私立を含む全大学で、障害のある学生に対する合理的配慮の提供が4月から義務化され、茨城県内の私大が相談窓口を開設するなど支援体制の構築を進めている。発達障害や精神障害など見た目では分からない「見えない障害」を抱える学生は増加傾向にあり、先行する国立大の担当者は、当事者に寄り添った支援体制の必要性を訴える。

障害のある学生に対する合理的配慮は、改正障害者差別解消法に基づき、当事者の置かれた状況に沿って適切、必要な変更などが提供される。健常者と同等の修学機会を保障するのが狙いで、先行する国立大では2016年4月に義務化されている。

改正法施行を受け、日本国際学園大(同県つくば市)は4月、キャリア支援担当者や教員などで組織する「支援委員会」を設置。担当者は「まだ始まったばかり」としながらも、申請に応じて支援内容を話し合うなど、当事者が置かれた状況に応じて柔軟に対処する構えを見せる。

茨城キリスト教大(同県日立市)は改正法施行に先立つ22年度、教員など約30人で構成する「障害学生支援検討協議会」を設立。当事者への支援充実を目指し、「試行錯誤を重ね、円滑な支援を提供していきたい」としている。

日本学生支援機構の調査によると、大学など高等教育機関に在籍する障害学生数は06年度の約5千人から増加。15年度に2万人を超え、22年度には約5万人に上った。

すでに取り組みが進む筑波大(つくば市)では、発達障害や精神障害など「見えない障害」を抱える学生は12年に数人だったが、22年には104人に増加。当事者に授業での配慮依頼文の作成や支援機器貸し出し、感覚過敏者向けの休憩室を設置するなど対応が進む。

自身に必要な支援内容を把握しかねている学生にはカウンセリングもあっせん。竹田一則教授(障害科学)は「社会に出てからも適切に助けを求められるよう、自己理解の手助けをすることも重要」と話す。

筑波技術大(同)には全国の大学から合理的配慮に関する相談が寄せられており、23年度は平年比3〜5割増の約750件に上った。内容は「専門スタッフが雇用できない」「支援体制をどのように構築すればよいのか」など、改正法施行に関するものが多かったという。

当事者への支援について、同大の白沢麻弓教授(心身障害学)は「個別の話し合いで調整内容を決めることが大切」と強調。私大での対応の在り方については「環境づくりが学生の確保にもつながるので、当事者に寄り添った対応ができるよう、価値観を転換してもらえればうれしい」と話した。