甲子園通算103勝を誇る京都の名門・龍谷大平安。府大会準々決勝敗退に終わった昨秋からの巻き返しを図っていたが、コロナ禍により、当初の予定は大幅に狂ってしまった。そんな中でも夏の代替大会に向けて練習に取り組んでいる。甲子園を目指せない中で彼らはどのようにして夏を戦うのだろうか。

経験値の浅さを埋めるべく3年生が成長も自粛期間に

ノックを受ける選手たち

 昨年のチームは秋の近畿大会を制してセンバツでも8強入り。夏は準決勝で立命館宇治に敗れて3季連続の甲子園出場とはならなかったものの、この1年間は十分な成績を残せたと言えるだろう。

 昨年の3年生が引退して、新チームが結成された当初の課題は経験値の浅さだった。旧チームからレギュラーに定着していたのはクリーンアップを打っていた奥村 真大(3年)のみ。その奥村も最初は主将に立候補したが、数日で挫折。それからは山崎 憂翔(3年)が今日に至るまで主将を務めている。

 こうしたチーム状況もあり、原田英彦監督は「秋は行き当たりばったりでした」と振り返る。軸となる投手がこの時点では確立されておらず、「投手もたくさん使いました」(原田監督)と苦しい投手運用を強いられた。

 それでも地力で8強まで勝ち進んだが、準々決勝の東山戦では投手陣が序盤から打ち込まれ、4回までに10失点を喫してしまった。後半の追い上げも届かず、9対11で敗戦。2年連続のセンバツ出場とはならなかった。

 投手力に不安を残した秋だったが、冬場の練習の頑張りを原田監督は高く評価していた。右腕では秋から投げていた西本晴人と村尾 亮哉に「いいスピードボールを投げる」(原田監督)という工藤麟太郎、左腕では長身の竹嶋大登にカーブを武器とする茨木 篤哉、ワンポイントでの活躍に期待できる谷次真一と3年生投手が次々と成長を見せており、エース候補の誕生に指揮官は期待を寄せていた。



原田英彦監督(龍谷大平安)

 しかし、その矢先に新型コロナウイルスの感染が拡大して、3月上旬には寮を解散。5月末まで全体練習を行うことができなかった。

 「一番大事な冬が終わって、春からゲームを重ねる。野球面はもちろんですし、人間的にも3月から6月にかけて一番成長するんですよ。この期間を奪われたというのは凄く大きいです」と原田監督は悔やんだ。

 冬の練習で心身ともに逞しくなった最上級生が、試合を重ねるごとにチームを成熟させることによって、夏には完成度の高いチームを作ることができる。夏の大会を戦うために大事な時期にチームを解散せざるを得なかったのは龍谷大平安に限らず、多くのチームにとって大きな痛手となったことだろう。

 休校期間には選手と指導者でLINEやZoomなどを利用してやり取りをする高校も多かったが、原田監督は「自分で考えるいいきっかけかなと思って、何も言わなかった」とあえて静観する選択をした。選手たちに全てを任せることで自主性を育もうとしたのである。

夏はオール3年生で臨み、強豪揃いのブロックを勝ち抜き、優勝へ


山崎憂翔主将 (龍谷大平安)

 しかし、緊急事態宣言の延長により、休校が当初予定されていた5月6日から5月末まで延長された。これを受け、「3年生全員が愛しくなって」と3年生32名全員への家庭訪問の実施を決意。3年生全員の住所を調べ、遠くは愛媛県松山市まで自家用車で選手の実家へと足を運んだ。会話をしたのは一人あたり数分程度だったが、選手たちの取り組む様子はすぐにわかったという。

 「やっぱり、(自主練習を)やっている子とやってない子はわかりますよ。目を見てもわかるし、話を聞いてもわかります。6月1日から練習が始まるし、夏まで1ヶ月しかないから、そこでは(メンバーには)選ばないよと。どういう状況でお前たちが練習に出てきたかで判断するから、準備はしなさいという話をしました。でも、顔が見られたのは嬉しかったです」

 5月末には代替大会の開催が発表され、8ブロックに分けてのトーナメント戦を戦うことになった。龍谷大平安はオール3年生で挑む予定だが、ベンチ入りは試合ごとに入れ替え可能とはいえ、20名に限られている。全体練習ができる時間もない中で、休校期間でどれだけ練習してきたかがメンバーを決める際の重要な要素になりそうだ。

 また、原田監督が危惧していたのが1年生だ。例年より合流が2ヶ月も遅れたこともあり、「遊びを覚えて2、3人は来ないのでは」と心配していたが、40人全員が無事に練習に参加している。

 今年の1年生はレベルが高く、「本当楽しみです。秋には数人出てくると思いますよ」と原田監督は期待を寄せている。その理由は技量以上に意識レベルの高さにある。入部の際に記入させたアンケートには「自分に主将をやらせてほしい」と宣言した選手が5、6名いたそうだ。これだけ主将希望者が多いのは例にないという。例年通りの流れであれば、夏にも数名の選手がベンチ入りしていた可能性があったそうだ。それだけに今回のコロナ禍は残念だったが、秋以降の台頭に期待したい。



トレーニングの様子

 代替大会について原田監督は「3年生のキリがつく大会。大会ですからユニフォームを着て、背番号もつきます。そう思うとキリをつけられて良かったと思います」と開催を歓迎している。原田監督は大会が開催されなかった場合に備えて、中京大中京など有力校との練習試合を組んでいた。それだけ3年生にとって区切りとなる場所の必要性を感じていたのだ。

 龍谷大平安では大学等で卒業後も野球を続ける選手は多いが、高校で野球を引退する選手も中にはいる。その一人が主将の山崎だ。母子家庭で弟も野球をしているという事情もあり、大学で野球はせずに消防士を目指す道を選んだ。

 甲子園が中止になった時は「ショックは大きかった」と振り返るが、現在は気持ちを切り替えて、練習に取り組んでいる。最後の夏に向けて山崎は「最後は自分やチームメイトが『最高やったな』と思えるような試合をして、絶対に笑って終わろうと思っています」と意気込みを語ってくれた。

 6月21日に発表された組み合わせでは京都国際、京都成章、塔南といった強豪校と同じ激戦ブロックに入った。これらのチームとは決勝まで対戦しないが、どのチームが来ても3年生の集大成を見せるのに相応しい相手と言えるだろう。

 名門校で研鑽を積んできた彼らは最後にどんな試合を見せてくれるだろうか。これまでにやってきた練習の成果を存分に発揮してくれることを心から願いたい。

(取材=馬場 遼)


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