人の心を癒すロボット「Qoobo」は、どのようにして生まれたのか

人の心を癒すロボット「Qoobo」は、どのようにして生まれたのか

 モフモフとしたさわり心地の円形クッションから、しっぽが伸びている。なでると、しっぽを振る。しっぽの振り方は、なで方によって変わる。顔や足はないが、もはや本物の犬や猫にしか思えない。

 このように書いても「何が何だかよく分からない」と感じたかもしれないが、正体はユカイ工学のクッション型セラピーロボット「Qoobo(クーボ)」(1万2000円、税別)である。

 2018年11月に発売された「Qoobo」は、毎日の生活に癒やしを求める人や、ペットを飼いたくても飼えない人に使ってもらうべく開発された。特徴は、本物の犬や猫と同じしっぽの振り方をして応えてくれるところ。そっとなでるとフワフワと、たくさんなでるとブンブンと、しっぽを振るほか、さわらなくても振ることがある。日本のほか海外でも販売されており、これまでに1万匹以上が売れている。

●しっぽに囲まれた生活を送っていた女性デザイナーが発案

 「Qoobo」とはフランス語でしっぽを意味する“Queue”とロボット(Robot)による造語。円形クッションからしっぽが伸びている様がアルファベットのQに似ていることにインスパイアされ名付けられた。

 誕生のきっかけは、毎年社内で実施しているアイデアハッカソン。17年4月に実施した時に発表したのが、「Qoobo」の原型だった。

 同社のアイデアコンペは、社員全員が参加。スキルが均等になるようにチームを編成し、動く試作品までつくることにしている。

 「Qoobo」のコンセプトを考えたのは女性デザイナー。北海道出身のその女性デザイナーは、子どものころ、犬14匹に囲まれて暮らしていたが、上京により生活環境が一変した。しっぽが身近にいなくなった上に、一人暮らしの住まいではペットが飼えないことから発案されたのだ。

 提案されたコンセプトは、「1人暮らしの女性が家に帰った時にモフモフできるもの」。1日の疲れを癒やしてくれるものとして考え、形状もいくつか考案された。その中には、抱き枕のようなしっぽがないものもあったが、コンセプトにふさわしいものとして現在の形が採用される。

●しっぽの振り方は全部で40パターン

 「Qoobo」がさわり方によってしっぽの動きを変えるのは、さわり方の強弱をセンサーで感じ取り、その結果に合った動き方の指示をコントローラーからモーターに送っているため。さわらなくても動くのは、バッテリー残量が少なくなって、お腹が空いたことを意思表示したい時や、抱っこされた時など一定の状態になった時に、コントローラーからモーターに指示を送るようになっているからである。

 しっぽの動き方は全部で40パターンほど。本体にモーターを2個搭載しており、横だけでなく少し上に向けて振ることもできる。

 ただ、しっぽの動きが40パターンもあると、動きを制御するソフトウェアの容量が大きくなってしまう。青木俊介CEOは「売価のことを考えると高価格・高性能なコントローラーが使えないので、ソフトをコンパクトにまとめなければなりませんでした」と振り返る。そのため、データ容量を小さくできるソフト開発用エディターをまず開発。しっぽの動きが平面上で見えるシミュレーターも用意した。

 「Qoobo」が生き物らしく思えるのは、しっぽを振るからだけではない。意外なことに、寿命がある。初めて電源を入れてから徐々に年を取り、約2年で天寿を全うするというパラメーターが設定されている。「『Qoobo』はバッテリーを交換すれば生き返るというわけではありません。寿命を迎えたら新しい子を迎えてくれればと思います」と青木氏は話す。

●クラウドファンディングで目標の247%を達成

  「Qoobo」が初めてお披露目されたのは、17年10月に開催された「CEATEC JAPAN」。現在発売中のものと比べて完成度は20%程度と低かったが、市場性があるかどうかを知るために出展したという。「見た目のインパクトはあったので面白いと思いましたが、似たものが思いつかなかったので、『これは本当に売れるのだろうか?』とかなり悩んだところがありました」(青木氏)。反応が良かったらクラウドファンディングにチャレンジする予定を立て、開発を加速させるつもりでいた。

 「CEATEC JAPAN」での反応は、予想をはるかに超えた。日本だけでなく、海外からも大きな反響が。米国のジャーナリストで構成される審査委員会が審査する「米国メディアパネル・イノベーションアワード」で、特別賞の「Special Award Gadget Nation Award」を受賞。この影響もあり、海外のテック系メディアがこぞって「Qoobo」を紹介した。

 反応が良かったことから、同社は「CEATEC JAPAN」終了後、「Kickstarter」でクラウドファンディングにチャレンジする。クラウドファンディングにチャレンジしたのは、資金調達もさることながら「CEATEC JAPAN」同様テストマーケティングの側面が強かった。

 目標額は500万円で、期間は45日。最終的には目標額の247%に及ぶ約1236万円に達した。目標の500万円は開始から6日で到達。これほどまで早く目標額に到達するとは、青木氏も思っていなかったという。

 クラウドファンディングの結果から、「Qoobo」には製品化する価値があると確認した同社は、17年12月に予約販売サイトを立ち上げ、予約を受け付けることにした。予約の受け付けは18年8月末で終了したが、この間、国内外合わせて5000匹以上を受注した。

 18年に入り、「Qoobo」の開発は加速したが、同時に海外での認知拡大に取り組む。1月に「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」、3月に「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)」と、米国で開催された見本市やイベントに出展した。

 特に「CES」は、米国で「Qoobo」の現物が初めて披露されたことから、注目度が高かった。目立つ場所にブースが構えられなかったことから、試作品とのぼり旗を持って会場内を練り歩いていたところ、人だかりができてしまい、会場の警備員に注意をされたほどだった。

●実験で実証された「Qoobo」のストレス軽減効果

 「Qoobo」は発売後、若い人から高齢者まで男女問わず幅広い年代の人たちに購入されている。「癒やされる」「落ち着く」といった反応が目立つというが、そこで気になるのが、「Qoobo」の癒やし効果だ。

 開発中の18年8〜9月にかけて、同社は「Qoobo」のブランディングをサポートする博報堂と共同で、「Qoobo」のストレス軽減効果を検証した。被験者38人(女性21人、男性17人)を対象に実験を行ったところ、ネガティブな気分状態を総合的に表すTMD(Total Mood Disturbance:総合感情障害指標)が、「Qoobo」を持った場合は平均して6下がったのに対し、「Qoobo」を持たず何もしないでぼーっとした場合は平均して2しか下がらないことが判明。「Qoobo」をさわりながら休憩するほうが、ネガティブな気分が和らぐことが確認できている。

 この時の実証実験の被験者は、18〜33歳と若年層が対象。高齢者を対象としたストレス軽減効果に関する実証実験も行っており、結果については19年9月16日の「敬老の日」までには発表したいという。

●ファンミーティングでユーザーと直接交流

 「Qoobo」は熱烈なファンが多いことから、19年3月に初のファンミーティングを開いた。定員50人のところ申し込みが100人を軽く超え、参加者を抽選で選んだほどだった。

 ファンミーティングでは、「Qoobo」のコンセプトを考えた女性デザイナーが登場して発案の経緯などを語ったほか、アクセサリーとして付けるリボンをつくるなど、フォトブースでの写真撮影会も実施。当日はマイQoobo持参で集まってもらい、ファン同士の交流も盛んに行われた。

 ファンミーティングのようなユーザーとの交流や対話は、「今後も実施したい」と青木氏。その理由は、そういう場から新しいアイデアをつくりたいと考えているため。ファンと一緒に育てていきたいという思いだ。

 ユカイ工学には、ユーザーだった人が入社してくることもあるという。妄想を形にするなど、愉快なモノづくりは共感を呼び、ハマった人はとりこになるのかもしれない。

(大澤裕司)


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