中日ドラゴンズのドラフト1位、期待のルーキー石川昂弥(たかや)選手がナゴヤドームの巨人戦で待望の1軍デビューを果たした。


■バックスクリーンへの号砲

沖縄での春季キャンプ中に左肩を痛めた石川昂弥選手だが、その後の回復は順調だった。
2軍の練習試合では、高校時代からの“定位置”である4番に座っていた。そして迎えた3月24日のオリックス・バファローズ戦。チームもファンも待ちかねた一発は、ナゴヤ球場のバックスクリーン横に飛び込んだ。沖縄の読谷球場で周囲を魅了した豪快なシート打撃からすれば、出るべくして出たホームラン。同じ試合でさらに2ベースを2本打ち猛打賞の大活躍。その打球音の余韻が冷めやらぬ翌25日、背番号「2」の姿はナゴヤドームにあった。待望の1軍デビューである。


■無観客の中で1軍デビュー

ナゴヤドームでの相手は本来ならば本拠地開幕戦を戦ったはずの讀賣ジャイアンツ。
新型コロナウイルスの感染防止対策として、ナイターで予定されていた試合は、デーゲームの練習試合に変更された。取材パスを手にして入場したが、この日もスタンド席は空いている。観客がひとりもいない野球場は、実に淋しいものである。初めて無観客試合を体験した2月末は打球音や選手のヤジなど新鮮な発見もあったのだが、あらためてプロ野球にとってファンの存在の大切さを痛感した。
そんな静かなナゴヤドームにスターティングメンバーを告げる場内アナウンスが響き渡る。「3番、サード、石川昂弥、背番号2」。スタンドからの大歓声がないことが残念でならない。


■見事だった空振り三振

石川昂弥選手は無安打に終わった。
3回打席に立ったが、最初の打席目こそ内野ゴロのエラーで出塁したが、続く2回の打席は三振だった。しかし、2打席目の三振は見ていて気持ちがいいものだった。ジャイアンツ期待の若手・戸郷翔征投手の前に三球三振。評価したいことは、そのいずれの球に対しても思い切りスイングしたことだ。すべて空振り、それもフォームが崩れない三振だった。
これまで数多くの新人打者を見てきたが、見逃しの三振や空振りした後に打席でバランスを崩すケースが目立った。しかし石川選手には、まったくそれがなかった。ある意味で堂々とした三振だった。それはきっと、近い将来の快打につながる。
そしてグラウンドでの落ち着いた所作。この春に高校を卒業したばかりの18歳ながら、その立ち振る舞いは十分“1軍”だった。


■若竜たちが躍動したゲーム

プロ野球12球団が開幕目標を4月24日に設定したことを受け、ドラゴンズにとっての練習試合は、この日のジャイアンツ戦をもって一旦休止期間に入った。休止直前となったこのゲームには石川昂弥選手の他にも、数々の若竜たちが登場した。
打順1番には3年目を迎える俊足内野手の高松渡(わたる)選手、そして2番には高校時代の“二刀流”からプロでは外野手に専念するルーキー岡林勇希選手がスタメンに名を連ねた。先発したドラフト3位の即戦力・岡野祐一郎投手はジャイアンツ打線を5回無失点に抑えて、竜の新人としては15年ぶりとなる開幕ローテーション入りに向けて着実に歩みを進めた。


■ドラゴンズロードも待っている

ナゴヤドームと名古屋市営地下鉄の駅を結ぶコンコースには、毎年恒例の「ドラゴンズロード」がお目見えした。チーム全員の写真パネルの他、2020年は新たに、昨シーズン大野雄大投手の快挙もあった「歴代ノーヒットノーラン」の歩み、そして1月に急逝した高木守道さんを偲ぶコーナーなども設けられた。
その一方、いまだにお目見えできないままのパネルもある。シーズンの試合予定表である。新型コロナウイルスの感染拡大によって、先が不透明な2020年ペナントレース。それでも竜のグラウンドには確かな“光”たちの胎動がある。
地下鉄改札口からまもない最初の大パネルには、こんな文字が書かれている。
「過去の栄光を超えろ」。
遅れてやって来る“球春”が待ち遠しい。


【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

画像:「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手(C)CBCテレビ