第2回「サッカースタジアム意見を聴く会」で発言する佐藤仁司氏、その表情は終始、厳しげだった…

 

今回の連載、でどうしてもこの場に記しておかなければいけない「声」があと2、3ある。

その中のひとりが、サッカースタジアム意見を聴く会の15人の委員の中でJリーグからの参加となった佐藤仁司氏だ。肩書は日本プロサッカーリーグ クラブ経営本部クラブ ライセンス事務局 スタジアム推進役。

Jリーグライセンスとスタジアムの関係がいかに密接であるか、この肩書がよく物語っている。

佐藤氏は広島のサッカースタジアム問題が熱を帯びるようになった、当時の森保一監督のJリーグ優勝ラッシュのころから何度も広島に通い、シンポジウムなどで声を上げてきた。遅々として進まない”広島時間”のありように、あきれ果てているのではないだろうか?

その間に吹田市、北九州市、京都府亀岡市に次々に新スタジアムが建設されていった。

そして新国立競技場。莫大な資金を投じて作られた東京五輪・パラリンピックのメーン施設であるが、供用開始早々から、”使い勝手の悪さ”を指摘するユーザーの声がネット上などに飛び交っている。

新国立の”二の舞”は、地方都市のマチナカスタジアムのプロトタイプを目指す”我々”としては絶対に避けたいところだ。

佐藤委員は広島市がまとめた資料の中で、各委員の声を4つに分類した次の項目について、全委員の中で最も多くの意見・提言を述べている。

4項目は次のとおり。

・魅力あるサッカー場の機能・仕様など
・スタジアムの多機能化
・中央公園広場への導入機能・施設など
・その他意見

佐藤氏の声

・魅力あるサッカー場の機能・仕様など

Jリーグが掲げる「理想のスタジアム」の4要件である
1)アクセスが優れている
2)すべての観客席が屋根で覆われている
3)複数のビジネスラウンジ、スカイボックス、大容量高速通信整備を備えている
4)フットボールスタジアムである
…という要件を満たすこと

Jリーグ規約に定める「スタジアム基準」のJ1必須条件、及びACLの開催条件は必ず満たすこと

スタンドの傾斜、ピッチと観客席の距離など、劇場としての臨場感も大切。また雨が観客席に降りこまないよう、屋根は低く真っ直ぐな形状が望ましい。

ピッチの芝の張り替えや活用に備えて、幅6メートル、高さ4・5メートルの搬入口2か所を確保すること。

ラウンジの厨房やバックヤードは充実させておくべき。

エスカレーター動線はとても機能的であるべき

スプリンクラーはインフィールド自動散水システムが効果的である。

チーム更衣室に浴室があると、非常時の温浴施設としても活用できる。

 

・スタジアムの多機能化

行政サービスや医療・福祉・教育など、そこに行けば必要なことが満たさせる真の「コミュニティ・ハブ」を備えた施設にすべき。

スタジアムに「通勤する」、「学びに行く」「買い物に行く」と言った365日、人々が足を運ぶ機能。

コンサート対応機能や過剰な複合施設はイニシャルコストが膨大化するため、吟味することが肝要。コンサート利用は住民対策ができているなら可能性はゼロでないが、中央公園広場での騒音対策は難しいと考える。

スタジアム以外の中央公園広場の利用者が必要とする機能。更衣室、シャワー室、避雷設備など。

コンコースは、緊急車両やケータリングカーが走行、駐車できる幅員があると機能的である。

避難所、備蓄庫、自家発電、給水サービス、緊急物資輸送の中継拠点や広域支援部隊のベースキャンプ機能といった防災拠点機能。

平和記念式典のテントやイスなどの一部を屋根やラウンジ、トイレ、大型映像装置のあるスタジアムに移すことも考えられるのではないか?

試合のない日も人々が訪れる見学ツアー、ミュージアム、メガストア。

・中央公園広場への導入機能・施設など

スタジアムと同じ天然芝の圃場(ナーセリー)を公園内に設け、傷んだらすぐ芝を張り替えられるようにしておくと、スタジアムをフル稼働させることができる。天然芝のサブグラウンドは同じ役目を果たせるが、圃場を別に設けたほうが作業はしやすい。

夜間照明付きフットサルコートは全国的に稼働率が高い。

本川のリバーサイドも含めて、おしゃれで季節感のある公園にすると、若者の利用が期待できる。

アンケートで希望の多かったレストランやカフェも「行く価値がある」テナントであることが大事である。

公園広場の利活用に電気(電源)、水道、搬入動線、通信環境は欠かせない。駐車場・駐輪場も一定数は必要。

 

・その他意見

アクセス道路、園内の歩道を含め、夜でもスタジアム周辺を明るく、安心安全を確保するため。LED街頭や高輝度なデジタルサイネージ、ライトアップなどを充実させることが必要。

スタジアム規模に応じたアクセス道路やコンコースの幅員、バリアフリー環境も大規模集客施設の安全上、とても重要なポイントである。

広島市内は海外からの訪問客が多いため、外国語のサインの充実が必要。

お城とスタジアムが隣接するスタジアムは国内に例がない。バックスタンドのコンコースからの景観など、お城とセットにしてのエリア設計が必要である。

市外からの来訪者に向けて、広島駅からの明快なアクセス(紙屋町西、広島バスセンターから)設定と告知を希望する。

参考にすべきは「空港」。公共交通機関でアクセスでき、バリアフリー、セキュリティ、ご当地グルメの飲食店や土産店、ラウンジ、飛行機を利用しない人向けのデッキなどが充実、外国人も迷わないサイネージなど、ヒントが詰まっている。

広島市作成の資料にある佐藤氏の「声」は以上。

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他の委員の中には「…して欲しい」というソフトな提言も見られるが、佐藤氏の場合は「…しておくべき」「…すべき」「必要である」など断定的な言い回しが多い。

Jリーグの立場で、あるはACLのビッグゲームを開催する場合に何が必須であるか?は佐藤氏の場合、国際基準も含めて熟知しているはずで、言い方を変えれば「これができないようではマチナカ新スタジアムで十分なベネフィットは発生せず、また長きに渡って利用者に価値をもたらし続けることはでいない」ということになるだろう。

例えば広島では平和大通りの冬場のドリミネーションイベントがすっかり定着した感があるが、その準備には大きな困難が伴っている。それは、平和大通りにそうしたイベントを想定した設備がないため、「電源」や「搬入動線」などがすべて後付けになっているからだ。

大規模なインベントを恒常的に開催するにはそれなりの仕込みや設備が欠かせない。広島はそういうことに疎い街、である。

佐藤氏の指摘する具体的な幅員の「搬入口」や非常時対応の「温浴施設」、ほんとうに使える「防災機能」の数々、サブグラウンドや圃場(ほじょう)の設置、「行く価値がある」カフェやレストランの吟味、稼働率を考えた「フットサルコート」など、どれも行政が苦手とする分野であり、佐藤氏はそれを見透かしたかのように具体的な声を上げている。

広島城との連携や市外からの、あるはい海外からの来場者に対する対策もしかり。現状では、広島城の周辺でさえ、まともな外国語の案内システムは皆無である。スマホでアクセスを確認してやってくる外国人来訪者におんぶにだっこ、の状況だ。

また平和公園は夜間の暗さや安全面での課題は問題視されるようになって久しいが、園内で様々なトラブルが頻発しているにもかかわらず、行政サイドは効果的な対処方法を打ち出せないでいる。

中央公園周辺も日が暮れれば、とても100万都市の真ん中とは思えないほどの「闇」の中に沈んでいる。佐藤氏は広島の外から長らく広島が内包する問題を見てきたため、何が不足しているのかを完全に見抜いているようだ。

ゆえに、ここにある提言はすべてスタジアムが稼働するまでには実行されるべきであり、どれひとつとして欠落することは許されない。

端的に言えば、これらは広島が世界に誇るスタジアムを建設するに当たって最低限、実践すべき項目である、と言えるだろう。

ひろスタ!特命取材班