日本海側初の国立美術館となる国立工芸館は25日、東京都から石川県に移転、開館する。24日には金沢市出羽町の同館前で開館記念式典が行われ、国、県、市の行政、美術関係者ら約70人が移転を祝い、工芸王国石川から世界に向けて匠(たくみ)の感性を発信する拠点として飛躍を誓った。館内には「漆聖(しっせい)」と称された金沢市出身の漆芸家・松田権六(ごんろく)氏の仕事場も移設。25日から企画展が始まり、事前予約制で公開する。
 式典では独立行政法人国立美術館の柳原正樹理事長の代理で青木早苗理事が式辞を述べた。名誉館長に就いた元サッカー日本代表の中田英寿さんはあいさつで「10年ほど全国の工芸産地や作家を訪ね、工芸が非常に好きになった。開館に立ち会えるのは本当に光栄だ」と喜びを口にした。
 一方で中田さんは、全国行脚を通じて工芸界の苦境も見たとし「大きな問題は作家や産地と消費者が離れたこと。その距離を縮めていくため、工芸館の役割は重要であり、そうした企画を発信できるよう進めたい」と意欲を示した。
 来賓の萩生田光一文部科学相は「工芸分野で歴史的、文化的な蓄積を持つ石川県、金沢市と連携協力を図り、地域活性化に大いに貢献したい」と述べ、国立工芸館の充実に取り組む考えを示した。岡田直樹官房副長官、馳浩衆院議員、谷本正憲知事、山野之義金沢市長、一般財団法人石川県芸術文化協会の飛田秀一会長が順にあいさつした。
 宮田亮平文化庁長官、加藤敬東京国立近代美術館長、唐澤昌宏国立工芸館長が加わりテープカットした。佐々木紀衆院議員、宮本周司参院議員、中谷元衆院議員、稲村建男県議会議長、野本正人市議会議長、「国立工芸館・いしかわ・かなざわ連携協力者会議」の有識者らも出席し、内見会が開かれた。
 正式名称は東京国立近代美術館工芸館で、国は県の提案を受けて2016年3月に移転を決定した。県と市は旧陸軍第九師団司令部庁舎と金沢偕(かい)行社(こうしゃ)を移築、復元し、今年4月5日に竣工(しゅんこう)した。石川には日本芸術院会員と人間国宝の作品約1400点を含む約1900点が移される。
 開館日は7月15日を軸に調整していたが、新型コロナウイルスの影響を受けて約3カ月遅れとなった。
 25日〜来年1月11日は石川移転開館記念展Ⅰ「工(たくみ)の芸術 素材・わざ・風土」が開催され、近代日本工芸の名作約130点の展示を通じて、自然と共に育まれた技の美を紹介していく。コロナ感染防止対策として当面は定員を設けたオンライン事前予約制となる。

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