越前打刃物の製造業者でつくるタケフナイフビレッジ協同組合が、共同工房(福井県越前市余川町)を改修・増設し8月末にリニューアルオープンする。北陸新幹線南越駅(仮称)の開業に向けて観光機能を強化するほか、近年増えている若手職人の就業を受けて作業スペースを拡大。将来の独立も見据え、組合では「若い職人たちの夢を後押ししていきたい」と話している。

 ■斬新デザイン

 共同工房「タケフナイフビレッジ」は、福井市出身の工業デザイナーと新商品開発に取り組んだ当時20〜30代の職人10人が組合を立ち上げて1993年に開設。職人たちが工房を共有した上で常時公開し、見学コースも設けた伝統工芸では先進的な施設として注目された。

 改修と増設は2014年度策定の「越前市工芸の里構想」の一環。池ノ上町に2年前にオープンした振興施設「刃物の里」とともに、越前和紙、越前箪笥(たんす)の産地とも連携して交流人口の拡大に貢献していくことが期待されている。

 老朽化した共同工房の屋根などを18年から改修し、引き続き東側に増設。三角屋根の斬新なデザインが目を引く平屋の増設部分(約397平方メートル)には、見学可能な新たな共同工房のほか、旧工房から売店が移転。工業デザイナーの包丁をモチーフにしたオブジェも設置される。旧工房の売店があった場所は、打刃物の歴史や道具を紹介する展示ゾーンとして生まれ変わる。

 ■独立用地も

 「ナイフビレッジがあったから越前を選んだ」

 今春に同組合の黒﨑打刃物に就職した男性は北海道出身。ものづくりに携わりたいと全国の刃物産地を調べる中で、昨年夏に同社でインターンを経験。親方や先輩の人柄に引かれたのと同時に、ほかの工房と気軽に交流できる開放的な雰囲気にも魅力を感じたという。

 新規就業者は10年ほど前から増え始め、就職から数年の人件費を補助する県や市の支援策も追い風となって昨年は4人、今年はここ10年で最も多い7人。最初はわずか職人10人で始まった同組合には現在、12の工房が所属し、10〜80代の計47人が働いている。

 増設部分のさらに東側に整備された約1461平方メートルの多目的広場は、若手職人が成長した後の独立工房の用地を兼ねている。男性は「自分ができない作業をベテラン職人はいつも簡単にする」と修業の日々だが、「いつかは独立したい」と夢を育んでいる。

 ■海外に販路

 伝統産業の産地の多くが後継者不足に悩む中、同組合に新規就業者が相次ぐのは、越前打刃物の産地全体で近年海外に販路を拡大し、体力がある事業者が増えている証しでもある。

 同組合がドイツで開かれる世界最大の消費財見本市「アンビエンテ」に2005年から毎年出展していることを足がかりに、組合内外の事業者が企業努力を重ね、海外の有名シェフにも「エチゼン」の名は知れ渡るようになった。越前打刃物産地協同組合連合会によると、ナイフビレッジを含む産地全体の生産額は、1999年度の7・9億円から、昨年度は18億円にまで成長した。

 組合の設立メンバーでもある理事長は「各工房の枠を超えて職人同士で支え合えることがナイフビレッジのいいところ。ベテランが若手の成長や独立を応援し、一帯が文字通り打刃物職人の"村"になるように努力していきたい」と話している。

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