宝塚歌劇月組・鳳月杏(ほうづき・あん)の外部劇場初主演作「出島小宇宙戦争」(作&演出・谷貴矢)が大阪・梅田のシアター・ドラマシティで上演中(16日まで)。江戸時代の長崎・出島で宇宙人探しに奔走する元天文方・カゲヤスを演じている。毎公演、期待度の上を行く、信頼の厚い14年目のスターは「いろんなことを学んで、一周して『カッコよくないと意味がない』に落ち着きました(笑い)。自分の思う男役の『ステキ』を心掛けたい」と、SFやコメディー要素たっぷりの異色作でも、クールな魅力を発揮している。

 花組時代のバウ主演「スターダム」(2015年)以来、約4年半ぶりに浴びるセンタースポット。「学年を経て、生まれ育った月組でできるのはうれしいし、光栄」と満を持して臨んだ主演作は、奇妙キテレツな世界観に満ちている。「普通の人があまりいない(笑い)。私が一番普通で『不思議の国のアリス』ではないけど、迷い込んだ感じ。ワクワク感的には『ワンピース』のようなアドベンチャー風かな」と説明する。

 日本地図測量の祖・伊能忠敬に関わった江戸幕府天文方・高橋景保(かげやす)が主人公のモデル。周りは個性的なキャラクターだらけ。ニヒルな悪役、女役まで何でもござれの実力派・鳳月だが、今回は主役として立ち、その大変さが身に染みている。「自由でいい。そこが難しい。だから、何をやりたいか、自分の在り方がないといけない」

 一方、大劇場と違ったクセの強い異空間に「ある程度キャリアを積んできた私が、新しいものにチャレンジするのは、かなり意味があること。今までのこだわりを持ちつつも『こうじゃなきゃいけない』というものは持たずに」。芯の強さと柔軟さを併せ持つ必要性を改めて知った。

 環境の変化で大きくなった。06年に入団後、月組で9年育ち、花組に異動。5年の時を過ごした。「花組は、たとえスター性を持っていなくても、それを磨かせてくれる組。最初は『花男』(花組の男役の通称)って何? と思ったんです。男役とは? 娘役の在り方とは? 昔からのこだわりがあった。それを知るのに時間がかかりました」。そして“男役力”はアップ。「何もしていなくてもカッコいい男役もアリですが、きちんと提示、発信していく力って大事。客席のへこちらから投げつける。ウインクやカッコつけることではなく。自信を持ってお届けする気持ちでしょうか」

 ベースは、稽古場での能動的な取り組みにあった。「考えて進むというより、自分がやりたいことをやる。トライしてみる。かなり勇気がいるんですよ。花組では、それをしないと生き残っていけないところがあった。(組替えは)私に必要なことだった。すごくよかった」とターニングポイントと位置付ける。

 今春で15年目に突入。そんな濃密な経験を「繊細で、ちょっとした変化に敏感な、人を見る力がある組」という月組の後進も伝えたい。「戻った瞬間から速攻『月組が宝塚で一番と思ってもらいたい』に変わりました。組力を上げ、発展させる。下級生にも、私が感じたものを体現することで『ああいうこともやっていいんだな』と思ってくれたら。率先してやっていきたい」。今作は「月」の魔力も重要テーマの一つ。魅惑の輝きを、さらに増す覚悟だ。

 東京公演は2月24日〜3月1日に「東京建物 Brillia HALL」で。「新しい劇場なので刺激になります」と地元・千葉に近い初東上にも燃えている。

 ◆鳳月 杏(ほうづき・あん)6月20日生まれ。千葉県船橋市出身。2006年3月「NEVER SAY GOODBYE」で初舞台。第92期生。月組に配属後、13年「ベルサイユのばら―オスカルとアンドレ編―」で新人公演初主演。14年12月に花組に異動し、15年「スターダム」で宝塚バウホール初主演。19年4月、古巣・月組に組み替えされる。身長172センチ。愛称「ちなつ」「てね」。