歌舞伎俳優の松本幸四郎(47)が27日、テレビ会議アプリ「Zoom」を用いて構成、演出、出演する史上初のオンライン歌舞伎「図夢(ずうむ)歌舞伎『忠臣蔵』」の初日公演を行った。

 400年を超える歌舞伎の歴史に新たな1ページを刻んだ。名作「仮名手本忠臣蔵」を題材に全11段の通し狂言で、この日は大序から3段目までを生配信(一部収録)した。税込み4700円のチケットを購入した約1100人がリアルタイムで見守る中、幸四郎は都内の某所で、高師直(こうのもろなお)、加古川本蔵(かこがわほんぞう)、塩冶判官(えんやはんがん)の3役を演じた。顔世御前(かおよごぜん)役の中村壱太郎(29)が新型コロナ対策でリモート共演したが、画面上では、まるで同じ舞台にいるように演じてみせた。

 ほかにもオンラインならではの技術で歌舞伎ファンをうならせた。師直の仕打ちに耐えかねて、判官が斬りかかる「松の廊下」として知られる名場面。判官目線のカメラが、師直を演じる幸四郎の真剣な表情を間近に捉えた。公演後のトークで壱太郎は「普通の歌舞伎では見られない、緊迫感、臨場感があり、興奮しましたね」と振り返り、幸四郎も「お客さんが舞台にいるような目線。そんな席は普通ないですからね」と狙いを明かした。背景のセットは今回のために大道具スタッフが作ったものだった。

 3月の歌舞伎座公演が中止になり、配信用に無観客で演じて以来、約3か月ぶりの歌舞伎に幸四郎は「久々のお芝居。それだけで胸がいっぱいになりました」と感無量の表情。「堂々と歌舞伎だと思って勤めさせていただきました。ギリギリまで試行錯誤しました。まずは出発したという感じですね」と胸をなで下ろした。

 前例のない試みだけに、音声が聞き取りづらいなど技術的なハプニングもあったが、「お客さんを入れた公演が再開しても、もうひとつの選択肢として『図夢歌舞伎』を確立していけたら。今後もいろんな技術が進歩していく。アンテナを張って生かしていきたい」。伝統を守りつつ新たな可能性を模索する先駆者は、コロナ収束後も図夢歌舞伎を発展させていく意向を示した。

 〇…幸四郎の図夢歌舞伎は7月25日まで毎週土曜・午前11時からライブ配信する。全5回。第2回(7月4日)は長男・市川染五郎(15)が大星力弥役で親子共演。第3回(7月11日)には市川猿之助(44)が早野勘平役で出演する。また、案内役として市川猿弥(52)が全体を通して口上人形の声を演じる。