この春、5季連続の甲子園出場を果たした石川の名門・星稜。この間にチームが3回変わりながらも秋は北信越大会優勝2回、準優勝1回果たしているチーム力の高さは圧巻である。なぜこのチーム力の高さを維持できているのか。それはそのチームごとに明確なウリを作り出すチームマネジメントが1つの理由だと考える。

去年は守り勝つチーム。今年は10点取るチームへ

室内での打撃練習(星稜)

 8月22日、履正社との甲子園決勝を終え、金沢に戻った翌日には、8月24日には土岐商との練習試合を迎えた。県大会開幕は9月8日。1か月間、チームを熟成しているほかのチームに比べれば明らかに時間がない。すべてが足りないことは分かっている。林和成監督は打をストロングポイントにすることを決断した。

「まず1つのことに絞ったのは、あれも強化したい、これも強化したいと思うと、失敗すると思ったからです。
 今年は去年のチームより振れる選手が多くいました。またピッチングについては半信半疑なところも正直あって、今年は前年から経験している荻原 吟哉、寺西がいましたが、まだまだ発展途上。失点を計算できる奥川と違って、今年は打たないといけないので、バッティングはある程度のところまでいければいけるかなと言う期待感はありました」

 打撃練習はほぼ毎日行い、守備練習も簡単なシートノックで、サインを使うような組織的なプレーは控えた。奥川 恭伸がいたときは、いかに1点を守り抜くかにこだわったが、今年は打ち勝つ野球のこだわった。

「前チームのスタート時の課題はやはりバッティングにはあったんですけどゲームプランを立てやすく、どうすれば進塁を進めるのか、バント・エンドランの練習を多くしました。この秋はバント全くしていません。一点を獲りに行くというよりも、一気に点を取りに行くと言うような攻撃は毎年攻撃型のチームを作りたいと思っているんですけど、去年のチームは5点取れば勝てるようなゲームプランを考えていました。

 しかし今年のチームは3点以内に抑えてくれればベストですけどそうはいかないと思うので、やはり10点取るような攻撃力をつけていかなければいけないと言うところはあります」

 その結果、昨秋の石川県大会で5試合46得点の猛攻、北信越大会準々決勝〜決勝戦まですべて二けた得点を挙げた。今年は内山 壮真、知田爽太、今井 秀輔の前チームからの経験者だけではなく、先頭打者ながら2本塁打を放った花牟禮 優、小学校時代はゴルフに取り組んでいた中田 達也(1年)も公式戦2本塁打と多くの長距離打ちが出ている。林監督は新戦力の台頭と活躍は予想以上のものだったと振り返る。

 「中田に関しては前チームまで全くと言っていいほどAチームの練習にも混ざってなかったですし、1年の中田や2年の花牟禮などが非常に頑張ってくれたおかげで得点力が上がったかなと思います」
 打撃に注力した分、守備に課題が出るのは想定通り。明治神宮大会では、守備のミスが出てしまい、初戦敗退となった。

選手たちが意欲をもって課題の守備練習!仕上がりは順調

エルゴメーターを行う荻原吟哉(星稜)

 これまでの練習の割合は打撃練習が8割〜9割だったが、冬の練習では守備練習メインにシフトした。またこれほど思い切りよく変えることができたのは選手たちが守備力を高めたい思いがあったからだ。
「大会後、生徒たちにレポートを書かせたのですが、ほとんどの生徒はやはり守備のことあげていました。守備練習をしなかった課題があの大会で凝縮して出ました。それは生徒たちにも自覚がありましたので、守備練習は非常に入りやすかったですね。本当にノックをよく打ちましたし、メリハリをつけてできたかなと思います」

 また今年は暖冬の影響で金沢でもあまり雪が降らず、グラウンドに出て練習することもできた。また年末年始には沖縄で合宿を行ってきた。林監督自身、ここまでの仕上がりについて手ごたえを感じている。
「守備の課題もかなりこの12月いっぱいまでに克服できた部分がありますし、ピッチャーの出来も非常にいいですし、ちょっと早いくらいに仕上がってきてるかなと思います。

 またバッティングに関しては守備は特化して11月12月にやってきましたのでバッティングに関しては形作りから入っていますので2月に入ったらフリーバッティングとか初めて行くんで、バッティングに関してはここからさらに上積みしていきたいなと思っています。ここまで自分の描いていたスケジュールの中でいろいろ考えた通りにできているかなと思います」

 今年に限らず2018年、2019年、そして2020年のチームを取材して感じたのは林監督は夏をピークに、チームを完成形にもっていくチーム作りをされていることだ。2018年、2019年もどちらかというと秋までディフェンスの比重が高いチームだった。だが、夏になると2018年は石川大会で記録的な猛打を出すチームになり、2019年も智辯和歌山、仙台育英といった強力なチームを打ち破るまでのチームへ成長した。今年は逆に打撃先行チームだが、荻原 吟哉、寺西 成騎など潜在能力が高い投手は多くいる。今年も総合力が優れたチームへ成長する可能性を持っている。

 ただこのチーム作りは林監督の手腕だけではない。そこには選手自らが課題を把握し、自主的に取り組める選手が多いということだ。その点については林監督も評価しており、それこそが全国大会で準備期間が他校よりも短い中でも質のある練習に取り組むことができて、強さを継続できているのだろう。

 では選手はどう取り組んでいるのか?また98年から星稜に赴任して、長く指導スタッフとして携わっている林監督はここまでの星稜野球部の変化をどう感じているのかに迫っていきたい。(後編を読む)

(取材・河嶋 宗一)


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