智辯和歌山戦をもっと詳しく分析すれば今大会の特徴が自然と炙り出されてくる。この試合で奥川は23三振奪っており、そのうち10個が3球三振だった。センバツではどうだったかというと、1回戦で完封した履正社戦では17奪三振のち3球三振はわずか2個。球数が少なく三振を多く取れるのはコントロールのよさと変化球のキレのよさが要因として考えられるが、球審のストライク・ボールのジャッジも影響している。結論から言えば、今大会の球審のジャッジは極めてシンプルで好感が持てた。

 春までは2ストライクで3球目を際どいコースに投げればたいてい「ボール」とジャッジされた。また、私立の強豪と地方の公立の進学校が対戦すれば、有利なジャッジが下されるのはたいてい公立の進学校のほうである。弱いほう(条件が不利なほう)に有利なジャッジをしたほうが試合は面白い。つまり、試合を演出するのは選手ではなく審判である、とはあまりにも極端なもの言いだが、それに近い驕りが審判団にあったと思う。

 そういう驕りがこの夏はまったく見えなかった。ストライクはストライク、ボールはボール、まさにシンプルに球審は「ストライク・ボール」を判定した。奥川の3球三振の多さの陰に審判団の意識改革があったことは否めない。

 審判の変貌を象徴する試合が3回戦の明石商対宇部鴻城戦だろう。2対2でもつれ込んだ延長10回裏、明石商は無死一塁の場面で岡田 光(3年)のバントを投手の池村健太郎(3年)が二塁に送球。二里塁審はワンバンドの球をカバーに入った遊撃手が捕球したと判断し、「アウト」とジャッジしたが、審判団が自主的に再検証を行い、セーフと判定し直した。

 テレビの番組でも取り上げていたが、審判のジャッジが覆ったのは長い春、夏の大会史上、初めてのことである。審判の意識の変化を象徴するシーンと言っていいだろう。

ホームランが多かった今大会

初優勝を果たした履正社 写真:共同通信

 ストライクをストライクとジャッジすればピッチャーが有利になることは間違いないが、それでも今夏はホームランが多かった。どういう選手がホームランを打っているかというと、前にも書いたがストライクの見逃がしが少ない選手ほどホームランを多く打っている。改めて紹介すると48本中、見逃がし0の選手が打ったホームランは31本あった。見逃がし1球が13本、見逃がし2球はわずか4本という少なさである。

 履正社対星稜の決勝戦で勝負の流れを履正社側に引き寄せたのはた井上 広大(履正社・3年)が3回に放ったホームランである。2死一、二塁の場面で奥川が投じた初球の高めスライダーは明らかな失投だが、これを見逃がさずにセンター方向に打ち返した井上の好球必打の姿勢こそ誉められるべきだろう。井上は奥川だけでなく、1回戦では霞ヶ浦の本格派、鈴木 寛人の内角スライダーをレフトスタンドに放り込んでいる。速いピッチャーのストレートを想定しながら変化球にも対応できる技術力の高さが井上の最大の魅力である。

 ピッチャーでは140キロを超えた選手が、私が確認しただけで35人いた。今の時代、140キロ超えは凄さの基準にならないので、145キロ超えを基準にすれば14人いた。さらにハードルを上げて150キロ超えは3人いた。最速は奥川の154キロで、次いで151キロの中森 俊介(明石商・2年)、150キロの池田 陽佑(智辯和歌山・3年)と続く。

 この3人はストレートの速さだけでなく、スライダーやフォークボールのキレのよさでも目を引く存在である。

 チーム力で見ていくと履正社の総合力が圧倒的だった。

 

1回戦  履正社11−6霞ヶ浦 
2回戦  履正社7−3津田学園 
3回戦  履正社9−4高岡商 
準々決勝 履正社7−3関東一 
準決勝  履正社7−1明石商 
決勝   履正社5−3星稜

 鈴木寛はスカウト間に評価のばらつきはあるが、西日本のスカウトは「外れ1位候補」と断言した。津田学園の前 佑囲斗(3年)もストレートの自己最速が148キロを計測する本格派で、明石商の中森は来年のドラフト1位候補、星稜の奥川は今年のドラフトの目玉選手である。これらプロ注目のピッチャーを圧倒したバッティングは、昨年の覇者、大阪桐蔭とくらべても遜色ない。

 星稜は奥川ばかりが話題になるが、3回戦の智辯和歌山戦で延長14回を完投した奥川を翌日の準々決勝、仙台育英戦で休ませることができたのが決勝進出の大きな要因である。ここを17対1で大勝し、奥川は中2日で準決勝の中京学院大中京戦に臨み、7回まで2安打、無失点の好投を演じた。決勝で敗れたとはいえ、現在の高校野球で重要視されている体調管理に目を配った星稜ベンチの投手起用は今後の高校野球の指標になるものである。
 最後に3回戦に進出した16強の顔ぶれを見てみよう。

 八戸学院光星(青森)、仙台育英(宮城)、鶴岡東(山形)、作新学院(栃木)、関東一(東京)、東海大相模(神奈川)、星稜(石川)、高岡商(富山)、敦賀気比(福井)、中京学院大中京(岐阜)、履正社(大阪)、明石商(兵庫)、智辯和歌山(和歌山)、岡山学芸館(岡山)、宇部鴻城(山口)、海星(長崎)

 一目瞭然で東北、関東、近畿、北信越が勝ち残っていることがわかる。そして、これは大会前からある程度予想されていたことである。四国、九州は苦戦が予想され、その予想通りに早々と敗退する学校が多かった。そんな中、2回戦で敗れた鳴門(徳島)の全力疾走とピッチャーの積極的な内角攻めなど、攻撃的なプレースタイルが目を引いた。ディフェンス優位からオフェンス優位、この時代の変化にいかに早く対応していくか、両地区が復活するためのキーポイントと言っていいだろう。

(記事=小関 順二)

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