ドトール、休日減らして「有給奨励日」に 有給取得の“水増し”に厚生労働省「望ましくない」

ドトール、休日減らして「有給奨励日」に 有給取得の“水増し”に厚生労働省「望ましくない」

 4月に働き方改革関連法が施行された。これにより、年間10日以上の有給休暇が付与されている従業員に対し、年間5日以上取得させる義務が企業に課せられた。旅行サイトを運営するエクスペディア・ジャパン(東京都港区)の調査によると、2018年現在、日本人の有給休暇の取得率は50%。国別に比較すると、16年から3年連続で最下位となっている。休むときはしっかり休み、生産性向上につなげる。政府の進めるこうした働き方改革の“お題目”が骨抜きにされる事例が出てきている。

 「ドトールコーヒーショップ」を運営するドトールコーヒー(東京都渋谷区)は、今年度から本社の年間休日を「119日」に固定した。従来は土日祝日を公休日としていたが、変更により一部の祝日が出勤日となった形だ。出勤日となった祝日については「有給奨励日」という形を取っている。同社と、さらにグループ会社で厨房設備の販売などを手掛けるマグナ(東京都港区)の従業員が対象だという。労働組合はないため、過半数代表者の同意によって就業規則を変更した。

 広報担当者は、「有給休暇の取得について、まだまだ取得しづらい空気がある。こうした状況を打破するために変更を行った」とコメント。しかし、そうであればもともとの出勤日を奨励日にすれば足りる。これについては「改元などで祝日が多くなり、調整する必要も生じた」とも話し、義務化された有給休暇の取得と、「多すぎる」祝日との調整とを合わせて行った形だ。

 最近では共働きで子どもを育てる世帯も増え、子の急病などで突発的に有給休暇を取らなければいけないケースも多い。有給休暇の残り日数がない場合には、祝日に出勤する必要が生じ、保育園などが開いていない場合もある。これについては「本社勤務についてはそうかもしれないが、店舗勤務の人などはもともと土日祝日に関係なく働き、シフトに沿って休日を取っている」とコメント。

 採用サービス「リクナビ2020」でドトールコーヒーの採用ページを見てみると、有給休暇の平均取得日数は、16年度実績で6.7日。エクスペディアの調査では16年の取得日数平均は10日なので、平均を下回っている。こうした状況を打開したいという意図は理解できる。しかし、もともとの休日を出勤日にして有給休暇を取得させる“水増し”ともいえる手法には疑問が残る。

 もともと、ドトールコーヒーは業界内でも公休日が多い企業だ。厚生労働省による「平成30年就労条件総合調査の概況」では、業界別の休日動向が発表されている。「宿泊業、飲食サービス業」を見てみると、平均は97.1日。ドトールコーヒーの休日数「119日」は業界内でも高い水準にあるといえる。こうした“優良企業”が、時代に逆行する取り組みをするのは残念だ。

 なお、祝日を出勤日にして「有給奨励日」とする企業は以前から存在した。都内にある広告会社では、一部の祝日を出勤日として、有給奨励日としている。今年新卒で入社した20代女性は、敬老の日(9月16日)に出勤。入社から半年が経つ10月まで有給休暇が付与されず、泣く泣く出勤したという。「取引先もほとんど休みなので、やることがなかった。1日中、パソコンの画面をぼーっと眺めていた。わざわざ出勤する意味が分からない」と話す。

●厚生労働省は「望ましくない」

 こうしたケースを、厚生労働省はどう受け止めているのか。

 同省の担当者は、「まず、就業規則の変更については労働者の同意が必要」とコメント。労働組合の同意や、従業員の過半数を代表する者の合意が必要とされ、ドトールのケースでは問題ない。

 一方で、「法定休日以外を『労働日』という扱いにして有給を取得させるのは望ましくない」(担当者)。手続き上の違法性はないが、内容については問題あり、とのスタンスだ。使用者と労働者間の契約に関しては、08年に施行された「労働契約法」がある。厚生労働省は、同法の周知のためにリーフレットを作成。文中では、就業規則変更に際して「労働者の受ける不利益の程度」を勘案する必要があると説明している。出勤日を増やして有給休暇を取得させるのは、この「不利益」に該当する恐れがある。

 こうした事例については、労働基準監督署などを通じて既に何件か認知しているという。しかし、手続き上の問題はなく、明白な違法性があるともいえない。不利益性については最終的に司法の判断を仰ぐ必要もある。通報等があっても、個別の判断には時間がかかるため対応策に苦労しているようだ。当座の対策としては、リーフレットなどを発行し、制度の趣旨を周知させていくという。


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