ギリギリまで諦めず検討し努力を続けるが現場の姿勢

明治神宮大会で初優勝を飾った中京大中京の練習模様

 本来ならば、新学期を迎えて活気あふれるはずの学校から生徒が消えてしまった今年の4月が終わった。そして、新型コロナウイルスの感染拡大は収まらないまま、ゴールデンウイークを迎えることとなってしまった。本来ならば、新入生も新しい環境に慣れてきて、部活動も活発になっていき、それぞれが精いっぱいの思いをぶつけて青春がはじけている時期である。

 愛知県の高校野球で言えば、春季大会で春の県内1位が決まり、さらに各校は県内外の相手と積極的に練習試合を組んでいく時期でもある。各学校とも、この連休をどう過ごしていくかということで、最後の夏を目指す戦力が整っていくと言っても過言ではないくらいにチーム作りとしては大切な時期である。

 ところが、今年は5月いっぱいの休校要請を受けて、対外試合どころか練習もできないというのが現実だ。そんな状況でもあり、いよいよ夏の愛知大会は大丈夫なのかという心配も現実味を帯びてきてしまった。

 先日は、ついに全国高校総合体育大会(インターハイ)の中止が発表された。もちろん、この決定も高校野球の今後に対しても何かしらの影響を与えることになることも確かだろう。もちろん、高校総体の各競技と高校野球では全国大会への道も異なるし、代表が決まっていく方法も異なるので、まったく同じ判断と言うことにはならないだろう。

 しかし、いずれにしても県内各校の指導者や関係者たちも、ある程度の覚悟は決めているところもあるだろう。
 「最悪の事態(大会中止)ということも頭に入れておきながらも、大会は行われるのだと信じて準備はしておきたい」
 というのが、共通の思いではないだろうか。

 現在は、学校そのものが新学期が始まったという形になっていない。そんな中で、9月入学としたらどうだろうかという根本的なことまで話し合われようとしている。もし9月入学案が決定事項となったとしたら、今度は100年以上続いてきた高校野球大会のあり方そのものが、大きく変化を求められることにもなっていくことなるだろう。

 あくまで、学校あってこその部活動。学校あってこその高校野球である。しかし、学校生活の多くのエネルギーをそこに注いで大事な十代の時間を過ごしている生徒が多くいることもまた確かなのである。それが、進路を含めた将来に影響を及ぼしていくこともある。

 だから、安易に結論は出せない。だけど、ギリギリのところまで、検討し努力し続ける。それが、現場を預かっている者の本音であり、姿勢であろう。

提案したい、全学年留年と言う思い切った発想

どういった結果となるのか

 そこで、一つの提案ではあるが、思い切った発想としては、教育界全体として2020年そのものがなかったという発想はどうだろうか。つまり、今年度はなかったということにして、全学年が留年という措置。そうすることによって、例えば今春のセンバツ代表校も救われるし、今年の3年生たちももう一度、夏の戦いに挑むことかできる。全国統一で留年ということで、もちろん2021年の新入生はない。そういう意味では、条件に差はない。

 もちろん非常に難しい対応になるかもしれないということは承知の上での提案である。このことによって生じる問題点としては、来年の小学校の新入生の問題がある。

 幼稚園で言えば今の年長組に当たる子どもたちは確実に入学してくることになる。そうすると小学1年生世代だけが、2年度分重なるということになってしまう。そこのところをどういう対応で配慮していくのかということは課題として残る。

 ただ、過去の歴史を見つめてみれば、それに近いようなこともなくはなかった。例えば、太平洋戦争が激化してきた1944年には、本来3年教育のはずの官立高等学校は2年で卒業となり、帝国大学も4年卒業のところ3年で繰り上げ卒業。医科も6年のところを5年で卒業していた(図らずも、私の父親がその世代だった)。これは、1年が消滅させられた時代でもある。

 また、東大入試ということだけに限ったことだったが、激化する大学紛争の中で、東大の安田講堂封鎖などの影響で1969年は東京大学の入試がなくなっている。東大一本に絞ってきていた受験生たちは浪人を余儀なくされたということもあった。

 もちろん、今回のコロナ禍はそれとは事態の本質はまったく異なることではある。ただ、起きている現象の対処としての一つの考察材料というか前例という意味での参考案にはなるのではないかとは思っている。

 いずれにせよ、決定されたことは受け入れる覚悟はしなくてはいけない。そして、その時にどう対処していくのか。現場の指導者や教育者たちの悩みどころでもあろう。ただ、それを伝えることもまた、教育という要素を内在している高校野球が担う役割でもあるのだと思っている。

(文=手束 仁)

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