大宮東(埼玉) 打倒・花咲徳栄を掲げ、団結力で勝ち上がった3年ぶりのベスト4【前編】

 全国でも屈指の激戦区である埼玉県。この夏は花咲徳栄が優勝を飾り、見事5連覇。埼玉県内で実力を示す夏となった。そんな令和最初の夏、埼玉県内で公立ながらベスト4まで勝ち上がった学校がいた。それが大宮東だ。

 準決勝で山村学園に敗れたが、島村 大樹の投打で大暴れして同じ公立の古豪・上尾や埼玉栄などの実力校を次々破っていった。そんな台風の目、大宮東の練習の模様を取材に、同校のグラウンドに向かった。

打倒・花咲徳栄に燃える選手たち

守備の基本練習をする大宮東の選手たち

 グラウンドから少し離れたところから選手たちの声が聞こえてくるほど活気がある。それが大宮東の第一印象だ。いざグラウンドに立つと、選手同士で厳しい声を掛け合い、雰囲気はピリピリしていた。

 チームを指揮する河西竜太監督は、「ウチのスピリットというか、『闘志なき者は去れ』というのがありまして、基本的に闘志をもって野球をやっていこう。上手い下手ではなく、野球が大好きで打倒・花咲徳栄の志を持って戦うことを前面に出しています」

 センター方向にあるスコアボードに掲げられた打倒・花咲徳栄の文字。ベンチのホワイトボードにもその言葉は書かれており、選手からも「左の高森(陽生)だ」と具体的に花咲徳栄の選手名を出して意識を高めるなど、しっかり打倒・花咲徳栄の意識は浸透している。

 「花咲徳栄さんは150校以上いる埼玉県で、夏5連覇を成し遂げています。その花咲徳栄を倒さないと、自分たちの目標である甲子園には届かない。なので、この言葉を掲げています」

 「左の高森(陽生)だ」のように、前のチームから出ていた選手たちが中心となって練習中から具体的に花咲徳栄の選手名を出すことで、チームを引っ張ってくれているそうだ。

 そんな大宮東。この夏はベスト4まで勝ち上がったが、河西監督は入学した段階から手ごたえを感じていた。
 「野球の質や練習への取り組み方。そして人間性や学校生活が良かったので、基礎基本を3年間教え込めばいい状態になるのではないかと思っていました」

 ただ1つだけ河西監督を悩ませる問題があった。それは団結力だった。
 「人数が41名いたので、最後の夏にどうやって一体感を持って挑めるかというところでした。ただ個性派が多くて自分のことばかり考えていたので、春が終わるまでは団結力がなくバラバラでした」

団結力がベスト4へ大きく関わっていた

素振りをする大宮東の選手たち

 春の大会は県NO.1右腕・飯島 一徹擁する東農大三に0対1で敗戦。関東レベルと互角に戦えるほど能力が高いが、チームとしてのまとまりがなかった。それが大宮東の課題だったが、1つの出来事がチームに結束を生んだ。

 「春の大会が終わったタイミングで3年生4人が先に引退して、完全にマネージャーになってチームのために動いてくれたんです。『今のままだとまとまっていない。けど、まとまれば夏の甲子園に行ける』ということで。それで選手たちの中で『誰かのために、仲間のために、あいつのために』という言葉を発するようになり、だいぶ変わりました」

 こうしたチーム内での出来事もあり、大宮東は公立校でありながらベスト4へ。これは同校にとっては3年ぶりの記録だった。確かな存在感を示すことが出来た大会だったが、河西監督は一切満足していなかった。

 「正直悔しいです。よくできた、という感覚は1つもないです。打倒・花咲徳栄のために、まずは試合をしなければならないですが、それを叶えるには決勝戦しかありませんでした。たしかに山村学園さんは素晴らしいチームなのですが、うちは花咲徳栄さんを倒すために3年間頑張ってきたので、納得いかなかったです」

 当時セカンドのスタメンとして出場し、現在もチームの中心選手である増田晟也も夏を振り返り、「もう少しだったと自分は思います。可能性はゼロではなく、甲子園に行けるチームだった」と悔しさをにじませた。

 その悔しさをもって新チームがスタート。もちろん打倒・花咲徳栄、甲子園出場という目標をもってチームは始まったが、河西監督は選手の甘さを懸念している。
 「先輩たちが負けた悔しさを忘れずにできるかが勝負だと思っていますが、取り組みに対して甘いと感じています。秋の県大会も最後にエラーから5失点したのも、主将の佐藤亮太が言っても選手たちが追い込めていないような甘い状況が続いているからだと思います」

 また選手の様子を見ていると、「自分たちの代でベスト4まで勝ち進んだ」という錯覚や過信をしているのではないかと河西監督は感じている。そういったところから「人間性」が課題だと考えているそうだ。

 前編はここまで。後編では大宮東・河西監督の人間性という言葉に対する考え。さらにチーム作りについて、公立校でありながら結果を残せる極意を伺いました。後編もお楽しみに!

(取材・編集部)


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