日本に凱旋した北米マーケットの大黒柱RAV4

日本に凱旋した北米マーケットの大黒柱RAV4

 4月10日。トヨタ自動車は新型RAV4を発売した。1994年に発売された初代RAV4は、セリカのコンポーネントなどをベースに構成されたSUVだった。トヨタの人が、筆者の前でうっかり「ありもののパーツで作った」と口を滑らせたことがあるが、まあ当時はあくまでも変わり種として登場した非主流モデルにすぎなかった。

 しかし、クルマの出来は多くの業界関係者を驚かせた。当時の新車試乗会取材を終えて帰ってきた編集部員が、口々にRAV4がいかに良かったかを興奮した口調でまくし立てた。「セリカより良い」という声すらあった。クルマに乗った後のこういう素の感想で褒められるクルマは、経験上ホントに良い。筆者の記憶では同じようなことになったのはP10プリメーラくらいだったと思う。

●無骨で大きくなったRAV4

 さて、このRAV4。キムタクのCMに加え、それまでのはしご形(ラダー)シャシーではなく、乗用車同様のモノコックシャシーで作られたシティ派のSUVとしての使い勝手が受けてヒットモデルになった。以来4回のモデルチェンジを経て、今回の新型に至るわけだが、その間に日本での販売は一時中断していた。そしてしばらく見ぬ間に、RAV4の位置づけは大きく変化している。

 ある意味、やってみました式に始まったRAV4だが、現在ではトヨタにとってグローバルな大黒柱の一つである。主要なマーケットである北米の要望に合わせてボディサイズは徐々に大型化し、新型の全長は4600ミリ、全幅1855ミリ、全高1685ミリでホイールベースは2690ミリとなっている。

 そして17年、北米で長らくベストセラーの座を守ってきたカムリに代わって最量販車種になった。それはとりもなおさずトヨタの屋台骨を支える重責を担うことを意味する。

 トヨタの説明によれば、新しいRAV4は「よりラギットな方向へシフトする」とのことだ。言葉の意味としてはごついとか無骨なという意味になる。シティ派の反対と言った方がわかりやすいだろうか。

 トヨタのラインアップを見ると、このクラスのSUVでより都市型のモデルとしてはハリアーが控えており、同門での共食いを防ごうとすれば、ラギット方向へ振るのは常道といえるだろう。

 しかしそれは売る側の都合でしかない。ユーザーはなぜラギットなRAV4を選ぶ必然性があるのか? 一体どういう人に訴求するクルマなのか? その問いにRAV4のチーフエンジニアはこう答えた。「例えばアメリカで、家族に急病人が出た時、病院はすぐ側にあるとは限りません。例えどんな気象条件であっても、病人を病院まで送り届けられるクルマが家にあるということは大きな安心感を生みます」

 なるほど。それはよくわかる。ランドクルーザーだったらそういう生死を分ける場面では更にベターかもしれないが、日常使いで、それは燃費や乗り心地という日々感じる部分において、やはり我慢を強いられる部分がある。モノコックボディのRAV4は、普段使いで普通の乗用車とほぼ同様の燃費や乗り心地を持ちながら、いったん緩急あれば、悪条件をものともせず任務を遂行できる。その組み合わせは他と違うキャラクターになるだろう。

 さて、ではそれは日本ではどうなのかといえば、なかなかそれだけの走破性を求められることはないだろう。台風に直撃されて道路が寸断されたような状態で、通行規制も敷かれずに自己責任で走破をトライするような場面はおそらく日本には無いし、それ以前に道路が渋滞してしまって自分だけが走破性の高いクルマに乗っていてもどうにもならない。

 しかし、まあその機能が求められることが一切無いとも言い切れない。例えレアケースであってもそういう「もしも」をカバーすることに価値を見出す人にとっては頼もしい一台になるのかもしれない。

●3種類の四輪駆動システム

 さて、ハードウェアがどうなっているかをざっと説明しよう。基本シャシーはカムリでデビューしたGA-Kプラットフォーム。このシャシーはかなり素養が高いので、試乗前から期待が高まる。

 ちなみに新型RAV4で、もっともユニークなのは、3種の異なる4WDシステムを持っている点だ。北米No.1の金看板があるからこそ可能な贅沢(ぜいたく)だろう。

 ハイブリッドモデルに搭載されるシステムはE-Fourで、これは前後駆動輪はプロペラシャフトで物理的につながっていない。フロントはTHS(トヨタハイブリッドシステム)で駆動し、リヤはリヤ専用のモーターによって駆動する電気式の4WDシステムとなっている。従来のE-Fourモデルと違うのは、バッテリーとモーターを強化してリヤの駆動力を大幅に向上させている点だ。

 さて、残る2つはよく似たややこしい名前がついている。「ダイナミックトルクベクタリングAWD」と「ダイナミックトルクコントロール4WD」。長いし混乱の元なのでとりあえず前者をDTV、後者をDTCと呼ぶことにしよう。値段の序列からいえばDTVの方が上位。E-Fourという燃費優先モデルに対して、普通のAWDがDTC、より走りに振ったモデルがDTVとなる。

 DTV、DTC共にプロペラシャフトを持ち、電制多板クラッチを採用するが、その電制多板クラッチの装備数と場所が異なる。DTCはプロペラシャフトに、センターデフ代わりに電制多板クラッチを組み込み、リヤのデフは通常のオープンデフという構成。対してDTVの方はプロベラシャフトにデフを持たず、リヤデフの両サイドに電制多板クラッチを置く構成となっている。

 何が違うかといえば、リヤに一対の電制多板クラッチを備えるDTVは、後輪左右の駆動力配分をアクティブに変えられる。左右のクラッチの圧着圧力を変えることで、外側後輪を内側より強く(速く)駆動することができ、駆動力ーーつまりエンジンの力でクルマを曲げることができる。

●実力やいかに?

 概要を書き記すだけで半分の文字数を費やしてしまったので、インプレッションに移ろう。運転環境はTNGA世代らしく、これまでよりずっと良い。ボディサイズも大型化しているので、ペダル配置に無理が無く、シートもベストとはいわないまでも、現世代のモデルとしては良い方に属すると思う。

 走り始めると、車両重量に対してエンジンが少し負け気味。試乗コースが富士の裾野でアップダウンが多かったこともあるだろうが、発進直後の低速トルクの不足を補おうと、トヨタ自慢のダイレクトシフトCVTが回転を上げてしまう。運転席に座って感じる車格に対して、少しノイジーに思う。アクセルをドーンと踏んでしまえば、十分パワフルなのだが、こういうクルマの場合、そういうヨーイドンよりも、負荷に応じてちょっと踏み足した時、ギヤ比を変えずにトルクを増やしたいというニーズの方が重要だ。そこはもう少し何とかなるといい。

 なお、これに関してはハイブリッドモデルの方が良かったが、こっちはクルマの重さをだいぶ感じる。物理の法則通り、走る・曲がる・止まるの全てに重さがつきまとうが、エンジンに加えて、ハイブリッドのE-Fourには、トヨタハイブリッドシステム(THS)とパワーコントロールユニット(PCU)、バッテリー、さらにリヤの駆動用モーターが従来比で高出力化されているのだから当然と言えば当然だ。ただしWLTCモード燃費でリッター当たり20.8キロも走るといわれると、一概に重さを責められない。ちなみにガソリンモデルは、同じくWLTCモードで15.2キロ。

 ハンドリングは、通常領域では極めて素直。ステアリングコラム周りの剛性感も最先端水準で、走っていて気持ちいい。コンベンショナルな(つまりハイブリッドじゃない)2台の乗り味はデフの差になるはずだが、舗装路で試せたのはDTVモデル。4つの車輪の接地感があらゆる速度で気持ちいい。別に飛ばさなくても低速から十分に恩恵がある。

●技術的挑戦

 実はこの試乗会に先立って、トヨタの冬季テストコースでも試乗会が行われ、サーキットのように平らにならされた圧雪路でのテストも行っている。DTVとDTCの挙動はここで大きく異なった。基本特性からいえば、DTVは踏んで曲がる。ただし、それは人の身体感覚とちょっと違う、イメージでいえば「敵わない相手に敢えて立ち向かう」という感じ。滑ったら普通は何とかして減速しようとする。ところがDTVは、そこでさらにアクセルを踏むと外側後輪が車体を押し出して回り込む。頭で理解したとしても、とっさの時にそんなことができるかどうかはちょっと別の問題で、おそらくは感覚の補正をしないと使いこなせない。

 もう一つ話をややこしくしているのは、最近のトヨタ車に装備が増えているACA(Active Cornering Assist)との兼ね合いだ。この機能は内輪にブレーキをかけてクルマの自転モーメントを作る機能。つまりこれまでのクルマはハンドルを切った時前輪のスリップアングルが増加し、それに応じた横力が発生してクルマの自転(ヨー運動)が始まっていた。

 ACAは、その自転を開始するヨー運動を、片輪ブレーキが助け、また加速局面ではDTVがトルクを外側に大きく配分することで補佐する。伝統的には全て舵輪が受け持って来た機能がブレーキやデフに再配分されたのである。問題はそれらがリレー方式につながっていることで、例えばACAがクルマの自転運動を助けようとしているところで、熟練ドライバーが従来通り舵の効きを高めるためにフロント荷重をあげようとブレーキを軽く舐めたりすると、途端にACAはブレーキ操作に上書きされて、片輪制動を止め、両輪制動に移行する。当然ヨー運動はそこで片輪ブレーキの補助を失い、舵角の分だけに戻ってしまう。あるいはDTVで曲がっている途中にどうやっても減速しないと回り込めないほど行く手が巻き込んでいたら、踏んで曲がっているところからのリカバーは難しい。元々が自分の感覚に背いて、システムを信じて踏み込んでいる状態だから、システムの限界を超えたとき、打つ手がないのだ。

 こういうものをどう評価するかはとても難しい。これまでできなかったクルマの動きを技術の力で成し遂げようとしているということもできるし、曲がると言う絶対性能は向上している。一方で、場面によっては人の感覚とズレを起こすものを許容していいのかという話にもなる。

 そしてそれが、あくまでも限界領域での話だと言う断り書きが付く。そもそも公道でそんな運転はすべきではないが、現実には何らかの弾みで、そういう領域に飛び込んでしまったときに事故が起きるともいえる。

 だから筆者は、普通の人にはそういう不自然な部分が少ないDTCモデルを勧めたいのだが、一方でDTVモデルはタイヤの能力に余裕がある領域ではすこぶる優れた接地感を発揮し、気持ちよく走る。それも捨てがたい。技術の粋を凝らしてトルクで曲がるAWDを選んで、それをあんまり使うなというのも微妙な話だが、DTVの効果がハッキリ現れるような領域にわざわざ踏み込むのは、お勧めできない。よほど腕に自信があるならともかく、普通の人は日常域での味を楽しんだ方がいい。そしてそこにちゃんと技術の価値が現れている。

 RAV4の特筆すべき点は、穴に一輪を落とした状態から、どのモデルであっても普通に脱出できることだ。四輪駆動の宿命として、どこか一輪が浮いてしまうと、駆動力が逃げてしまい、残る三輪がしっかりグリップしていても脱出できなくなる。もっとハードなクロスカントリーモデルならデフロックを装備していて脱出が可能なのだが、普通の生活四駆はそこで身動きが取れなくなる。

 その点RAV4は、そういう状況下でも、全てのモデルが何事も無かったように脱出できることは、高く評価できる。「どんな気象条件であろうとも家族を病院まで……」という話はただのお題目ではない。人気の無い場所や、厳しい気象条件で身動きできなくなるというリスクを回避できる性能には価値があると思う。

 ボディサイズが許容でき、ちょっとしたアドベンチャーに興味がある人にとって、選択肢になるクルマだろう。

●筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。


関連記事

ITmedia ビジネスオンラインの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

トレンド アクセスランキング

ランキングの続きを見る

トレンド 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索