増加傾向にあるのが気管支喘息だ。患者数は111・7万人(2017年=厚労省「患者調査」)。先日、世界で初めて3つの成分を配合した喘息治療薬が発売された。喘息治療の最前線は?

 減少傾向にあった喘息が、08年の88・8万人を境に増加傾向に転じた理由を、日本喘息学会理事長の東田有智医師(近大病院病院長)が次のように挙げる。

「添加物がたくさん入っているファストフード、密閉された住居、ペットなど。花粉、ダニ、カビも喘息の原因のアレルゲンになります。平均的な一般家庭のホコリ1グラムの中にダニは1000匹、カビは13万個いるといわれています」

 喘息で押さえておきたいことがある。まず、喘息は適切に治療をすればコントロール良好の状態にもっていける。

「ところが、不適切な治療が多い。喘息は1日やめても急には悪くならない。だから患者さんが治療をやめてしまう。また、喘息ならこれくらいの症状が出ても仕方ないと思っている患者さんもいます。コントロール良好というのは、走っても症状が出ない、呼吸機能が正常で増悪もない状態です」(東田医師)

 次に、成人してから発症するケースがある。

 帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学教授の長瀬洋之医師は「小児喘息の7割は寛解するが、治ったと思っても3〜4割は成人で発症する」と指摘する。

 喘息は身体的・精神的にQOL(生活の質)を下げ、労働生産性・活動障害を2倍悪化。しかし、さまざまな治療薬が登場しているにもかかわらず死亡者数は年間1500人を下回っていない。重症に限らず、中等症、軽症でも死に至ることがある。

「軽症でも次の日に重症になるのが喘息なのです」(東田医師)

 前出のように、コントロール良好であれば喘息の症状は出ない。咳、ゼーゼーヒューヒューといった喘鳴、呼吸困難や息苦しさなど呼吸機能の低下が見られたら、速やかに呼吸器内科を受診すべきだ。

 見逃しやすい症状としては「走る、階段や坂道を上がる、大声で笑う、ホコリやたばこの煙を吸い込む、疲労やストレスなどちょっとした刺激で咳き込む」「風邪をひきやすい・長引く」などがある。

「喘息の症状は夜中に起こるのが特徴。昼間に起こるようになれば、かなり進んでいる。症状は喘息という病気の氷山の一角で、根底には気道の慢性炎症がある。喘息のない生活の実現には、抗炎症治療の継続が重要です」(東田医師) 

■新薬は気道を拡張させる作用が強い

 喘息の治療は2本柱で行われる。

 日常的に使用するのが、ICS(吸入ステロイド剤)やLAMA(長時間作用性抗コリン剤)、生物学的製剤などの「長期管理薬」だ。気道炎症を抑え、呼吸機能を改善し、喘息発作を起こらないようにする。

 一方、発作時に使用するのが「発作治療薬」。「発作が起こったときだけ薬」では、喘息はコントロールできない。

 今回発売された世界初の3つの成分の合剤「エナジア」は、日常的に服用する長期管理薬に属する。

「LABA(長時間作用性β2刺激剤)、LAMA、ICSの合剤で、いずれももともと喘息治療で使われている薬です。特にLAMAは気管支拡張作用が非常に強く、5分くらいで拡張作用が出て、効果が長く持続します。そのため患者さんへのインパクトが大きい」(東田医師)

 吸入型の薬を複数使用している患者にとって、1日複数回の吸入や異なる吸入器の使用などが飲み忘れにつながりやすい。

 50%以上の喘息患者に1カ月に1日以上の吸い忘れがあるとの調査結果もある。今回の3つの成分の合剤は、吸い忘れ防止にも役立つ。

 一般的に、LABAとICSの合剤で十分にコントロールできなかった場合に、「エナジア」の処方が検討される。