新型コロナウイルスの影響で東京五輪が開催延期になると、様々な課題が新たに出てくる。延期によって起こりうる問題を、選手選考や収入など、数々の視点から考えた。

 ◆日程

 「秋開催」となれば2000年シドニー五輪(9月15日から10月1日)まで遡る。それ以降の4大会は7月下旬から8月中旬にかけて開幕している。この時期、米4大スポーツのうちシーズン中なのはMLBのみ。IOCに10億ドル(約1100億円)という巨額の放映権料を払っている米国放送局のNBCが強い影響力を持つといわれ、放送枠に余裕がある「夏開催」が続いていた。

 延期、または中止になって、放映権料や広告収入を得られなくなる事態に備えて、IOC、NBCは保険に加入している。とはいえ、IOCは大きな収入源となる米放送メディアを納得させることができるかが、大きな課題となる。

 国内では、2大プロスポーツと言えるプロ野球、サッカーに影響する。プロ野球は開幕延期にともない、11月7日予定だった日本シリーズ開幕を同21日への変更を想定しており、11月末まで日程に余裕がない。

 球場確保の面では、五輪メイン球場となる横浜スタジアムはDeNAの本拠地。ヤクルトの本拠地・神宮球場は五輪期間中、関係者や来賓の待機場所、資材置き場として使用される予定だが、神宮は優先使用権を持つ東京六大学、さらに東都大学野球の秋季リーグ戦ができない事態に直面する。

 サッカーでもJ1リーグの日程との調整を迫られそうだ。五輪で使用する全7会場のうち、J1クラブが本拠を置く札幌ドーム、埼玉スタジアム、東京スタジアム(味スタ)、横浜国際総合競技場(日産ス)、カシマスタジアムの5会場で試合が組まれている。五輪会場を本拠地とする5クラブは、10月以降では現時点で最終節の12月5日まで3、4試合が予定されている。

 「秋開催」の場合、プロ野球、Jリーグともに当初の五輪中断期間(7〜8月)を活用することは可能だが、練りに練って作られた日程を短期間で再編成できるのか。交渉が必要になる。

 ◆代表選考

 現在、IOCによると代表選手の約57%が選考終了。延期となった場合は、まず現状の選手で臨むか再選考するかを各競技団体と協議する必要がある。年単位で延期すると、選手の“旬”が変わるケースも出てくる。また、23歳以下のメンバーが中心となるサッカー男子は出場資格を失ってしまう選手の“救済”などを考える必要性が出てくる。

 ◆収入

 延期や中止となることでスポンサーとの調整も難しくなる。19年12月に発表した五輪予算では、スポンサーだけで約4000億円の収入。チケット売り上げも900億円を見込んでいる。チケットは延期となれば再び見込めるが、スポンサーは延期となると、不況などで契約を更新しない企業も増える可能性も。

 ◆スタッフ

 大会組織委員会は2014年の発足時は60人程度でスタートしたが、現在は約3500人にまで増えた。人件費は延期の幅が増えるほど増幅し、組織委の財政を圧迫することになる。また、既に決定している約8万人の大会ボランティアも開催時期が変更となれば、参加不可能な人も増え、再選考やオリエンテーション(説明会)の開催なども必要になってくる。

 ◆経済的損失

 関大の宮本勝浩名誉教授は、東京五輪・パラリンピックの1年延期により失われる経済効果は約6408億円、中止となると約4兆5151億円と膨大な損失が推測されると算出。選手の再選考や競技場の維持管理費などに新たな出費が見込まれるという。観光客減少や国民の消費が減るとマイナスの影響はさらに増えるという。