“頭数”だけじゃない 飲食業界が外国人社員に期待する重要な役割

“頭数”だけじゃない 飲食業界が外国人社員に期待する重要な役割

 2018年12月に「出入国管理法改正案」が参議院で可決され、19年4月に施行されることとなった。飲食や宿泊など14業種で在留資格が新設されるため、深刻な人手不足に苦しむ飲食業界では受け入れ態勢の検討を進めている。

 これまで、飲食業界では人手不足を補うために主に留学生を受け入れてきたが、1週間の就労は28時間までと制限されていた。そのため、外国人労働者を社員として雇用し、時間をかけて育成するのが難しい状況だった。

 飲食業界向けの人材サービスを提供するクックビズでは、企業のニーズに対応するため、18年12月に外国人労働者受け入れに向けたセミナーの提供を開始すると発表した。同社は飲食業界における外国人雇用の現状と、施行後の状況についてどのように分析しているのだろうか。担当者に話を聞いた。

●現状では活用できていない

 業界団体と外国人受け入れ構築に向けた取り組みを協議しているクックビズ社長室の清水知輝氏によると、飲食業界の中には「週28時間しか働いてもらえないので、サービスレベルを上げにくい」という問題意識を抱えている企業もあるという。単純作業ではなく、一定以上の質のサービスをお客に提供してほしい。しかし、就労可能な時間に限りがあるため、仕事を通して成長しにくい状況にあると考えているのだ。

 また、地方の中小チェーンの中には、外国人労働者の受け入れに関するさまざまな手続きが煩雑なことから、「そもそも活用できていない」(清水氏)ところもある。

 では、法改正によって、飲食業界は外国人社員にどのような活躍をしてもらいたいと考えているのだろうか。政府の方針では5年間で約34万人を上限に外国人労働者を受け入れるとしているが、社員として長く働いてもらうことで、各店舗の基幹業務を担えるような人材を育成しようと考えている。言語だけでなく文化や宗教の違いから、日本人の社員と留学生アルバイトの間で意思疎通が難しい状況がある。そこで、外国人社員には、両者のコミュニケーションを仲介してもらうような役割を期待しているという。

●海外進出を担う人材

 外国人社員にもう1つ期待されている役割が、海外進出する際に現地店舗の店長やマネジャーとして、“日本基準”の高付加価値なサービスを提供できる仕組みを構築することだ。国内需要が先細りしていく中、飲食業界は海外市場を開拓しなければ生き残れないという危機感を抱いている。訪日外国人旅行客が増えているので、インバウンド需要を狙う戦略もある。しかし、海外展開は中長期的に取り組まないといけない課題だと業界内では認識されているのだ。

●外国人社員の教育はどうする?

 外国人を積極的に雇用しようと考える企業は教育の問題に直面するが、どのように対処すればよいのだろうか。外国人向けの研修に携わってきたクックビズフードカレッジ専任講師の荒木寿夫氏は「研修内容は、基本的に日本人向けのものと変わりませんが、教え方を工夫する必要があります」と語る。

 例えば、「なぜ、『いらっしゃいませ』とお客に伝える際、お辞儀をしなければいけないのか」「なぜ、こちらがお客に謝らないといけないのか」ということが理解できない従業員が多く、お客から寄せられたクレームに対してつっけんどんな態度をとってしまい「2次クレーム」につながるケースがあるという。

 そこで、荒木氏は従業員に対して謝罪やお辞儀の必要性を理解してもらうために、通常より倍近い時間をかけて研修をしている。実際に教えていると「この従業員は腹落ちしていないな」と分かるので、相手の目をみながら根気強く指導していく。さらに、研修後も毎日の朝礼で笑顔トレーニングなどを実施してもらい、その動画を分析し、フォローアップをするといったこともしている。その結果、お客から寄せられるクレーム数が研修前の4割程度に減ったケースもあったという。

 荒木氏は「外国人従業員は『できない』のではなく、(接客マナーについて)単に『知らない』ケースが多いです。粘り強く教えることで、サービスの質を上げることはできます」と指摘する。

 外国人を社員として迎えるにあたり、過剰にナーバスになる必要はないが、教育のためには相応のコストを払うことを覚悟したほうがよさそうだ。


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