8月に開催される交流試合。中京大中京、大阪桐蔭といった私学の強豪校に注目が集まるが、21世紀枠の戦いぶりも見逃せない。43年ぶりの甲子園出場を決めていた磐城の沖 政宗にも注目だ。滑らかな投球フォームから繰り出す最速141キロのストレート、6種類の変化球を操り、昨秋は9試合を投げて、防御率0.90と抜群の好成績を残した。

 全国的に見ても好投手に入るだろう。研究心豊かな右腕の軌跡に迫る。

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古豪復活を誓う磐城に現れたクレバー型エース・沖政宗を変えた関西遠征【前編】

秋、防御率0.90の快投ができた要因

沖政宗(磐城)

 勝負の2年秋に入った。

 ただ沖自身、調子自体はあまり上がらなかった。その中でも意識していたのは「不調の中でも0で抑える」こと。
 「地区予選ではなかなか調子がよくなかったですけど、それでも抑えるためにはどうすればいいか考えていました。僕たちのように1人1人の力がないチームが格上のチームに勝つには、ロースコアにすることが理想的な展開だと思います。だからその中心の立場として投げている自分がどうすれば0に抑えることができるか考えていました」

 そのためにずっとこだわっていたのが2年春から意識しはじめたのが、コントロール重視の投球だった。多彩な変化球を操り、特に自信に持つスプリット、横のスライダーを交えてゴロの山を築いていった。

 勝ち進むごとに自分の投球ができる手応えを掴んでいた。沖は、チームにどうリズムを乗れる投球ができるかを考えていた。
 「リズムよく投げてゴロを打たせてとっていく。良いリズムを作って、味方の攻撃につなげていくことを意識しました。0というこだわりはありますが、自分の投球から味方にとって良い状況を作るということは常にテーマにしていました」

 試合を重ねていくごとに調子を上げていき、東北大会に進出。緊迫とした試合展開が続いたが、まず初戦の東海大山形戦で8安打を浴びながらも要所を締め、完封勝利。そして2回戦の能代松陽戦でも6安打を打たれながらも1失点完投勝利。

 言葉通り打たせて取り、そしてロースコアを制して、東北大会ベスト8に導いた。

 沖の話を聞くと、良い意味では欲がなく、力みが感じられない。秋、好投ができたのは自分の能力、立ち位置を把握し、自分の投球を冷静に続けてきた事が大きいだろう。

 東北大会準々決勝で敗れたが、秋の躍進によって沖の評判は高まっていた。だが、沖はレベルの高い東北大会を投げたことで、力量不足を実感していた。そして冬ではトレーニング内容から見直した。
 「1年の冬はただ走っているだけで、内容は良いとはいえないものでした。2年冬は短距離のメニューを増やし、ウエイトトレーニングの内容も見直しました。さらに内容を濃くするために先輩に聞いたり、動画サイトを見ながら、参考になるものは取り入れてきました」

 そしてセンバツ出場が叶い、念願の甲子園へ向けて準備をしていたが、3月11日、甲子園中止が決まった。

感謝の思いを甲子園のマウンドで

沖政宗(磐城)

 沖は当時の胸中を振り返る。
 「中止は覚悟していました。驚きはしませんでしたが、喪失感はとてつもないものがありました」

 さらに磐城ナインが慕っていた木村保監督が異動で離れた。沖は「心にぽっかりと穴が空きました」と、覚悟していたとはいえ、簡単に切り替えられるものではなかった。

 しかし甲子園でプレーできるチャンスは突然舞い込んだ。6月10日にセンバツ出場校の交流試合を甲子園で開催することが発表されたのだ。沖は感謝の思いを語った。

「自分たちも半ば諦めていたところがありました。今回の事態は誰のせいでもないですし、この悔しい思いをどこにぶつければいいか、悩んでいたんですけど、今回、磐城高校の他部活の仲間も数々の大会で、中止になっています。いまだ厳しい状況でプラスに考えて1試合でも試合をさせていただけるのは本当にありがたいことです。何より、僕たちよりも諦めないで話し合ったくれて、開催を実現をさせてくれた大会関係者の皆様に感謝したいです」

 こうして独自大会、交流試合へ向けて動き出した沖はストレート強化をテーマに練習を重ねている。対外試合で好投をしているが、仕上がりはまだ5割、6割程度だ。
 「秋に比べると全然です。今は変化球を活かすためにストレートを磨くことをテーマにしています」

 体作りの成果がしっかりとストレートの勢いに現れば、楽しみだろう。そして交流試合へ向けての意気込みをこう語った。
 「32校の中で、一番弱いチームだということは自覚していますが、それでも、勝ちにこだわって、磐城が強みにしている結束力、集中力を武器に、格上の投手、打者に対して全員に立ち向かって行きたいです。

 今まで支えてくれた感謝の気持ちをプレーで伝えられればと思います」

 初の全国舞台では今までの取り組みの成果を発揮できるか。伝統校の期待を背負うエースは、独自大会、そして甲子園の舞台で躍動する。

(記事=河嶋 宗一)

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