県内の鉄道駅で視覚障害者がホームから転落する事故の対策が課題となっている。1月6日、JR石岡駅で視覚障害の女性が転落、大きなけがはなかったものの、同11日には都内で男性の死亡事故が起きた。県内JR駅では対策に有効とされるホームドアの設置は当面なく、点字ブロックの改良を進めているが、県視覚障害者協会は「まずホームドアの設置を求め、障害者への声掛け、支援の取り組みも広げていきたい」とし、国や自治体、JRに近く要望書を提出する。(報道部・小島慧介)

■奇跡的
石岡駅の事故は、早朝ラッシュ時に発生した。事故を知る関係者は「助かったのは奇跡的」と振り返る。

石岡署などによると、1月6日午前8時16分ごろ、同駅の下り線ホームで、視覚障害のある石岡市の女性(64)が線路上に転落。近くに待避スペースはなく、女性は自力ではい上がろうとしたところに列車が進入したが、女性はホームと列車の隙間に逃げ込み、額をこする程度の軽傷で済んだ。

同駅では、転落対策として従来の点字ブロックを改良した「内方線付き点状ブロック」が設置されている。点字ブロックに突起のある1本の線を加え、方向感覚を失った視覚障害者がホームの内外を区別できる設計となっている。

全国的に整備が進められ、昨年末現在、県内のJR各路線では水戸支社管内の67駅のうち、51駅で設置された。水戸駅では、水戸線の発着駅としてホームに「固定柵」と呼ばれる列車が止まらない空間での転落を防ぐ柵も備える。

ただ、1月6日の事故は女性が列車の入ってきた音を下り線と上り線で聞き違え、ホームの外側へ足を踏み出したことが原因とみられる。発生当時、上下線ともに列車が到着する時刻だった。

同支社の広報担当者は「そのように勘違いで外側に進んだ場合は、ホームドアでないと防ぐのは難しい」と打ち明ける。

■見通しなく
しかし、本県など地方のほとんどはホームドアの設置計画がない。

国が示したガイドラインでは、ホームドアの設置は、1日当たり乗降客数が10万人以上の駅から進められている。本県では最多の水戸駅でも約6万人。

県内JR駅ではJR東京支社管内の取手駅(1日当たり乗降客数約5万5千人)で計画があるものの、2032年度末までに設置と大きな枠組みしか定まっていない。

鉄道関係者によると、整備費用も1駅で数億円単位と高額で、設置業者は限られる。重量もあり、駅によってはホームの沈下を防ぐ工事も必要になる。

県視覚障害者協会の坂場篤視理事長(71)は「命に関わる問題で、今すぐ設置とはいかないまでもホームドアの見通しくらいは立ててほしい」と話す。

同協会は事故を受けて1月10日、石岡駅の現地確認を実施。ホームには監視カメラがなく、事故当時は駅員がホームにいなかったことが分かったという。

要望では、カメラの設置や駅員の適切な配置、1日当たりの乗降客数が10万人未満の駅でのホームドア設置の推進、駅利用などで困っている視覚障害者への声掛けや支援の浸透を図る運動の確立などを、対象に応じて求め、ハード、ソフト両面で事故を防ぐ社会づくりを進めたい考えだ。

加えて、障害者に対しても、つえを正しく使えば防げる転落もあるとして注意喚起も行う。同協会によると、県内の視覚障害の手帳保持者は約5500人。坂場理事長は「駅員に協力を求めるにも予約が要るのが現状。私たち自身も気を付けつつ、県民の方々にも支援をお願いしたい」と話している。

★ホームドア
転落対策として大都市圏の鉄道網を中心に整備が進められ、国土交通省の資料によると、2017年度末時点で全国で725駅に設置されている。酔客の転落対策にも有効とされ、10〜17年度のホームからの転落事故は約3千件で推移し、視覚障害者は100件もない一方、酔客は過半数に上る。つくばエクスプレス(TX)では開業時から県内6駅を含む全20駅にホームドアを設けている。半面、ドアに荷物を挟み、そのまま発車した事例もあり、TXでは、センサーの検知範囲を3次元的に広げる改良を進めている。