こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 皆さんの地域ではそろそろ地方大会が開催されている頃でしょうか。例年とは違って各都道府県によって試合日程や形式などは変わってきますが、特に公式戦では今まで培ってきた技術・体力・チーム力などを総動員し、一戦必勝の戦いに臨んでいることと思います。その中でも試合前や試合中などに発揮される集中力は、皆さんの持てる力を最大限引き出すことに役立ちます。今回はベストパフォーマンスを引き出すための集中力について考えてみたいと思います。

集中している状態とは?

円陣はメンバーが「今、ここでするべきこと」を確認する方法の一つ

 試合中によく「ここ、集中していこう!」と声を掛け合うことはありませんか。特に大事な場面の時ほど、お互いで声を掛け合って確認することが多いと思います。集中するとは「今、ここでやるべきことを理解し、準備して臨む」ととらえることができるでしょう。ただし、やるべきことはケースによって複雑に変化するため、何パターンも想定しなければならないかもしれません。
 そこでやるべきことの優先順位をつけておき、自分がコントロールできることに意識を向けることが大切です。また集中力というのは長時間持続できるものではなく、さまざまな刺激によって妨げられることが知られています(勉強を始めようと思いながら、ついスマホの画面を見てしまう…といった具合に)。環境(雨や強風など)や応援の声といった外的な要因や、ミスを恐れて不安になる内的な要因などによって集中力をそがれてしまうことも少なくありません。集中していない状態の時ほど、一度心を落ち着かせて、「今、自分ができること」を確認してみましょう。

適度な緊張状態を保つ

 「大きな大会においても平常心を保って試合に臨む」というのは皆さんの理想とするところだと思います。ある程度緊張してしまうのは仕方がないと思いますが、逆にまったく緊張しない状態であってもパフォーマンスは低下すると言われています。この緊張と弛緩(しかん:ゆるんだ状態、リラックス)の間に、集中力を高めてパフォーマンスを発揮するゾーンが存在します。適度な緊張感は人それぞれ違ってくると思いますが、これはある程度自分でコントロールすることができます。自律神経と関連する呼吸に注目してみましょう。
 呼吸は「吸う」「吐く」を繰り返しますが、このリズムを自分で調節することで緊張と弛緩を意図的につくり出します。少し緊張しているなと感じる時はゆっくりと大きく息を吐きながら深呼吸を繰り返すと、副交感神経が優位になって心拍数が下がり、ドキドキした状態が落ち着きます。反対に緊張感が足りないと感じる時は、わざと呼吸を早めることで心拍数が上がって交感神経が優位に働き、緊張状態に近づきます。

結果にこだわるのは試合後に

失敗をおそれず、目の前のプレーに意識

 集中力が切れる大きな原因の一つがミス、エラーであると言われています。例えばバッティングで凡退したときにその失敗を引きずってしまうと、守備でもミスをしてしまう…といったことが起こります。また「ミスしないように」という意識が強くなればなるほど、自分自身にプレッシャーをかけてしまい、いつもどおりのプレーができなくなるということもあります。練習では結果にこだわって反省し、練習を行うことが技術力の向上につながりますが、試合時は結果にこだわらず、「今、ここ」のプレーを意識することが集中した状態を生み出します。
 ミスをしたときに「切り替えよう」という声をかけることがあると思いますが、ミスをした原因を探したり、失敗してピンチがひろがったことへの申し訳なさを引きずったりしていると、その次のプレーに集中できないということが起こります。集中力を保ちながらプレーを行うためには、いい意味での切り替えが大切です。

身体的なコンディションを整える

 試合に集中するためには身体的なコンディションを整えることも重要です。試合当日に寝不足で頭がボーッとする、朝食を食べ損ねてしまい空腹状態でプレーをする、食事でお腹を下してしまい力が入らない…といったことは少ないと思いますが、このような状態ではとても集中力が持続するとは思えません。試合前日には睡眠時間を確保して休養を十分にとること、食事の面でも試合に向けて準備を行うようにしましょう。
 食事は胃腸に負担のかかる脂っこいものや食あたりを起こしやすい生ものは避け、消化のよいもの、体を温めるもの、エネルギー源となる炭水化物を中心にとるようにします。またカルシウムには神経の過度な興奮を抑え、気持ちを安定させる効果が期待できます。牛乳や乳製品、小魚といったカルシウムを含む食品も選んで食べるようにするとよいでしょう。身体的・心理的な準備が試合への集中力をうみ、ベストパフォーマンスを引き出します。持てる力を十二分に発揮できるようにがんばってくださいね。

【ベストパフォーマンスを引き出すための集中力】
・集中するとは「今、ここでやるべきことを理解し、準備して臨む」こと
・集中力はさまざまな外的・内的要因によって妨げられる
・適度な緊張感をもって試合に臨む
・呼吸によって心拍数が変化し、緊張状態をある程度コントロールすることができる
・エラーを引きずらず、切り替えて次のプレーに臨む
・睡眠と食事で身体的なコンディションを整えよう

(文=西村 典子)